16話
「やっぱ実家は落ち着くよな」
「優人、ゆっくりできるの?」
「明後日には帰るよ」
「上手くいってんのか仕事?」
「結構上手くいってる、やりがいもあるし」
家の居間で食卓を囲む。
何年ぶりかと思うくらい懐かしい雰囲気に酒も進む
「やっぱ、ここの酒が一番上手い」
そう言いながら拓人を見ると何とも言えない顔をしてテレビを見ていた
昔からどこか大人で冷静な弟だったけどたった一つだけ拓人を熱くしてきたのは愛桜だけだから。
そんな事を気づかずにモヤモヤしてる拓人を見るのも楽しいけど、愛桜の様子じゃ本当に行き詰まってるんだろうな
「それより愛桜、いい女になったな」
母さん達も目を見開き、焦った表情で俺を咎める
拓人はただ黙って俺を見つめた
「今日学校に会いに行ったらさ、一緒にご飯行こうってなって夕方くらいにそこのファミレス行ったんだけど」
そう言って拓人に笑ってやる
すると諦めたような。怒りを宿したような。そんな目をまたテレビに戻した
「ほら、まだ5歳だっただろ?俺がここ出てく時、たまに帰ってきても小さいころのイメージが強かったけど、高3にもなったら大人になるよな。」
「最近特に可愛くなった」
親父がそう言えば拓人が親父を驚いた顔で見た
「親父、会ったのか?」
「可愛い娘に会いに行って何が悪い」
「何だそれ」
拓人は酒を飲み干し、強めにコップを机に置いた
「母さんおかわり」
「拓人飲み過ぎじゃない?」
「大丈夫」
すると親父が小声で
「最近こんな感じなんだ」
っと告げ口してくる
「そう。荒れてんな
でも本当に可愛くなったよ
卒業したらこっちへ来いって話したらさ。
目キラキラさせていろいろ行きたいって言ってんの、悪くないよなっ年下も」
「優人!許さんからな。愛桜はずっとこの町に居るんだ」
「まあまあ。行く末は俺と結婚するんだから愛桜は娘になるってわけ」
そう言えばわかりやすい拓人の表情に笑いを我慢した
「結婚?」
「愛桜ちゃんが言ったの?」
「さっき、卒業して誰とも付き合ってなかったら嫁においでよって言っただけ」
「まあ父さんは愛桜が娘になるなら誰でもいいが」
「あなた!何回も言ってるでしょ?愛桜ちゃんにも選ぶ権利があるの」
「まあなんか微妙な反応だったけど。好きな奴が居てるのか…この家に嫁ぎたくないか。どっちだろうな」
「ちょっと優人、もういいから食べなさい」
「拓人に懐きすぎてるからかって思うんだけど、結婚するなら、そんなだったら困るな。」
母さんの静止を聞かず俺に目線を向ける兄貴
「懐いてねぇよ。結婚って愛桜は頷かないだろ
地元好きだし」
「そうか?上京する話はノリノリだったぞ
けど愛桜を可愛がってるのは俺も兄さんも拓人と同じだからな」
「はあ?一緒にすんな」
「ましてや俺達は愛桜を傷つけたりしてねぇし、お前こそ何考えてんだよ?」
「ちょっと…優人」
「母さん」
親父が母さんを宥める
「何があったか知らねぇけど男だろ?
まあいいよ。愛桜は俺が可愛がるし」
ふざけるなっと言わんばかりの拓人の表情
本当に鈍感だな
「……」
無言で立ち上がった拓人は家を出ていった
「本当に腹立つやつだな」
そう言って父さんと笑いあった
「どうせそういうことだろうとは思ったけど」
「何?全部嘘だったの?」
っと母さんが俺を見つめる
「当たり前だろ。俺と兄さんに懐かなかったくせに拓人には昔からベッタリだったから、今更俺を好きになるわけないじゃん」
「そういうことね」
安堵した母さんはそう笑った
「早く気づけよな、いい年して、大の男が」
そう言えば拓人の表情を思い出し笑いがブリかえってくる
「あー可笑しい」




