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わし、死ぬ

 1930年。FIFAワールドカップが開催された(らしい)この年に、わし、真村国夫まむらくにおは生まれた。第二次世界大戦も高度経済成長もバブルも経験し、それなりに豊かに生きてきたわしも、今年、2015年で85になる立派なじじいである。年で最近歩きにくくなってきたが、それに追い討ちをかけるように、今度はガンときた。もうじきわしも天国じゃ。まっとればーさん。

 そんなのんきなことも、さすがに病室では言えなくなり、とうとう本当に腹をくくるときが来たようだ。

 「おじいちゃん、だいじょうぶー?」

 この可愛い女の子は、わしの孫娘の細野蒼ほそのあおい。今4歳?くらいだ。

 「大丈夫じゃ!わしはまだまだぴんぴんしとる」

 「またかえったら、あそぼー?」

 「もちろんじゃ。また、かるたするぞ…」

 このとき、余命は残り1週間程度だったが、愛する孫娘にそんなことは言えない。

 「ばいばい、おじいちゃん!またくるね!」

 「ありがとな、蒼……」

 

 残りの一週間はとくにすることもなく、だらだらとしていた。そんなときに限って時間というものは矢のように過ぎてゆく。まあいい、わしはもう未練なんかない。まあしいていえば、蒼だろう。蒼の運動会や音楽会、結婚式なんかは見てみたい。そんな叶わぬ夢を見ながらわしは、一歩一歩死へと近づいていった。

 そして2015年、8月18日 15時18分

 「おじいちゃん!しんじゃやだ!」

 「蒼、幸せに生きるんだぞ」

 そう言いながらわしはすっと目を閉じた


 --ーー3800グラムです。大きな赤ちゃんですね。

 ん、ここはどこだ?

 今はいつだ?

 何でまだ生きているんだ?

 目が開けられない。

 耳は聞こえるみたいだ。

 「この子の誕生日はいつですか?あ、間違えた!何時何分ですか?」

 「まあまあ、そんなにあわてなくても。この子は2015年の8月18日の15時18分生まれですよー。ところで、お名前などは決まっておられますか?」

 「この子の名前は秀平ひでひらです。能力なんかは平凡でいいから、誰にでも平等に真っ直ぐ育って欲しいという願いを込めて名付けました。」

 秀平?何を言ってるんだこの女は?わしには国夫という立派な名前がある。それにわしは80を超えたじじいだぞ?何をいまさら……

ーーーーこうして、わしの2度目の人生が始まった

 







 


 

 

 

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