表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リタイア勇者たちの飲み会  作者: Airi
1軒目 ―女神イーリスの店―
2/18

1杯目。枝豆と





「あーもう。やってらんねぇわ」


 ヤスオは肩がこる、と木綿の服の下の筋肉をもみほぐした。


 勇者をやめてから10年余り。


 寄る年にはかなわないな、とジョッキビールをグイッと煽り、上唇に付着した泡を右手の甲で乱暴に拭い去る。


「結構大変なの? お仕事?」


 ピンクと紫の幻想的なネオンに照らし出され、露出度が激しい黒いドレスを身にまとった金髪の女が、長いまつげをしばたたかせた。


「結構ってもんじゃないらしいですよ。ママ。こいつの会社、今働きたい会社トップ5に入ってるらしくて」


 うねうねと踊るタコの足でこいつ、と隣の人物を指さしながら、どう見てもタコが膨らんで紫色に血色が悪くなった頭の生物が人と同じ口の位置に枝豆を皮ごと放り込んだ。


「まぁそうなの! すごいじゃない、ヤス! レベルアップ・・・・じゃなくて、出世したわねぇ」


「まァ…そうでもないすけど」


 色っぽい谷間を強調して、ママがこれおごりね、ととっておきの角煮を出してくれた。


「ママー。こっちにもきてよ~!」


「あらいけない。お呼びがかかっちゃったわ。ごゆっくりね~」


 年齢はすでに4000歳を超えているらしいのだが、二十手前のぴちぴち女子大生のような声音で彼女はあっという間に呼ばれたテーブルに移動してしまった。


 ヤスと呼ばれた、黒髪無精ひげの男はむすっと視線をテーブルに投げかける。


「あんまり見るなよ。やっかまれるぞ」


「だってさぁ、主任」


 唇をとんがらせて講義を口にしようとすれば、主任、と呼ばれたたこ足の怪物は「まぁ、飲めよ」とジャッキをたこ足で指した。


 ヤスは不服気にジーンズの尻ポケットからくしゃくしゃになった煙草の箱を取り出すと、それを主任に進める。


 主任は6つある目をぎょっと見開いて、どこからが首だかわらかない頭を左右に振った。


「やめろよ。俺、禁煙8年目って知ってるだろ?」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ