7杯目。お水をください。(6)―第1部完―
「あにしてんのよ! この、変態スケベ野郎が!!」
「ギャフンッ」
ガツン、と鈍い音がしたと同時に男の体がイーリスの豊満な胸元に倒れ込む。
その胸をクッション代わりに衝撃を免れた男は、クリーンヒットだったようで一瞬で昇天(気絶)した。
「あらあら。まぁまぁ。シオルちゃん、出てきちゃったの」
「出てきちゃったの、じゃなくてさぁ。ママ。この状況何なの? 閉店??」
お仕置きルームからどうやら自力で脱出してきたらしい、満身創痍に見えるぼろぼろの衣装の大魔女は、片手で持っていた振り下ろしたばかりのパイプ椅子を床に放り投げた。
パイプ椅子はお仕置きルームの入り口のかませとして存在していたのを拝借したのだ。
「あったま痛いわぁ」
「・・・・・」
我に返ったイーリスが店の中を見渡せば、なるほど。
シオルネーラの言葉に納得した。
人っ子一人おらず、飲み掛け食べかけの皿やグラスが散乱している。
「もうっ。これじゃ、商売あがったりだわ!」
言いながらイーリスは自分にのしかかって夢見ごちな男の横顔をうっとりと見つめ、その黒髪を優しくなでる。
「あーはいはい。痴話げんかね」
呆れた。
シオルネーラはバカバカしい、と言いながら自分の席に戻り、ヤスオが食べかけで残したもう一本の焼き鳥を口にくわえた。
「うまいわねー。ママのとこの焼き鳥! 絶品っ!」
「シオルちゃん・・・・。ちょっと相談なんだけど」
「んふ?」
焼き鳥を口で食み、タレを口の箸からこぼしながらシオルネーラが振り返った。
「ちょっと協力してくれる?」
何を協力か、シオルネーラにはすぐ合点がいった。
串焼きをほおばり、串を皿の上に投げて唇を手の甲でぬぐうと。少々物足りない、というように空になった皿を寂しそうに見つめた。
「いいけど。――――とりあえず、お水ください」
了承の合図の代わりに、シオルネーラは真面目な表情でそう告げた。
――第1部完――
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第二部の内容は未定ですが、めっちゃむかつくやつら等~登場させてみようかと思ったりそうでなかったり。
あ、ちなみに皆さんがRPGをされている時「これ使えねぇなぁ、と思ったジョブ〈職業〉がありましたら、ぜひお教えください~」
第一部最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今後とも「リタイア勇者たちの飲み会」をよろしくお願い申し上げます。
木のままセブン




