7杯目。お水をください。(5)
「いいのですよ、ヤス。泣いても。人間の女なんてどこに行ってもそんなものです。自分にとってより価値のあるオスが見つかれば、付き合っている事実すら過去のものにしてしまう、恐ろしい化け物なのです」
「うう。うう。女神さま・・・女神さまぁああああっ」
「いいのですよ。ヤス。今度こそ、正真正銘私を選んでも」
音楽を紡ぐように女神は美しい声でそう答えた。
その女神が触れている自分の頬に重ね合わせ、ヤスは勇者であった時代を思い出すようなまっすぐな瞳で彼女を見る。
「ヤス・・・」
彼女に柔らかく名を呼ばれて、イーリスの細い指先に重ね合わせる自分の指に力がこもった。
「―――――ってオイコラ、イーリス。ふざけんなよ!! もう騙されねぇぞ!! 自分がやってることを正当化するなんて女神聞いてないぞ!」
「きゃぁっ」
血走った瞳のヤスが女神の細い手首を掴んだ。ついでに床に引きずり倒す。
「ヤ・・・ヤス」
イーリスを見下ろすヤスの顔は真っ赤に染めあがっている。鼻息も荒い。
イーリスはきゅっとドレスの胸元を寄せた。
その頬はバラ色に赤らんでいる。
「責任、とってもらうからな」
ヤスオの鼻の穴が膨らんでいる。
熱い、酒臭い吐息がイーリスの顔にかかる。
イーリスは心臓が跳ね上がるような心地で、目をつむり、時を待った。
――――が。