1-6 でも、それでもいいと思ってしまった
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紫に似た光とともに、強い熱風が後ろから吹き付ける。
叫ぶのをやめた二藍は、呆然としながら後ろをゆっくりと振り返る。
何が起こっているのか、理解できない。
光を放つのは、馴染みのある箪笥の、一つの引き出し。
上から六番目の、右から七番目。
二藍の糸の入った、引き出し。
それを見つめた二藍は無性に、その中におさめられているはずの糸の束に触れたくなった。
相変わらず謎の眩い光を出し続けている引き出しに手を伸ばすなんて、頭がおかしくなったのかもしれない。
これ以上よからぬことが起こってしまったら、どうするのか。
でも、それでもいいと、思ってしまった。
立ち上がり、自然と、右手が前へと向かう。
炎に惹かれる蛾の気持ちは、きっと今の自分のようなのかもしれない。
少し怖くて、それ以上に、身を焦がすような衝動が押し寄せる。
「やめっ――――」
後ろで誰かが叫んだ気がしたが、どうでもよかった。
二藍の手が引き出しに触れた瞬間、勢いよくそれは飛び出した。
二藍を囲むようにして、細い糸が円を描いて空中に浮かび上がる。
二藍色の糸だ。
最初それが放っていた二藍色の光は、二藍を取り巻いた瞬間に、さまざまな色へと移り変わり、眩さを増す。
七色の虹とは比べものにならない、オーロラさえも見劣りする程の、
幾千幾万もの色をした光が放たれる。
幻想的な光が二藍を照らす中、突然、まるで生きているかの様な、心臓のリズムにも似た振動が光を細かく震わせた。
――――ドクン、ドクン、ドクン、
鮮やかな光も、その鼓動のような響きに合わせて強弱を繰り返す。
『身体が、熱い…』
身体の奥底、何かがむくりと頭を上げた気がする。
きっとそれは、永く、使っていなかった、自分の一部だ。
そう、確信に似た声が頭の中で響く。
振動はどんどん大きくなっていく。
そして、その脈打ちは、二藍のやや早くなった鼓動と、
少しずつ、近付いて、触れて、交わり、
完全に、重なった。