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春は無慈悲な時の女王  作者: メイア
第一章 春は無慈悲な時の女王
6/64

1-6 でも、それでもいいと思ってしまった

[ 6 ]


紫に似た光とともに、強い熱風が後ろから吹き付ける。

叫ぶのをやめた二藍は、呆然としながら後ろをゆっくりと振り返る。

何が起こっているのか、理解できない。


光を放つのは、馴染みのある箪笥の、一つの引き出し。


上から六番目の、右から七番目。


二藍の糸の入った、引き出し。


それを見つめた二藍は無性に、その中におさめられているはずの糸の束に触れたくなった。

相変わらず謎の(マバユ)い光を出し続けている引き出しに手を伸ばすなんて、頭がおかしくなったのかもしれない。

これ以上よからぬことが起こってしまったら、どうするのか。



でも、それでもいいと、思ってしまった。



立ち上がり、自然と、右手が前へと向かう。

炎に惹かれる蛾の気持ちは、きっと今の自分のようなのかもしれない。

少し怖くて、それ以上に、身を焦がすような衝動が押し寄せる。



「やめっ――――」


後ろで誰かが叫んだ気がしたが、どうでもよかった。


二藍の手が引き出しに触れた瞬間、勢いよくそれは飛び出した。


二藍を囲むようにして、細い糸が円を描いて空中に浮かび上がる。


二藍色の糸だ。


最初それが放っていた二藍色の光は、二藍を取り巻いた瞬間に、さまざまな色へと移り変わり、(マバユ)さを増す。


七色の虹とは比べものにならない、オーロラさえも見劣りする程の、

幾千幾万もの色をした光が放たれる。


幻想的な光が二藍を照らす中、突然、まるで生きているかの様な、心臓のリズムにも似た振動が光を細かく震わせた。


――――ドクン、ドクン、ドクン、


鮮やかな光も、その鼓動のような響きに合わせて強弱を繰り返す。


『身体が、熱い…』


身体の奥底、何かがむくりと頭を上げた気がする。


きっとそれは、永く、使っていなかった、自分の一部だ。

そう、確信に似た声が頭の中で響く。



振動はどんどん大きくなっていく。

そして、その脈打ちは、二藍のやや早くなった鼓動と、





少しずつ、近付いて、触れて、交わり、




完全に、重なった。




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