2-14 約束
―――『約束を交わそう。いつになるかは分からない再会の時に、僕らの道が分かれたことが僥倖だったと思えるくらいの、素晴らしい約束をするんだ。そうすればきっと、寂しくないよ』
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三か月ぶりに顔を見た鎌木二藍は予想以上に元気な様子で、愛染乃至は心の中で安堵の息をついた。
握手を交わしたのち、施設の説明をしながら部屋へと案内する。パートナーである乃至と二藍は一つの部屋を二人で使うことになっている。任務をこなすのに必要不可欠な二人の間の信頼を築くためである。
「ルームシェアなんて俺初めてだ……」
知らされていなかったらしい二藍が驚いたように呟いた。それを聞いて乃至は首を傾げた。
「確か学園の寮は二人部屋じゃなかったか?」
「部屋は二人部屋だったけど、人数の関係で俺は一人で使ってたんだよ。他の生徒も突然の編入で戸惑ってたみたいだから、却ってルームシェアしなくてよかったけど」
「………。大丈夫だ二藍、もう一人ぼっちじゃないからな……」
少し芝居がかった動作で二藍の肩に手を置けば、二藍は憤慨して振り払った。
「その憐れんだような目はなんだよ!」
「無理することはない。誰だって孤独は辛いものだ」
「無理してないよ!全然平気だったし!言っとくけど別にボッチだったわけじゃないからな。ちゃんと友達できたから!」
「三カ月の短い友情だったな……」
「こら、勝手に終わらすなよ!」
漫才のようなやり取りをしながら、乃至は自身がかなり浮かれていることにふと気がつく。一種のトラウマだったはずの“パートナー”の存在が予想外にも心地よい。
二藍には“亡霊”の件はもちろん、他にも問題が山積みだ。パートナーとして乃至は二藍を一流の能力者に鍛え上げ支えていくとともに、“H.A”の上官として彼を監督しなければならない。もし二藍が“H.A”にとって危険な存在となるならば、乃至がそれを止めなければならない。年相応に無邪気に笑う二藍の様子についつられてしまったが、これからは気を引き締めていかなければ――
「ちょっと、聞いてる!?ちゃんと約束もしたんだよ。また会おう、って。だから、大丈夫!」
屈託のない二藍の笑顔を見て、でもやっぱりもう少し浮かれていたいと、乃至は思った。
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教室を出ていく直前に、私は足をとめた。
くるりと振り返り、こちらに背を向けて座っているフタアイの名を呼ぶ。意外だったのだろう。やや呆気にとられた顔でこちらを向いた彼の様子に、ほんの少し溜飲が下がる。フタアイにやられっぱなしでは、こちらとしては大変悔しかったのだ。
私は唇の両端を引き上げて、彼に告げる。
「またね、フタアイ。卒業しても元気でいてね。また今度、三人で会おうね。だから、元気でいてね」
何年かぶりの私の笑顔はきっとひどく強張っていて、不自然で、到底見れたものじゃないのだとは思うけど、でも、成功したみたいだった。
―――少しだけ寂しそうだったフタアイが、華が咲いたように笑ったから。
「うん。ナタリアたちも、元気でね!」
次に会うときには、あんな風に私も笑えるようになるために―――私は今度こそ屋上へと走り出した。
第二章はこれで終わりです。ご閲覧ありがとうございました。
第三章「青は爛れた愛の烙印」では、ようやく二藍が“H.A”で乃至とともに能力者としての一歩を踏み出します。あらすじや詳しい更新予定などは活動報告にて。




