1-20 契約
短いです
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およそ五百年前、イタリアのとある下級貴族の家に男児の双子が生まれた。
ともに幼いころから聡明で、快活であり、兄はよく弟を守り、弟もまたよく兄を助けた。
二人が八つになったある日、いつものように近くの森へ出かけると、恐ろしい異形の者が暴れていた。それはまるで闇の中から生まれたかのように真っ黒で、目も鼻もなく、ただ口と思しき切れ目があるだけ。
木をなぎ倒し、動物を捕まえて喰らい、おぞましい叫び声をあげる化け物に、兄弟は動くことができなかった。
――その時だった。凄まじい量の光と身を焦がすような熱風とともに、翼をはやした者が現れた。その者は双子の前に降り立ち、問いかけた。
「助かりたいか、人の子よ」
肯定すると、時には日の光のような金に、また時には月の光のような白にその姿の色を変えながら、有翼者は二人に異形を倒すための力を授けた。
「ならば戦うがよい、さすればお前たちとともにこの世界も救われるだろう――これは私たちの契約だ。力は与えてやった。異形の者を、倒せ」
二人の子供は与えられた力を使って、異形の者を切り裂いた。
そして、双子は戦いを始めた。
異形の者は“闇”と名付けられ、世界のあちこちに現れた。
翼をはやした者に与えられた不思議な力を使い、闇を追いかけて双子は世界中を飛び回った。そしてそのうちに双子に協力する者達が現れた。
双子は協力者達に自分の力を貸し与え、彼らは戦いの際には背中を預ける仲間となっていった。
子供だった双子はやがて立派な青年となり、協力者とともに闇を討伐するための組織を結成した。
最初はイタリアの小さな隠れ家、やがて立派な屋敷へ、そして世界にいくつかの支部を持つ秘密組織へと大きくなり、現在も活動を続けている。
―――その組織は、今は、世界機構“H.A”と呼ばれている。




