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春は無慈悲な時の女王  作者: メイア
第一章 春は無慈悲な時の女王
18/64

1-17 ゲドル・E・ルストゥルトゥ

[ 17 ]


人もまばらな廊下を二藍と乃至は歩いていた。

先程のやり取りを最後に、二人の間に会話は少ない。


白色系の石の廊下をしばらく乃至の後について歩くとエレベーターに乗せられた。

おしゃれなホテルにあるような、少し古風なデザインのエレベーターだ。

乃至が押したボタンは最上階の18階。


「今から会う人が、ここの最高責任者のルストゥルトゥ大佐だ。君は説明を聞いて、自分の好きな道を選べばいい」


「…うん」


最高責任者という重々しい単語に、思わず二藍の肩に力が入る。

それに気づいた乃至はくすりと笑う。


「そんなに緊張しなくていい。大佐は誠実な人だ。君が戦いを拒んで、元の生活に戻ることを選んだとしても、ちゃんと君の居場所に戻してくれるはずだ」


だから、と乃至は続けた。


「君は、後悔しない選択をするんだ」


青空を濃縮したような青い瞳が、まっすぐに二藍を射抜く。


「一時の喜びや、高揚に身を任せてはだめだ。君が今まで歩いてきた十数年間を、決して忘れないで」


青い瞳が、少しだけ潤んだように見えたが、乃至はすぐに前を向いてしまい、表情は分からなかった。

返事をすることもできず、半ば呆然としたまま、二藍はエレベーターが最上階に着く音を聞いた。



最上階に着いた二人の前には、五つの扉があった。

中央は両開きの扉で、一番大きい。

その他はどれも同じ造りだが、中央のものも含め全てに金色のプレートがかかっているので何の問題もないだろう。


一番右側の扉に乃至は近づき、静かに二回ノックした。


「大佐、愛染乃至です。先ほど報告した鎌木二藍を連れてきました」


「入れ」


中から聞こえてきた落ち着いた低音に、乃至が扉を開く。

扉の向こうで待っていたのは、淡い桃色の髪の男だった。



その大柄な青年は、広い部屋の奥の大きな執務机の上で組まれた両手に顎を乗せて座っていた。

淡く、そしてしなやかな桃色の髪の毛はオールバック。

左右の瞳の色は、一方は黒、もう一方は灰色だ。

乃至と同じような黒い軍服を身に着けていて、がっしりとした体つきの白人男性だ。

顔のつくりはなかなか整っているが、その柔らかな髪色とは裏腹に、その眼は鋭く、熱を隠し持った炭を連想させた。

醸し出す威圧感は、その珍しい容姿のせいではない。


『これが、乃至のボス…』


緊張でごくりと喉が鳴った。こぶしがぎゅっと握られる。



「大佐、怖がらせてどうするんですか?」


不意に、鈴の鳴るような美しい声が室内に響いた。

その言葉には咎めるような雰囲気はなく、場を和ませる意図のようだった。


二藍は大佐の横で控えている女性に目をやった。

思わず、息をのむ。


乃至を初めて目にした時を思い出すほど、その女性は美しかった。

金糸のような金髪は淡すぎず、濃すぎずに煌めいている。

左右の(ビン)だけが少し伸ばされ、後ろは首にかからないほどのショートヘア。

それまでに会った者たちと同様に黒い軍服のような服を着ていたが、ノースリーブだというところが不思議に思えた。

横分けされた前髪は左目側が覆い隠されていて見えない。

右目は髪色と同じ金色で長い睫毛が縁どっている。


ぽかんとした間抜け面のまま見惚れていると、その女性は二藍ににっこりと微笑んだ。

頬が熱を持つのがわかる。恐らく自分の顔はゆでだこの様に真っ赤に違いない。


「はじめまして、鎌木二藍君。私はルストゥルトゥ大佐のもとで秘書をしているフロルよ。どうぞよろしく」


「よ、よろしくお願いします」

「そしてこちらが…」

「ゲドル・E・ルストゥルトゥだ。世界機構“H.A”日本支部の責任者を務めている。よろしく」


フロルの言葉を引き継ぐようにルストゥルトゥは自己紹介をした。


「さて、早速だが、君の身に起こったことを説明していこうと思う。そこにいる愛染中尉からどの程度の説明を受けているのか教えてほしい」


ルストゥルトゥが左右で色の違う瞳を二藍に向ける。

乃至が言ったことを思い出しながら、二藍はしどろもどろに答えた。

「ええっと…俺が糸とリ、リゾナンツァ?して、“闇”と戦える能力を持っていて、なんか、戦うか、戦わないか?みたいな…?」


「ああ、大体は合っている。“闇”と呼ばれる化け物を倒す力を持っているのが能力者という存在だ。闇は能力者でないと倒すことはできない。世界の裏側で闇を討伐することを使命とするのが我々の組織、世界機構“H.A”だ」


「は、はあ…」


「信じられないだろうし、平穏な日々を過ごしていた君にとって、我々は怪しいことこの上ないと思う。だが、君は“共鳴(リゾナンツァ”を起こし、能力者になってしまった。闇は能力者を狙う。君がこのまま元の生活に戻ることはできない。能力を封印して今日君に起こったことを全てなかったことにするか、それとも私たちとともに戦うことを選び今までの君をなかったことにするか、決定権は君にある」


「…はい」


言い淀んだ二藍に、ルストゥルトゥは小さく笑いかけた。


「もちろんまだ訳が分からないだろうから、まずは“H.A”の創設理由について説明しよう。――五百年前、翼ある者と人の子らが交わした契約から、我々の戦いは始まった」




五百年前という超展開

今更ながらこういう超展開ありまくりな話ですww


フロル:ルストゥルトゥの秘書。能力者ではない。

ルストゥルトゥ:能力者。階級は大佐。

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