05 あの日
夢を見た――
おれが四才、ヒメノが二才の時に死んだ両親の夢だ
久しぶりに見た
夢を見たといっても、よくは覚えていない
ただ一つだけはっきり覚えている場面がある
雨の中、おれ達に覆いかぶさるように倒れている両親の姿、その腕の隙間から見えた人影
手にした剣からしたたり落ちる赤い雫
そして最後はものすごい雷で目を覚ます
「あの夢か……久しぶりだな」
両親は二人共、騎士団に所属していた
父親は一級白帥士、次期団長候補と言われたほどの人
母親は一級赤帥士、女性では数少ない一級の称号を持つ女傑
その為二人が実家に帰れる事はほとんどなく、おれ達は祖父母のもとで暮らしていた
あの日は久しぶりの休暇で、家族四人で出掛けていた
帰り道の途中、突然父が叫んだ
(逃げろ!)
そこから先は覚えていない……いや、見てはいたが思い出したくないだけなのか
気付いた時には、ヒメノと一緒に祖父母の家のベッドで寝ていた
ベッドの周りには心配そうに顔を覗き込む、知り合いや親戚
その後ろには泣いている人もいた
今だに状況がわからず困惑したまま、数日後両親の葬儀を迎えた
《死》が理解できないおれ達は、なぜ二人はいなくなったのかと、そればかり考えていた
その頃からだったか
かけっこで負けなくなった――
腕相撲で負けなくなった――
後ろから声をかけられる時、なんとなく気配がわかるようになった――
しかし周りの人と違うこの体を疎ましく思うことはなかった
逆に、両親がいなくなったことで、いつからかこの力でヒメノを守っていこうと思った




