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姫と竜  作者: 久保 徹
5/9

05 あの日

 

 

 夢を見た――

 

 おれが四才、ヒメノが二才の時に死んだ両親の夢だ

 久しぶりに見た

 

 夢を見たといっても、よくは覚えていない

 

 ただ一つだけはっきり覚えている場面がある

 

 雨の中、おれ達に覆いかぶさるように倒れている両親の姿、その腕の隙間から見えた人影

 

 手にした剣からしたたり落ちる赤い雫

 

 そして最後はものすごい雷で目を覚ます

 

「あの夢か……久しぶりだな」

 

 両親は二人共、騎士団に所属していた

 

 父親は一級白帥士、次期団長候補と言われたほどの人

 

 母親は一級赤帥士、女性では数少ない一級の称号を持つ女傑

 

 その為二人が実家に帰れる事はほとんどなく、おれ達は祖父母のもとで暮らしていた

 

 あの日は久しぶりの休暇で、家族四人で出掛けていた

 

 帰り道の途中、突然父が叫んだ

 

(逃げろ!)

 

 そこから先は覚えていない……いや、見てはいたが思い出したくないだけなのか

 

 気付いた時には、ヒメノと一緒に祖父母の家のベッドで寝ていた

 

 ベッドの周りには心配そうに顔を覗き込む、知り合いや親戚

 

 その後ろには泣いている人もいた

 

 今だに状況がわからず困惑したまま、数日後両親の葬儀を迎えた

 

 《死》が理解できないおれ達は、なぜ二人はいなくなったのかと、そればかり考えていた

 

 その頃からだったか

 

 かけっこで負けなくなった――

 腕相撲で負けなくなった――

 後ろから声をかけられる時、なんとなく気配がわかるようになった―― 

 しかし周りの人と違うこの体を疎ましく思うことはなかった

 

 逆に、両親がいなくなったことで、いつからかこの力でヒメノを守っていこうと思った

 

 

 


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