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虚空に消えることば

何本目か分からない缶ビール……発泡酒をあおりながら、美梛は鋭い視線をテレビに向けていた。その目に穂波実とじゃれていた時の気だるさは全く無い。

 くだらない番組を垂れ流しているテレビを睨み付けながら、美梛の心にはテレビ以外の理由で波風がたっている。


「香華純夏は一目見た時から岩戸佳佑にぞっこんだった。しかし彼女は親友の御子神未希が、岩戸佳佑と付き合っていると思い込んでいた」

 テーブルクロスの模様を指でなぞりながら、いなくなってしまった穂波実に説明しているように独り呟く。

「あの鬼はそんな彼女の想いが歪みきった末に現れた、この世の亡霊とでも言えるかもしれん。……想い人を奪うため、女を殺すことを決意した嫉妬に狂う鬼。さしずめ平安時代の橋姫と言ったところか。だが、問題は正にそこだ」

 人の強い想いは古来から様々な怪異を成してきた。その善し悪しの程度の差はあれど。

 

 しかし現代。

 

 それは言うなれば、人類が自ら積み重ねて発展させた「科学」に支えられた時代。

「もっとも、科学とて自然の摂理を知り、人の良い様に利用するという点では、魔術や霊的なものと何ら違いは無いがね」

 テレビの中。どこかで見たようなコメディアンが狂ったように馬鹿笑いしている。名前は思い出せない。

「とにかく、この信仰心の薄い時代にあって、だ。呪術や霊力と無関係の女子大生香華純夏の想いだけであの凶鬼を呼び出せたか、と言う疑問」

 答えは無論、ノーだ。奥手な女の淡い恋心程度であんなことになっていては、社会は大混乱だろう。例えどんなにその想いが鬱屈しても、向かうところは最悪ストーカーや何かの犯罪だ。しかもあれほどの強力な鬼の具現化。相当な手間隙をかけなければ、美梛とて容易ではない。


「桁違いの霊力を持つ何かが彼女の意識に介入し……」

 同じような想いを遂げられずに死んだ霊魂を凝縮して純夏に憑依させた。

「その可能性が非常に高い。と言うか、ほとんどそうだとしか考えられん。それが、問題だ」


 CMがあけても、コメディアンの笑いは止まらない。それこそ何かに取り憑かれてしまったかのようで見るに絶えず、電源を切る。


「天狗、いるか」

 煙草に火をつけて、何かを呼ぶように囁く。

「変わった事は?……そうか。ならいい」

 誰もいない、何も聞こえない。が、美梛は呟きを続ける。

「いや、それはいい。下手を打つとお前が消されるぞ」

 リビングは禁煙だったなと、ふとそんな事が斜めによぎって消えて行く。

「私が調べてみよう。お前は少し警戒を強くしておけ。変わった事があれば教えてくれ」

 空き缶に吸い殻を放り込む。美梛はそれっきり呟きを辞め、静かになった部屋でため息をつく。


「私だけでは荷が重いかもしれんぞ?バカ親父」

ご精読ありがとうございました。

とりあえずこの回はここで終わりになります。チラリとでも呼んで下さった方々、読むに耐えない悪筆の嵐の中、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


続きはそのうちアップしたいと思いますが・・・書けるかなw

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