ともだち
「見せつけられちゃったなぁ……」
「あ、あれは、違うんだってば!」
「違くないよ。それが佳佑君の想いだから。そしてそれこそ、私を止めてくれた気持ち」
「むむぅ……元はと言えば純夏がいけないんでしょ。勝手に勘違いして、勝手に鬼になったんだから」
「ふふ……そうだよね。私が一番驚いてるんだよ。鬼になるなんて、学芸会でもなかったもの。でも結局、私の行動が岩戸君と未希を本当につなげたんだから、随分間抜けな話だよね」
「う……そうならそうと、相談してくれればよかったのに」
「言えないよ。二人とも大事だもん。この気持ちはお墓まで連れて行こうって、本気で思ってたんだから」
「純夏……ありがと」
「ダメだよ、未希。やっぱりもう未希とは会わせる顔が無い。私は、未希がいなくなれば、岩戸君が自分のものになるかもしれないって、心のどこかで思ってたってことなんだから。私、地元に戻るよ……」
「何言ってるの!私も佳佑君も無事だよ!純夏がどう思ったって、そうならなかったから問題ないでしょ!ほら、あれじゃん!自分の中で考えてるだけだったら、憲法だって保障してくれるんだって!」
「でもね……」
「私は気にしてない。ねぇ純夏、誰にだって、誰かを恨んだり妬んだりしたことくらいあるよ。そうじゃない人間なんていないって、思う。だってそうでしょう?私は今まで、何度もあったよ。お父さんだったり先生だったり友達だったり姉さんだったり、早く死んじゃったお母さんを恨んだ事もある」
「……」
「そんなもん、こうやって誰かに話しちゃえば解決するんだよ。しかも良い事に、私たちは知らない仲じゃないもん。それどころか、親友でしょ?それで分かり合えないはずなんか無い!違うかな?……あれ?変なの、涙、出てきた」
「未希……」
「だから、心配しないでよ。こんなことくらいで純夏の事嫌いになったりしないよ。また鬼になるんなら、何度だって戻したげるから!そのための力なら、私にはあるもの」
「うん、ごめん、未希。だから泣かないで」
「純夏が泣かせたの!もう、止まんないや……」
「未希……ありがとう。私、幸せ者だね」
ご精読ありがとうございました。