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ドウシヨウ
暗い部屋で音が響く。冷蔵庫から漏れる明かりだけの部屋。その前にうずくまる猫背の影。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
暗くなってくると、まるで治る事の無い古傷のように右腕が痛む。
そして、無性に肉が食べたくなってしょうがない。……それも、生肉を。
がつがつがつ。
昨日業務用スーパーであれほど買い込んで来た肉も、この分だと明日の夜までには食べ尽くしてしまう。
だが、彼女にはもう外に買いに行く事は出来ない。それほどまでに彼女の姿はすっかり変わってしまったのだ。
どうしよう、ドウシヨウ、ドウ……。
「ドォ……」
口から漏れる呟きが、少しづつ低くなって行く、そんなことにも、彼女は気がつかなくなってくる。あの心の黒いシミは、今や彼女のほとんどを塗りつぶさんとしているようだった。
太く、大きくなった右腕で、香華純夏は肉を鷲掴みにした
ご精読ありがとうございました。