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聖者ですが、拉致監禁されたのでキレています  ――拒まれても、騎士は守ることをやめられない  作者: テレス


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忠犬の使い道

目を覚ましたケイは、

昨日のうちに確認するはずだった

荷馬車を探しにいこうと部屋から飛び出す。

たまに教えてもらっていたし、

隣で見てたので馬の操縦はできるはずだ。

が、

部屋を出たらすぐにディルに


「おはようございます」


と声をかけられる。


出鼻をくじかれたが、

ディルなら知るだろう荷馬車の場所聞き出そうと、

忘れ物があるといっても、

替えの下着だからといっても、

ニコニコ笑って

私がお取りしますので

まずは朝食をお召し上がりくださいと、

なかなか引き出せない。


朝食が終わってからでもいいかと考え直し、

食卓につき4人で朝食をとる。


自分の好きなものが用意された出来立てのお皿と

優しい人達を見ていると、胸がきゅっとなり、

やっぱりこの人たちを巻き込みたくないと強く思う。

朝食を残さず食べ終えると、

ヴァンから犬を拾ったから見て欲しいと言われた。


「……犬?」


予想外の単語にちょっと嬉しさがにじみ出る。


イリアスもディルも笑ってヴァンの話を聞いている。


「あぁ、でかくてあまりお利巧ではないが、

 絶対に噛まない忠犬だ」


「躾はするから、

 できればケイに面倒みてもらえないかな。と」


「犬は好きだけど……

 なんで拾ったのに忠犬ってわかるんだ???」


「一緒に散歩してほしくてな」


「それは……全然いいけどさ……」


「庭にいるから今からあってもらえるか?」


ケイは犬を見た帰りに

忘れ物取りたいとヴァンに言えば、自然だと思いつく。


「いいよ、すぐ行こう!」


イリアスとディルの様子がおかしいのは気になるが、

ヴァンを急かして庭に向かう。


庭園の中央へ、ケイが出る。

示されたパーゴラの下に、

人影が見え驚いたケイは


「ヴァン!」


と焦って振りかえる。


人影はビクリと動き、膝をつく。

ヴァンはしゃあしゃとあの犬だと告げてくる。

ヴァンに手をひかれ、

ケイがアルヴィスの前に姿を現す。



アルヴィスは息を詰める。視界が滲む。


ご無事だ。

生きている。

それだけで、胸の奥が熱を帯びる。


ケイは不機嫌を隠さず

ヴァンから手を離しにらみつける。


なんなんだよ!ヴァンのやつ!

絶対、ヴァン達の事は知られたくないのに!


犬でもないし!


バリバリの神殿関係者じゃないか!

どーいうつもりだ?!

と頭にきてカッカするが、


いつもと変わらず優しい態度のまま

こちらを見ているヴァンを見て、

ヴァンが自分のためにならない事を

一度もしたことがない事を思いだし、


ため息をついて膝をついたままの騎士に向き直る。


ケイが言う。

声音は落ち着いている。


「騎士、俺があんたと一緒にいた時、

 神殿に伝わるよう細工した?」


アルヴィスは顔をあげ、即座に答える。


「していません」

「誓えます」


ケイは数秒、黙る。


空気が重くなる。

アルヴィスの拳が、わずかに白くなる。


「……私の不手際であり落ち度です。

 守りきれず申し訳ありません」


言い訳はない。

ケイは目を細める。


「裏切ったわけじゃない?」

「ありません」


即答。

声は揺れない。

ヴァンが横から言う。


「嘘はない」


断言ではなく、確認。


ケイは小さく息を吐く。


「一緒に来た人が言ってた話は本当なのか?」


アルヴィスの視線が、

わずかに揺れ、絞り出すよう答える。


「……はい」


「聖者様に関する事はほぼ秘匿事項のため、

 儀式の内容をお伝え出来ず申し訳ないのですが、

 お伝えした内容は事実であるため、

 神殿も焦って探しておりました」


頭の中で、天秤が動く。


ここに留まれば、追手は続く。

屋敷ごと標的になる。

絶対に神殿にこの屋敷と

ここの人達事がばれる訳にはいかない。


イリアスとディルなんて、

どんな目にあうかわかったもんじゃない!


ヴァンの 犬とお散歩 の意味を知る。


「儀式が済んだら」


ケイは再びアルヴィスを見る。


「俺がここに戻るって言ったら、戻すか?」


問いは静かだ。


アルヴィスは一瞬、息を止める。


「必ずや」


「神殿が止めたら?」


「あなた様の意思に背くものは全て斬ります」


庭園の空気が、ひやりとする。


宣言でも、誇示でもない。

事実として置く。


ケイは眉を寄せる。

うーん。

この騎士は本当に全部が大げさで

信者すぎて判断がつかないんだよなぁ。


ヴァンが連れてきたって事は

俺に害がないからなんだろうけど、

信者なんて右から左にすぐ変わるから

今のテンションなんて当てにできないしなぁ。


言ってる事はありがたい事なんだろうけど


いまいち確信が持てないケイは黙り込んでしまう。


「……聖者様。どうか、

 神殿へ行くことをご検討ください」


アルヴィスは額を地面に擦り付けんばかりに懇願した。


「貴方様の命に関わるのです。

 儀式さえ済めば、私が必ずこちらへお連れします。

 だから……どうか、

 御身への不安をお取り除きください」


その言葉は、信仰ではなく、

ただ一人の人間を生かしたいという悲痛な叫びだった。


ケイはあまりに悲壮感を漂わす騎士をみながら、

逆に冷静になる。


いくら宗教とはいえ、なぜこんなに入れ込むのか

全く理解できないからだ。


今のところ、眠くなるだけで死に対する危機感もそうない。

勝手な召喚に対する怒りはあるが、

ここには何の未練もないので、

眠ったまま起きず、死んだとしても

ああ、そうか。

と思うだけだ。



仮に、儀式が洗脳でも、薬物的依存でも

とりあえず、何かしらした後、

すぐにここに戻り治療ができるなら

これ以上の自動的な摩耗はなくなり、

そうすれば、ヴァン達にも迷惑をかけず

いずれ自立もできるだろうと考える。


ヴァン達頼りの他力本願な発想だが

絶対にどうにかしてくれるという自信がある。


問題はこの騎士が本当に手伝うのか?

って事なんだよなぁと騎士を見つめ考える。

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