表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

7. 逃げられない甘い蜜

第7話をお読みいただきありがとうございます。

自由を奪われ、王宮の奥深くに囚われたリリア。

今回は、ギルバート王子による執拗で甘美な「教育」が始まります。

逃げ出したいはずなのに、抗えない。そんな歪な関係の幕開けをご覧ください。

王宮に閉じ込められてから、数日が過ぎた。


窓の外には、かつて私が暮らしていた賑やかな商店街の屋根が遠くに見える。


この部屋の扉には内側にノブがなく、廊下には絶えず衛兵の足音が響いている。




「……また、食べないのかい?」




背後からかけられた声に、肩が跳ねる。

そこには、銀の盆を手にした王子――ギルバートが立っていた。彼が持ってきたのは、王宮の料理人が焼いたであろう、見た目も鮮やかなデニッシュパンだ。



「いらない。お父様の焼いたパンじゃないと、味がしないわ」



私が顔を背けると、ギルバートは低く笑いながら私の隣に腰を下ろした。



「強情だね。でも、その震える指先でそんな口を叩くなんて、ますます可愛らしい。」



彼は一切の躊躇なく、私の顎を指先で掬い上げた。逃げようとしても、もう片方の手が私の腰をがっちりと固定する。



「……やめて。私をどうするつもり?」


「どうする? 決まっているだろう。君は僕の妻になるんだ。パンを焼く必要なんてない。君はただ、僕に愛されて、僕だけを求めていればいい」



彼はデニッシュを一口大にちぎると、強引に私の唇に押し当てた。



「食べなさい、リリアーナ。君が弱って死んでしまうのは困るんだ。……君の体がこれ以上細くなるなら、僕はあのパン屋を――君の『両親』を、本当にこの世から消さなきゃいけなくなる」



「……っ!」



卑怯だ。彼は私が何を大切にしているかを、すべて理解して利用している。


悔しさに涙を浮かべながら、私は差し出されたパンを口にした。甘い果実の味が広がるけれど、胸の奥は泥を飲み込んだように重い。



「いい子だ。……ねえ、リリアーナ。あの日、君が僕に言った言葉を覚えているかい?『あんたみたいな性格の悪い子に食べさせるパンは無い』って」



ギルバートの瞳が、熱を帯びた歪な光を放つ。




「あの時、僕は初めて『欲しくて堪らないもの』を見つけたんだ。僕を敬わず、ただ一人の人間として激しく拒絶した君。……君に拒まれるたびに、僕は君を壊して、僕の一部にしてしまいたくなる」



彼の唇が、耳元を掠める。




「君が僕を嫌えば嫌うほど、僕は君を離せなくなるんだよ。……わかるかい? 君のその憎しみが、僕にとっては堪らない歓びなんだ。」




それは、まともな人間の論理ではなかった。

優雅な微笑みの下に隠された狂気。


私はこの時、初めて悟った。この男は、私が泣いて縋っても、あるいは刺し殺そうとしても、それを「喜び」として受け取ってしまうのだと。



「……あんたは、狂ってるわ」


「そうかもしれないね。でも、その狂気を作ったのは君だ。責任を取ってもらうよ、リリアーナ」



カーテンが閉ざされ、部屋に闇が落ちる。

逃げ出す隙を伺う私の手首には、いつの間にか彼が用意した「贈り物」――重厚な金細工のブレスレットが、まるで手枷のように冷たく光っていた。

王子の愛は、甘い蜜のようにリリアの自由を奪っていきます……。

恐怖と、それ以上に抗えない彼女の心境は、果たしてどこへ向かうのでしょうか。

この先の「歪な愛」の行方が気になる!と思ってくださった方は、ぜひブックマークや下の「☆☆☆☆☆」から評価をいただけますと、更新の大きな活力になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ