7月
7月。
白河オリヴィア先輩のイベントは5つあった。
ひとつめは定番の七夕イベント。
7月7日のみに発生するイベントで、連絡先を持っていると催し物へ一緒に行こうと誘われる。
駅に行くと私服のオリヴィア先輩が待っている。
先輩の装いはバイトの時に似た感じのブラウスとデニムパンツ。
けれどもよく目を凝らすとじゃっかん色と形が違っている。
スクショを並べなければ気付かなかった。デザイン班凝りすぎでしょ。
そして七夕イベントなのに先輩のスチルはキャンドルなのである。
暖かなオレンジ色のキャンドルたちが列をなす様はとても綺麗で、その光の反射で先輩は全体的にオレンジ色にきらめいているのだけれど、それがまた幻想的で。
イラストレーターさん書き込みすぎでしょご馳走様ですと当時思った。
先輩のラフな格好はそれを輝かせるための伏線かよと。
仮に作画班の負担軽減とかの理由かもしれないけれど、そのような事は雑誌のインタビューや公式ガイドブックなどにも書かれてはいなかった。そもそもメディアに白河オリヴィア先輩のオの字は登場することはなく、小学生の時に遊んでいたゲームの禁忌のモンスターかよと思いもしたことがあった。けれど公式グッズはちゃんと販売されているので隠されているのかいないのかよく分からないのである。
ふたつめのイベントは期末テストイベント。
直接的にテストに関わるイベントではないが、連絡先を持っていると勉強を教えて貰える。
オリヴィア先輩直々に、いつもの喫茶店ディナヴィアで。
テスト期間特有の午前放課。
先輩の連絡先を持っていてかつ好感度を150以上にしていると、先輩からお誘いが届く。
いつもの喫茶店で勉強教えてあげようか?と。
この文脈には上から目線に感じる人もいるかもしれない。がオリヴィア先輩はいつもテストは満点でプレイヤーより上級生なのだ。当たり前じゃないかと。むしろ先輩に頼むべきじゃないかと。
因みに最初の定期考査が1位だと能力値は上がらない。
このタイミングでオリヴィア先輩の制服姿が初見だったはず。
私服で合流するとばかり思い込んでいたから、「おまたせ」のボイスの後にお嬢様学校の制服姿の先輩が現れるものだから、驚きと嬉しさのあまりうぅおおと声が出た。
席に着く前にお昼まだでしょと先輩がディナヴィアのホットドッグをご馳走してくれる。
のだけれどここにもランダム仕様があって、ソーセージに揚げたタマネギとピクルスを乗っけたデンマーク式のホットドッグ。他のホットドッグとの違いはパンがデブいこと。本当にパンがデブいのだ。
デンマーク式と具材は同じだけれどパンからソーセージがはみ出ているスウェーデン式。日本にも進出している家具店のホットドッグが思い出せる味わい。
最後に開発者の魔の手から逃れられなかった遊び心溢れたノルウェー式のホットドッグ。
これはノルウェー式とは言えないかもしれない。サバの切身がレタスとタマネギと共にパンにはさまれているのだ。
ホットマクロ―だろと当たるたびに思った事か。薄いジャガイモ生地のロンぺとかサーモンとチーズのオスロドッグとか色々やりようはあっただろ。それにランダム性好きすぎだろ。
見事抽選でサバドッグを引き当てるとオリヴィア先輩が顔を青ざめている表情のスクショが取れる。
頼んだの先輩でしょと思うけれどもこれは開発が悪い。きっと名前だけだと想像できないんだと思う。
せめてサバをフライにしておいて欲しいよね、焼きサバじゃなくてさ。
みっつめは夏祭りイベント。
連絡先を持っていると誘われる7月24日のみに発生するイベント。
集合場所に行くと浴衣姿で髪をシニヨンに纏めたオリヴィア先輩が待っている。
最初に出遭えたオリヴィア先輩の浴衣は青色だった。
そうなぜかオリヴィア先輩の浴衣の色にランダム要素があったのである。
赤と青と紫の三色。
このランダム要素を発見した時、先輩だけなのかと思ってメインヒロインについて検索してみると、ちゃんとメインヒロインたちにもランダム要素があった。
各々にあった三色らしいのだ。
二番目のメインヒロインは黄色2色とオレンジだったようだ。黄色のは花の色が違う感じで。
もう公式が病気なのか、決められない病に侵されているのか。パズ〇ラかよと。
オリヴィア先輩とタコ焼き、焼きそば、焼きトウモロコシ、じゃがバター、ラムネ、カキ氷を楽しんだ後、花火を見るイベントである。
初めての先輩との夏祭りではこの人、めっちゃ食べてね? と思いはした。けれども彼女の身長は170cmである。それなら仕方ないよめっちゃ食べるよねと腑に落ちた。
この時のメインのスチルは花火を見ている先輩。なのだけれど作画さんたちが頑張ってくれたおかげか、彼女の髪が色とりどりの花火を反射して滅茶苦茶綺麗なのである。それに進行に合わせて別の花火の色に変わったりもするのだ。ここでちゃんとセーブした後にインターネットで性能が上のグラボとメモリを買った俺は俺の事をちゃんと褒められる。
よっつ目は連れ去りイベント。
オリヴィア先輩が連れ去られるわけではない。
俺が先輩に連れ去られるイベントなのだ。
このイベントは好感度が350を越えていると強制的に発生するイベント。
例えば上記の夏祭りイベントで好感度が350に達すると次の日の7月25日に発生する。
まず初めにオリヴィア先輩はお嬢様である。
実家が超裕福。
だからか1年を通してオリヴィア先輩と強制旅行イベントが5回ある。
その都度、好感度が規定値に達していないと先輩はひとりで旅行に行く。
連絡先を持っていれば後日ちゃんとお土産をくれるので、初見だと旅行イベントがあるのではないかというニュアンスが得られるのだ。他のヒロインの場合は知らない。
1回目の連行される場所はモルディブである。
多分普通だったら沖縄やグアム、ハワイとかになるのではないだろうか。
このイベントにエンカウントしてしまうと、日数が5日間消費されてしまう。
なので一般的にはイベントが終了すると共に8月を迎えるのである。
しようとする人間は現れないと思うがオリヴィア先輩の聖地巡礼をするとおおよそ500万はかかるのではないかと。
このモルディブイベントは最高なのである。
モルディブといえばコテージが思い浮かべる人が多いだろう。
そのコテージでのイベントの間、オリヴィア先輩の立ち絵は水着姿なのである。
コテージの外でのイベントではサマードレスというか水着の色が見え隠れするラッシュガードを着ている。
どちらの立ち絵も好きです。
スチルはデッキチェアでくつろぐオリヴィア先輩。
水色の海が先輩の髪を少しだけ青く染めている。
先輩のだらけきった顔が見れる貴重なイベントだ。
いつつめはナイトプールイベント。
ナイトプールといえば淫らに感じてしまう人たちは多いだろう。
けれどオリヴィア先輩はお嬢様である。
実家が所有するホテルのプールを貸し切ってしまうのだ。
好感度が300を越えていると夜に発生するランダムイベント。
7月7日、7月24日、モルディブ時には発生しない。
夜になると先輩からメッセージで座標が送られてくる。
その座標に行くと、そこはホテル。
中に入るとコンシェルジュに無理やり水着に着替えさせられ最上階のプールへ送り届けられるのである。
プールフロアに入るとピンクの花柄の水着を着たオリヴィア先輩に腕を組まれ逃げられなくなる。
先輩とひととおり、ふたりだけのプールで遊んだ後は馬鹿でかい貝の浮き輪で先輩とツーショットを撮る。
イベントスチルはツーショット写真でナイトプールの光で煌めく先輩も良いが、彼女がしていたハートの形のサングラスの方に目が行ってしまう。グラ〇ルくらいでしか見たことがないぞ……。
このイベントの後は何故かしらオリヴィア先輩以外とのイベントが一切発生しなくなる。
教師とのスチルなしイベントさえも起きない。
白河オリヴィア先輩には誰も逆らえない。
そう7月はオリヴィア先輩の連絡先を持っていないと暇なのである。
なのでひとりでキャンドルを見て、ひとりで花火を見に行った。
それ以外はディナヴィアで勉強していた、カルダモンパンを食べながら。




