なろうチアーズプログラムの収益を予想してみると、たぶん「100PV=1円」くらいかなと思った話
◆◆ 注意 ◆◆
ここに書く数字は推測を含みます。正確さは保証できません。参考程度にどうぞ。
数値とか明らかに間違っていたら、具体的な情報源の提供と詳細な説明をお願いします。
合ってたら誉めて。あってなかったら見なかったことにしてね。
◆◆ 導入 ◆◆
最近「なろうチアーズプログラム」ってやつが始まりましたね。
長らく収益化に慎重だった“なろうちゃん”が、ついにPV連動のインセンティブへ踏み出した、という出来事です。
アルファポリスは10年くらい前から、カクヨムも5年くらい前から似た仕組みを持っていました。
時代の流れ、と言ってしまえばそれまでですが、無料文化の中心だった“なろう”が動いたのはやはり大きいですね。
さて、今回のエッセイでは、制度の要点をおさえつつ、「どのくらいの金額が動きそうか」をざっくり見積もります。
◆◆ なろうチアーズとは ◆◆
公式説明を抜粋してみますね。
https://syosetu.com/helpcenter/helppage/helppageid/201
■「なろうチアーズプログラム」は、小説家になろうに投稿した作品から作者の方が収益を受け取ることができる仕組みです。
■「なろうチアーズプログラムに参加し収益化を有効にした作品には、閲覧ページにプログラム用の広告が表示されるようになります。
■プログラム用広告の表示回数の他、作品の更新状況を元に毎月計算が行われます。
■「なろうチアーズプログラム」は、継続的な創作活動の支援を目的としています。そのため、一定水準の文字数で継続的な作品の更新や投稿を行っている場合には、より多くのなろうリワードが付与されるように設計されています。
■一方で、なろうリワードの獲得だけを目的とするような投稿・更新は運営側で推奨するものではなく、なろうリワードを多く獲得することに寄与しないような設計が行われています。
うーん、ちょっと難しいので要点だけ超要約してみます。
●収益化を有効にした作品ページに専用広告が表示される
●広告表示(回数)と作品の更新状況などをもとに、毎月「なろうリワード」を算出
●「継続的な創作活動の支援」が目的。一定文字数での継続更新ほど有利
●リワード獲得だけを目的とする投稿は非推奨で、報酬が伸びにくい設計
つまり「広告が作品の下で働き、その分が作者に分配される」仕組みというわけです。
“PVだけ”ではなく更新の継続性もスコアに入るため、長編連載+定期更新がもっとも相性がよさそうです。
一方で、短編は相対的に不利。また極端な更新(機械的な連投)に対しては減点・無効化される可能性がある、という読みでいます(あくまで推測)。
"継続的な創作活動の支援を目的"とあるので、更新頻度は普通の人間が出せる速度程度を上限にでもしてそうですね。
さてここで皆さんが気になるのは、どれくらい分配されそうなのかってところでしょうか。
なろう運営のお財布事情を考慮して読み解いてみましょう。
◆◆ ひなプロジェクトのお財布事情 ◆◆
ヒナプロジェクトは「小説家になろう」を運営している会社ですね。設立は2010年、いわば“同人精神が法人化した老舗ウェブ企業”。社員は2025年で40人ほど(常勤は36名)。若手や中堅が多く、平均年収は高めらしい。多分日本の平均年収より上。賞与が結構でるみたい。(転職サイトの口コミより)
普通のITベンチャーより安定していて、出版社より現実的。ホワイトっぽい。学生に戻れたら受けたいかも。
そんなヒナプロジェクトの主な収入源は「小説家になろう」や「みてみん」などのWebサービスの広告。あとは出版社等のコンテストや取次による収入。ただ運営のインタビュー記事とかで、収益としてはほとんどが広告収入だと言っています。なので出版社からの仲介料はあってもせいぜい収入の1割くらいじゃないかなと推測します。
支出としてはサーバー代や土地、建物、人件費などの経費。文字ベースなのでサーバー代も動画サービスとかSNSと比べて少なそう。
ちなみにヒナプロジェクトの売上高は大体10億円くらい。これの数値の根拠は昔の求人サイトに掲載されたものです(Twitterくんで"ヒナプロジェクト 売上"で検索するとでてくるやつ 最近は他者の求人サイト使ってないので情報ない)
売上高
2021年2月期実績 10億5803万円
2020年2月期実績 10億5379万円
2019年2月期実績 8億391万円
2018年2月期実績 7億1189万円
2018年から2020年にかけて上がってますね。小説家になろうのPVはだいたいコロナ禍の2020年から2022年くらいがピークでそこから、横ばいか減少傾向だと思われます。求人のページ(https://hinaproject.co.jp/recruit/recruit.html)には2025年の段階で月間20億PVを超えるって書いてるので大幅減少はないと思われます。
おおむねPVと売り上げの相関がみられます。収益構造について変わってないこと、PVは2021年くらいからそれほど変わってないと考えると現在の売上は10億前後でしょう。(ざっくり)
次に官報データベース(グーグルで"ヒナプロジェクト 純利益"で計算するとでてくるやつ)にあった純利益を見てみると、2021年2月期実績でざっくり1.5億円ほど。
ここからざっくり損益計算書(PL)を推定しましょう。
サーバー代の原価率は10%くらいとして1億円。テキストベースなので他より安めだと思う。
人件費はサービス業であれば40~60%が一般的なので4億円から6億円。40人いるので採用や社会保険料など含めて平均1000万とすると4億円くらいが妥当か?最近はインフレの影響で給与が上がってそうなので5億円くらいにしておきましょうか。
あとは一般管理費は15%くらいで1.5億円。あとは広告宣伝費。なろうラジオとか執筆応援フェアとかやってた気がするので適当に1億円にしておきます。
最後に税金。純利益 1.5億円なんで税金がざっくり25%くらいとすると税金5000万円くらいですかね。
まとめると。
ざっくり損益計算書(PL)
■広告売上 10億円
■コンテスト、取次など 0.5億円
■サーバー ▲1億円
■人件費 ▲5億円
■一般管理費 ▲1.5億円
■広告宣伝費等 ▲1億円
■税金 ▲0.5億円
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純利益 1.5億円
人件費が一番多いのではないかなって思います。まぁサービス業なんで妥当でしょう。
収入は広告収入がほとんどですね。
ちなみにですがなろうチアーズが始まると聞いて、最初は純利益からお金を分配するのかと思いました。でもよくよく、なろうチアーズプログラムの説明を読んでみるとこう書いてますね。
"プログラム用広告とは収益化を有効にした作品に新たに設置される広告です。プログラム用広告から得た収益は、なろうリワードの総量を増やすことやプログラムを安定的に提供する目的に使用されます。"
とあるので、チアーズの原資は広告を追加したものなのでなろうちゃんの収益構造には影響なさそうですね。まぁそりゃそうだ。
◆◆ チアーズの原資と“100PV=1円”の考え方 ◆◆
まずは広告単価の計算をします。
広告売上を10億円として月間平均PVが20億PVとしましょう。年間PVを仮に240億PV(20億PV×12カ月)と仮置きして1PVあたりの単価を算出します。
10億円/240億PV≒0.04円/1PV
※これは「全PVがすべて収益に直結する」雑な平均なので、実態は前後しますよ?ただ小説が稼ぎ頭なのでそれほど間違った数値ではないと思います。
ざっと計算すると1PVあたり0.04円です。逆数にすると25PVで1円ですね。これがベースになります。
次にチアーズ専用広告の量を見てみましょう。どうやら画面の下部に1つだけ追加されてますね。(この作の下の方に浮いてるのが専用広告です)
もともと広告は4枠~5枠あるので、総広告価値の20%~25%相当が“専用枠”の持ち分でしょう。
となるとこの広告で稼げる量としては元の広告の20%~25%ですね。よって
0.04円/1PV×25%≒0.01円/1PV
1PVあたり0.01円。ざっくり100PVで1円ってところですかね。
この100PV=1円は、運営取り分の平均単価を基準に、「専用枠1つ分」を切り出した簡易モデルです。
実際はデバイス比、広告の見え方、季節要因(CPMの上下)、無効トラフィック調整などで上下にブレます。
あとはシステム運営費として取られると思うので実際はもう少し低めかな(もしかするとそれは時間経過によるリワード没収分を充てるのかも)
現実的には長編更新ボーナスや短編減額処理とかありそうなんで、あくまでも目安ですね。
ただ結構しょっぱいですね。確かカクヨムが現在は1PV=0.05円(20PVで1円)あたりなのでなろうはそれの1/5くらいでしょう。使える広告の数が違うので妥当でしょう。カクヨムはすべての広告から収益が得られますのでPVあたりの収益は勝てないでしょう。
なろうは専用枠のみが原資なので、同PVでも体感が低く出るのは避けにくい。どうしても下位互換になりますね。
◆◆ いくらPV積めば振り込みに届くか? ◆◆
出金方法はAmazonギフトと銀行振込があってそれぞれ最低ラインが違います。
■Amazonギフト最少500リワード:目安5万PV
■銀行振込(3,000+手数料相当):目安31万PV前後
2018年にPVの分布を調べてみたのですが、中央値が500PVくらいで5万PV以上は作品のなかで上位5%くらい。30万PV行けるのは上位1%くらいじゃないですかね。
※小説家になろうを知ろう(https://ncode.syosetu.com/n3630fb/)から引用
PV分布が現在も変わらなければ、単品で収益化できる作品は上位5%くらいが対象かなと思います。複数作品書いてるひともいるので、最低ラインに乗るのは作者単位でみると多分上位10%くらいじゃないですかね。(適当)
あとちなみに短編で3万PVを超えるのはほとんどないです。ほぼ超えるのは連載か完結ですね。どうやら短編に稼がせる気はなさそうです。
※小説家になろうを知ろう(https://ncode.syosetu.com/n3630fb/)から引用
まぁ、どのみちほとんどの人は収益化ラインに達しない気がしますね。
◆◆ ざっくり原資総量の見立て(超控えめ) ◆◆
ざっくりどのくらいの金額が動きそうかも算出してみましょう。
売上10億円のうち、専用広告枠が担う比率は限定的でしょうね。全体の原資は売上の10億円の20%の2億円が最大値。広告専用枠を増やさない限りこれが限界値。実態はチアーズに登録する人のPVは全体の半分もないでしょう。PVの中には昔の作品やすでになろうを去っているひとの作品も多数いるので。
参加作品のPV偏在を踏まえると、年間の分配総額は数千万円~最大で1億円前後の帯に収まる可能性ですね。せいぜい5000万円くらいが妥当じゃないかなって思います。
確かカクヨムのPVインセンティブの原資が年間1億円くらいなので、それより少ない感じかな。どんなに頑張ってもカクヨムの劣化版になりそうです。
純利益の一部を原資に回すこともできますが、わざわざ回すかと考えると微妙ですね。
◆◆ なぜPVインセンティブなのか(雑感) ◆◆
そもそもなぜ、PVインセンティブにしたかったのかを考えてみます。
先ほども分析した通りなろうの収入は広告収入です。広告を追加したとしても微々たるもので、最初から広告すべてを原資にできるカクヨムやアルファポリスにはどうあがいても勝てそうもありません。
有料会員制度ではだめだったのでしょうかね。
広告除去とかサポーターなどのプランをカクヨムはしているので、それでもありかなと思います。
試算してみます。月額500円としてユーザー280万人の3%の8.4万人が課金するとしたら、月4200万で年間約5億円になります。
500円×8.4万人×12か月≒5億円/1年
まぁ広告除去だと収益も落ちそうですけど、対象ユーザーの割合的に微々たるものだと思います。稼げる額に対しては上回ると思います。5億円あったらそれの一部を原資にしてしまえばカクヨムとかより1PVあたりの還元率はよくなりそうですね。
べつに有料会員でもよかったような気がします。
ただ、小説家になろうの案内ページにはこうあります。
https://syosetu.com/site/about/
- 利用は全て無料
現在小説家になろうには有料サービスは存在しません。
小説を自由に掲載したり、掲載された小説を無料でお読みいただけます。
無料ということをかなり推しているので、小説家になろうは無料なことにこだわりがあるのかもしれません。有料にしたくないのかもしれません。(でも広告除去は絶対需要あると思うのですけどね)
あとはシステムの改修を最小限にしたかったのかもしれませんね。すべてに慎重な、なろうちゃんらしいっちゃらしいですけど。
多分、今回のやつが一番システムに影響が少ない施策だったのかもね。
◆◆ なんにせよ ◆◆
今回のなろうチアーズプログラムのメッセージを読み解くと
長編を書け、そして更新を続けろ。われらは定期更新される長編を優遇する。
と、言っているような気がします(偏見です)
現在なろうは恋愛短編優遇になっているので、それを覆したいのだろうと思います。カクヨムへ奪われた長編を取り戻したいという思いもあるのかもしれません。
とりあえず、なろう運営の収入はほぼ広告収入なので長編が盛り上がれば運営も儲かる施策。
まぁ結論としては、みんな長編書こうぜ!ってことですね。
(だが自分は短編で投稿するやつ)




