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新大陸伊達王国  作者: いばらき良好
第6章
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6の2 伊達王国建国

 二月二十八日。

 いよいよキューバ島制圧に動き出した。

 鹵獲したスペイン製ガレオン船を「覇王」と命名し、千石船の大きさの小型船も一〇隻ほど用意した。

 ここベラクルスでは良質の針葉樹が得られず、造船も小型化を余儀なくされた。仕方なく三角帆を試作して小回りが出来るように工夫した。

 これに伊達兵三〇〇と黒人部隊一〇〇〇が乗り込む。

 心配は、伊達家の兵が少ない事だ。

 兵装は、覇王が大砲一二門、小型船が大砲各三門で、計四二門である。

 紺碧の海を、これらの艦隊が一路進んだ。


 二日後の三十日、キューバ島首都のハバナ近くで、敵の大艦隊に出くわした。

 ざっと見ても大船が二〇隻近く。

 おそらく、ベラクルスから避難していた船に、キューバ島とイスパニョーラ島の船が合流し、反撃に転じたに違いない。

「敵だ。砲撃戦用意。陣太鼓、法螺貝を鳴らせ!」

 敵船は多い。成実は苦戦を覚悟した。だが、逃げる訳にはいかない。

「大砲、弾込めぇい」

 遊佐が号令する。狭い船内は、騒然となった。

 敵船との距離は一〇町(約1キロ)を切る。先に敵船団から大砲が放たれた。

 成実の乗る覇王の周りに水柱が幾つも立った。さすがは本場の海戦。数十発が同時に飛んで来た。

「反撃しろ。的は多いのだ。一つくらい当てろよ」

 舳先の成実が、後に叫ぶ。こちらからも発砲した。

「やった、命中!」

 砲手が声を上げた。敵船の水際に命中したようだ。

「喜ぶのは早い。次弾用意」

 遊佐は冷静だ。

 黒人部隊の小型船は、小回りを活かして距離を詰め、肉薄砲撃を開始した。

 黒人部隊のイスパニア人への憎しみは、激しい。その激しさが攻撃にも出ていた。

 体当たり覚悟で接近し、大砲を水際で撃つので命中弾が続出した。

「新式鉄砲、用意」

 敵船団内に突入したので、成実は船内に号令する。

 一斉に、成実の左右に新式の鉄砲隊が揃い、銃撃を開始した。

 敵船上は、弾丸の雨となった。


 しかし、不運にも敵の一弾が、成実の船に当たって大音を発てた。

 やばい、穴が開いたようだ。

「と、殿、船底に穴が。し、沈みまする!」

 さすがの遊佐も大慌てである。

「慌てるな。敵船を乗っ取る。舵取り、右の船に体当たりだ。思い切って行け!」

 成実の船は、急回頭して、近くの敵のガレオン船に体当たりした。

 船どうしがぶつかり、軋みを上げると共に、成実は船首から敵船上に飛び移った。

 宇佐美長光を抜いて叫ぶ。

「伊達藤五郎成実、参上。この船は俺が貰った!」

 覇王からの鉄砲に身を低くしていた生き残りのイスパニア人たちが、牙を剥いて斬りかかってきた。

 成実は、敵の針剣を払うと胴をぶった斬った。軽装の水兵は、もんどりうって舟板に倒れる。

 鉄砲隊も成実に続き、敵船に乗り移る。新式を一発撃つと床に投げ出して、やはり刀を抜く。続々と日本兵は乗り移って来た。

 成実は味方の援護もあり、船上の修羅場を平定した。


 残るは船内だ。

 成実は迷わず突入した。南蛮船の船長室は最後部と決まっている。

 向かってくる男を突き、蹴り飛ばしながら前進を続ける。

「殿、助太刀いたす」

 左手で刀を振って、遊佐が続いた。

「おう、無理はするなよ」

「鍛錬は十分。心配御無用」

 遊佐は、また片手で敵を斬り伏せた。

「撫で斬りじゃ。一人も生かすな」

 イスパニアの荒くれ者をバッサリと斬り下げる。


「これで、最後だ!」

 成実が気勢を上げて最後部の部屋のドアを蹴り破ると、怯えて尻餅をついたイスパニア人船長が、下から短筒を成実に向けていた。

 鉄砲だ、あぶない。

 咄嗟に、成実は太刀を正眼に身構えた。

 同時に敵船長は撃った。成実も撃たれたと思った。

 その鉛玉は、成実の構えた宇佐美長光に当って火花散り、真っ二つに切れて、両耳の脇を後方の天井へと飛んでいった。

 背筋が冷たくなった。父母の形見の太刀「宇佐美長光」が成実を護った。

「よくも、この……」

 成実は腹に力を溜め、この男ににじり寄る。そして脳天から叩き斬った。

「うりゃーあっ! ……ふぅーっ」

 深呼吸を一つ、大きく吸った。まさに生と死は紙一重である。


「殿!」

 銃声を聞いて遊佐が現われた。

「大事ない。伊達家の旗を上げよ」

「はっ」

 成実はそう命じて、汗に濡れた手の宇佐美長光をしみじみと眺めた。

 戦いは勝利した。

 黒人部隊の小型船は、敵にとって的が小さく、こちらの肉薄攻撃が急所の横腹、水際に命中して多くを沈めるに至った。

 成実ら三〇〇名も怪我人こそあったが、なんとか溺死をまぬがれた。


 成実は、キューバ島の残敵を掃討し、萱場源兵衛と一〇〇名に預けて、ベラクルスに帰国した。

 キューバは、平地の多い島であった。耕せば実りも多いだろう。

 その後、家族ら二〇〇名もキューバ島ハバナに送って、日本町を作らせた。

 黒人部隊の黒田勘太郎光良らは、約束の地、イスパニョーラ島を占拠し、黒人の王国を作った。

 古来、島に住んでいたインディオは、イスパニア人の強制労働と伝染病で死に絶え、アフリカからの黒人奴隷が国民の大半を占めていた。

 光良は、これら黒人奴隷を解放し、島内のイスパニア人兵士を全て討ち取った。

 これにより、ヨーロッパにあるイスパニア本国への送金は止まって、イスパニアの国力は弱まる。先の対イングランド戦で敗れたイスパニアの復権は、皆無となった。


「遊佐、三年ばかりお静と雷神丸の面倒を見てはくれないか?」

 平定を終えた成実は、日本の政宗を助けに行くつもりだった。

「殿、政宗公への救援でござろう。なりませぬ。もはや殿はこの大国の王。国王不在では示しがつきませぬ。こればかりはご自重下され」

 遊佐には、すべてお見通しらしい。

「だが、政宗公は秀吉によって窮地にあるかも知れぬ。せめて大砲だけでも送らねば」

「ならば、某が日本に行きまする。殿は国王。この大陸から出てはなりませぬ」

 遊佐がそう強く諌言した。

「では、遊佐に頼もうか……」

 まず各地のイスパニア人領主掃討に取り掛かった。

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