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新大陸伊達王国  作者: いばらき良好
第4章
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4の5 新大陸到達

 そして秋になった。

 野菜は茄子や胡瓜、大根、西洋人参も取れ、次の航海用に塩漬けや干し野菜を作った。

 麦は比較的に収量が良く、村の畑では、刈り入れと脱穀が行なわれた。

 心配の米であったが、実った。しかしながら雨が少なく、稲作には大規模な灌漑設備が必要だと解かった。

 この地の特産物は、何と言っても蟹である。魚籠に餌と重石を入れて海底に下ろすと面白いほど蟹が取れた。蒸したり焼いたりして食べると非常に美味い。

 漁師は、竹がなくて竹籠が出来ないので、柳の枝で籠を作った。

 成実は、工夫次第で何でも出来ると思った。日本人は器用で粘り強いのだ。

 いよいよ、米の収穫を待ってヌエバ・エスパーニャに攻め上る。

 ここからが戦いだ。武将の意地と、伊達家の繁栄を背負っているのだ。決して負けられない。


 十月、出航に向けて船の準備が進められていた時、突然、新たな船団が来航した。

 最初、敵ではないかと騒然となったが、原田左馬之助宗時の家臣一二〇〇名が、四隻の新造南蛮船に分乗して渡海して来たのだった。

 成実のように家族連れではなく、兵士のみである。

「左馬之助め。しては、謀ったな」

 成実たちが出航前に、原田は次ぎの手を打っていたに違いない。つまり、政宗に上申し、第二陣は原田家が乗り込むとしたのであろう。劣勢を挽回するには、兵力増強しかないのだ。

 まあ、味方は多いにこした事は無い。成実は現実をそのまま受け入れた。

 四隻の南蛮船は、「青龍」「白虎」「朱雀」「玄武」のマニラ・ガレオン船である。

 原田孫七郎のような海の巧み者なしに、よくたどり付けたものだ。

 さらに嬉しい事に、伊東マンショから、青銅製大砲二〇門が届けられた。ゴア、マカオ、那坐礼経由のポルトガル製大砲であった。早速、取り付け準備をさせる。

 伊東マンショからは「無駄な殺りくではなく生かす為に使って下さい」との手紙が添えられていた。慈悲深く好い漢である。成実はお天道様に誓った。


 原田家の兵士は、先に渡航した左馬之助ら家族三〇〇人の村に入った。

「美味い物を食べて英気を養ったら、戦さに出るぞ」

 成実は出航日を順延し、士気の高まりを待った。

 ここで、成実らは日本と周辺諸国の情勢を知らされた。

 まず、昨年十二月に改元があり、今年は文禄二年であること。

 秀吉の唐入りは、朝鮮民衆の一揆で悩まされ、一進一退の様子。

「遊佐、こっちも早く片付けねばなるまい」

 政宗公の天下に寄与出来ねば、我等は死に軍である。

「よし、出航の用意だ。この地は家老の志賀父子に預ける。歩を止めてはならん」

 成実は、出航の準備を急いだ。

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