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新大陸伊達王国  作者: いばらき良好
第4章
23/33

4の3 新大陸到達

「よし、ケジメは済んだ。次ぎは日本町を創るぞ。目安は半島北端から南一里(4キロ)まで。我が居城は海辺の丘(テレグラフヒル、標高94メートル)にする。周囲に井戸を掘り、乗って来た船を単位にして村を作れ」

 成実の号令で、各船から人馬の上陸が始まった。

 海辺の丘から西のロシアンヒル、南西のノブヒルにかけて、水脈を探して幾つも井戸を掘った。水の出た井戸を中心にして村を作る。

 乗って来た船は七隻なので村も七村。その内の一村は、離れた湖畔の村だ。

 各船長は、戦さの要地を陣取った。

 兎にも角にも住居を建てる木材を現地調達する。

 遠征に竹を持ってこなかったのは失敗だった。この付近に竹は全く存在しなかった。

 だが、奥州では寒さの残る季節ではあったが、王論の村人が日中褌一つで過ごせるこの地の暖かい気候だけは有り難かった。


 数日して、南一里半の村から建設中の日本町に、武器を持った王論の男たちが詰め寄せた。

 おそらく、湖畔の村の全滅を聞いて、敵味方を質しに来たに違いない。

 先にもてなされた成実としても、あの赤羽の村長との信義が懸かっている。

 取り巻きを離れて使者は、細身だが筋骨隆々で鉢巻に鷹の羽を差した二十代半ばの漢。

 日本で言うところの武士であろう。

 対応には成実と遊佐が出た。

 使者は棍棒を地面に刺し立て、褌一丁で口上を述べた。

 おそらく「湖畔の村を襲ったのはいかに。敵か味方か?」というところだろう。

 この漢はいい眼をしている。

「おい、焼き飯と酒、肴を持て」

 小姓に静かに命じた。言葉が通じないとはもどかしい。

「俺たちは敵ではない。王論の方々とは好を通じたい。この国と争っていては、肝心のイスパニアと勝負できぬのだ。それより、俺たちに味方して天下を共に治めぬか。天下と言ってもこの国の仕組みは知らぬが。なあ、遊佐。どうする?」

「さて、徳にて治めるが王にて。殿に任せます」

「そう言うな。知恵を出せ、知恵を」

 成実も困っている。実際、潰すのは訳無いが、戦いの無間地獄に落ちては堪らん。

「奥方さまに、お茶を点ててもらえば、なんとか」

「遊佐も、お静が頼りか。女子は人を生み、国を生む。よし、では頼むか」

 遊佐が、お静を呼びに行った。


 漢は、立ったまま不動の姿勢だ。

 すぐに陣中に、畳と朱の日傘が運ばれる。成実と漢は、距離を置いたまま対峙している。

 小姓が火鉢と湯釜を揃え、琴も運び入れた。

 やっと遊佐が、お静を連れて戻った。

「これはこれは、お使者殿、伊達成実が妻の静です。では、湯が沸くまで、拙い手習いをお聞き下さい」

「頼む」

 成実がこくりと頭を下げ、床机に据わった。

「それでは」

 お静が琴を弾いた。やわらかく丁寧な調べは、ここが異国であることを忘れさせるほど懐かしく、成実の心に響いた。

 最中に、出来立ての焼きお握りと酒の膳が運ばれてきた。

 成実は無言で手招きして、食えと身振り手振りで促す。

 その間も、お静の琴は、ゆるやかに、のびやかに調べを紡いでいた。

 成実も自分でお握りを頬張る。漢も成実を視たまま、一口食べた。

 そして成実も漢も黙って食べ続けた。成実が、王論の村で出された菓子を食べたのと同じ状況であった。

 酒も飲む。漢は少しむせた。

 ここでお静の琴が終わると、漢は自分の咳が失礼だったかと詫びたようだ。

「いえいえ、いいのですのよ。丁度、お湯が沸きましたの。今度はお茶で喉を潤して下さい」

 お静は微笑みながらそう言って、茶を見事な手つきで二つ入れた。

 客人の漢と成実に振る舞われた。

「作法などよい。飲んでくれ」

 成実は、ゴクゴクと飲み干した。漢も真似て飲む。ほろ苦い味だった。

「なあ、お静。今風の着物か手拭いなどあるか? 土産にな」

「はい。すぐに、ご用意いたします」

 お静が侍女に目配せした。

「ああそれと、炊き立ての飯をお櫃に入れて持たせてやれ」

「はい」

 にっこり微笑んだ。ほんとに愛らしい。

「さて、使者殿。これでも敵というのか?」

 成実が投げ掛けると漢は何事か答え、にっと微笑んだ。敵ではないと言ったものと期待したい。

 そして土産を持ち、使者たちは去って行った。

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