4の2 新大陸到達
翌二十日早朝、南西三里の村に使者を送る。使者は家老の息子、志賀弥平隆正だ。
その村は大きな湖(マーセド湖付近)に面していた。
「使者として上手く懐柔せよ。王論族に敵意がないこと、くれぐれも注意するように」
そう言って成実は、志賀を送り出した。
だが、この村とは大きな戦いとなった。報告では、命令も無しに、一人の鉄砲が王論人を撃ち殺したことに端を発する。
指揮する志賀は仕方なく、新式鉄砲五〇挺で槍を投げる男どもと戦った。女子供は逃がしてやったそうだ。それはそれでよい。
これで湖に面した村は壊滅した。
命令に逆らって最初に発砲した男は、新式鉄砲を持ったまま、どこかに逃げ失せた。
志賀は、懐柔に失敗した事を詫びた。
「籠絡出来ずに、申し訳ありません」
「おそらくは、屋代景頼の放った刺客であろう。狙いは俺の命だ。すぐに志賀はその村に移って混乱に備えよ。金剛の三〇〇名を預ける」
「ははっ」
「湖畔の村は、稲作には適地であろう。大切にせよ」
戦さに不測の事故は付きもの。その時々にどう対処するかで、大将の真価が問われるのだ。
「山狩りだ。全軍で刺客を退治する。敵の新式鉄砲に注意せよ」
成実は、陣頭指揮を執った。半島を北から南へと踏み分けた。半島の西側は砂地が多いことを知った。
そこに突然の銃弾が、成実をかすめた。
「刺客がいたぞ。いざ、かかれやーっ」
新式鉄砲が、一斉に火を噴いた。雷鳴のように音を響かせて、逃げる刺客に集中した。
まもなく、瀕死の刺客が捕らえられた。
やはり屋代の手の者であった。
総大将として顔に泥を塗られた成実は、男をノコギリ引きの極刑にさせた。胴体を真っ二つに裂かれた刺客は、ついに絶命した。




