3の3 いざ太平洋横断へ
出港してふた月と十日、正月十日の夕刻ついに陸地が見えた。
「おい、陸地だ!」
「やっと着いたーぁ」
「うおおっ、なっ、長かったなーぁ」
船内は、歓喜の声と涙で大騒ぎになった。
周囲の各船からも法螺貝や陣太鼓が、盛大に鳴らされた。
成実は遊佐と甲板に出て、陸地を眺めた。
「遊佐よ、いよいよだ」
「殿、これで終わりではありません。これからが正念場」
「ああ、新しい国を作るのじゃ」
成実と遊佐は引き締まった顔と眼で語った。
「者ども、勝ち鬨を上げよ」
成実は、振り返って右拳を挙げた。
「エイ、エイ、オー!」
子供たちも元気よく腕を挙げた。
その光景に成実は「俺たちには未来がある」と思った。
この遠征を成功させねばならない。
イスパニアを破り、新国家を作る。
久しぶりに碇を降ろして停泊させ、夜中に六分儀で測量させた。北極星の位置から北緯四十度付近と解かった。
翌朝、成実は船団に南下を指図した。
陸地に沿って進む。小川や小さな港では、船団が入港できない。一刻も早く上陸したいのを我慢し、大湾を探した。
夜は碇を降ろし、見晴らしのよい昼間に航行させる。
そして十二日、想定外の大湾(サンフランシスコ湾)が現われた。
その湾口に入ると、奥は非常に広くて、およそ松島から牡鹿半島くらいの目測であろうか。気仙沼港など足元にも及ばない広さであった。
周囲を航行して成実は決めた。
「よし。明朝ここに上陸し、最初の国とする。大声者、各船に命令を伝えよ」
傍らの遊佐が目を輝かせて成実を仰いだ。




