表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新大陸伊達王国  作者: いばらき良好
第2章
13/33

2の4 伊達海軍を創る

 成実は攻めの方法を考える。

「政宗公、ここは考え方を切り替えてみぬか? たとえば南蛮船と大砲だ。海ならば、奥州から直接、大坂に乗り込んで行って大砲を撃ち込める。世界最強のイスパニア王も海の道を広げて金銀富を蓄えたらしい。今日から伊達家も四海へと進出し、後に秀吉やイスパニア王と勝負しようではないか」

「ふむ」

 政宗は思考に入った。政宗は、奇策と現実を折り合いつける名人だ。

「よし、その線で成実に海を任せよう。小十郎は米穀増産と軍資金の調達方法などに知恵を貸してくれ」

「承知。海の果てまで伊達家の旗を立てようぞ」

「承って候」

 海を任された成実は、原田孫七郎を軍師に迎えようと、次室で手紙をしたためる。その頃には、朝日が黄金色の光で成実の手元を明るくしていた。


 急使が走った翌日には、米沢城の広間に伊達家の武将が勢揃いした。

 諸将には、伊達家転封の為の評定であると伝えている。同時に、関白秀吉に石高を減らされたという噂も、米沢の城下には流れていた。

 広間には、不安な心持ちの諸将が揃う。

 一座には恨みの屋代景頼もいたが、成実は伊達家尊属(親類)として一番前に陣取って胸を張った。

「まさかこの中に、盗人などは居るまいな?」

 腐った毒男、屋代に聞こえるように皮肉を言ってやった。成実の一言に雑談も静まる。

 そこに小姓が告げた。

「政宗公のお成りでござる」

 全員が頭を下げる。

「大儀!」

 政宗が太刀持ちを従えて入って来て、上座上段に座った。

「小十郎」

「はっ」

 すぐに小十郎が一礼し、評定の進行役をする。

「この度、関白殿下のご命令により、伊達家は転封になり申す。領地は旧大崎、葛西などの五八万石。総石高が減りますので、諸将の皆様方も減封をご了承くだされ」

 諸将が固唾をのむ。

「よいか、ワシはこのままでは終わらない。将来お前達を国持の大名にしてやる。今はこの逆境に耐え、兵を鍛錬して、その日を待っていてくれ」

 政宗は、書き上げた諸将の封入地を小十郎に読み上げさせた。


「政宗公より新しい家格と新領地を下賜されます。また、所領一万石以下の城は、新しく要害と称する事とします。では、

御当主、伊達政宗公、本拠地を桃生郡の石巻城に定める。

一門、伊達成実殿、気仙郡・本吉郡の二万八〇六三石、気仙沼城。

   留守政景殿、江刺郡の二万六六二七石、岩谷堂城。

   石川昭光殿、胆沢郡内、六〇〇〇石、金ヶ崎要害。

   亘理重宗殿、磐井郡内、一万石、一関城。

国老、片倉景綱、宮城郡内、一万八〇〇〇石、仙台城(千代城改名)。

   白石宗実殿、柴田郡内、一万五〇〇〇石、船岡城。

   鬼庭綱元殿、玉造郡内、一万三〇〇〇石、古川城。

   屋代景頼殿、宇多郡内九村、五一二〇石、谷地小屋要害。

   鈴木元信殿、栗原郡内、一五〇〇石、築館要害。

宿老、原田宗時殿、登米郡内、四二〇〇石、佐沼要害。

   湯目景康殿、胆沢郡内、三八〇〇石、水沢要害。

   後藤信康殿、胆沢郡内、二六〇〇石、前沢要害。

   遠藤宗信殿、遠田郡内、二四〇〇石、涌谷要害。

   富塚宗綱殿、黒川郡内、二〇〇〇石、吉岡要害。

評定衆、泉田重時殿、亘理郡内、八〇〇〇石、亘理要害。

   桑折政長殿、伊具郡内、五〇〇〇石、角田要害。

   小成田重長殿、伊具郡内、三〇〇〇石、金山要害。

   四保宗義殿、柴田郡内、二〇〇〇石、村田要害。

   中島宗求殿、柴田郡内、二〇〇〇石、川崎要害。

 相伴衆として、隠居した将を政宗公の相談役とします。梁川鉄斎殿、村田万好斎殿、亘理元安斎殿、泉田安芸殿、桑折点了斎不曲殿、小梁川泥蟠斎殿。

 名を呼ばれなかった諸将には、伊達家から蔵米を支給いたす。身分を御家人とし、館を設け、馬廻りや城の警備、各地の代官を命じる。以上」


 一同は静かだった。

 成実は一万石もの減封には違いないが、気仙と本吉の二郡を賜った。東の三陸海岸だ。

 諸将に先駆けて、原田左馬之助宗時が礼を言った。

「有り難き幸せにござりまする」

 成実らも揃って答礼した。

「有り難き幸せにござりまする」

 原田家は、伊達家初代から仕える譜代第一の世臣で、累代の宿老家である。

 伯父の養子に入った左馬之助は、成実より三つ上の二十七歳で、十八から軍事に携わり、幾多の戦陣で功を挙げた猛将である。

「所領については、ワシの朱印状を遣わす。受け取ったら帰城し、転居の準備をせよ。米、麦、大豆はもちろん、鍛治屋などの職人も手放さず、すべて新領へ持っていくべし。あとは小十郎と談合せよ」

 政宗は、それだけ言って席を立った。

(よし、いよいよ海だ)

 成実は、新しい目標に向かって張り切った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ