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新大陸伊達王国  作者: いばらき良好
第2章
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2の2 伊達海軍を創る

 成実はお静の仲介で、元安斎の隠居した庵へと向かった。

「元安斎殿、奪われた二本松城を取り戻す為に、兵をお貸し下され」

 開口一番、成実は頭を下げた。

「面を上げられよ、成実殿。ワシの兵でよければ存分に使ってくれ」

「かたじけない」

 即断した坊主頭の元安斎は、六十二歳にして、武人の威厳を保っていた。

「ワシはな、伊達家に天下を取らせる為に、隠居した今でも二〇〇の手勢を率いて、最後のご奉公の機会を窺っていた。成実殿、お主はこの様な所でつまずいているような漢ではないぞ。政宗公と共に大軍を率いて中原に立たねばならんのだ。ワシの意思を継ぎ、いつか伊達家に天下を取らせてくれ。それが条件だ」

「はっ、天地神明に誓って必ず」

 即刻、二〇〇の兵が参集して戦さの準備にかかった。

 お静は女衆たちと飯を焚き、出立前にお握りを振る舞ってくれた。心がこもった塩結びは美味い。成実も腹に力が入った。

 見送る元安斎も、鉄砲から火薬、米、味噌まで持たせてくれた。

「いざ、出陣!」

 成実は号令を発し、二本松城へと向かった。


 進路、続々と成実の帰国を聞いた家臣たちが集まり、軍勢は大きく膨らんでいく。

 家老の羽田右馬之助実景、常盤新九郎勝定、志賀左近之助隆義の重臣三名も、北の大崎葛西一揆の戦地から舞い戻って、これに加わった。成実名代として出陣し、その隙に二本松城を乗っ取られた事をしきりに詫びた。

 天険にある二本松城の奪還戦は被害が大きい。その為、家老らは成実の指図を待っていたとの事。

 成実はすべてを許し、七月七日に二本松城を包囲した。

 亘理出発時には、僅か二二〇名だった兵が、たった五日で一二〇〇強にもなった。

 旧来の成実率いる軍の結束力が復活し、各種の報告が入るようになった。

「去る七月三日に大崎葛西の一揆は鎮定されましてござる。そこでも屋代景頼は一揆の物頭たちを和睦と偽って須江山に呼び出して騙し討ちしました」

「ご苦労。非道は何処に行っても非道だな。復讐はいずれ果たす。まずは二本松城だ」

 成実は、城の五つの門すべてを固めさせた。一兵も逃さない。

 東の竹田門、南の池ノ入門と久保丁門、西の松坂門、北の搦手門に兵を二〇〇ずつ配置し、遊軍として成実率いる亘理勢二〇〇が城の東に布陣する。

 屋代の軍勢は出払っていて梅村らは少数らしい。

「敵は、すべて撫で斬り(皆殺し)にせよ。一兵も逃さず斬って、斬って、斬りまくれ!」

 成実は軍配を振るった。


 陣太鼓が鳴り、各地に攻撃開始を知らせる。

 弓鉄砲など城内からの反撃は散発的である為、身軽な者が次々と梯子を掛けて城内に入り、城門のかんぬきを外す。

 各地で斬り合いが発生したが、梅村の私兵よりも、怒りに燃える成実軍の気迫の方が高かった。

 城門を突破すると、主力は二ノ丸の箕輪門に殺到する。箕輪門は櫓門であり、鉄筋で補強した城で最も頑丈な門である。

 ここで梅村らは、最後の要衝である箕輪門の守りを堅くし、屋代からの援軍を待つ様子だろう。見抜いた成実は、南蛮船から降ろした大砲を使用することにした。

 カピタン原田の指揮により、狙いを定めて発射した。

 砲弾は、派手な破壊音を響かせて城門を貫いた。鉄筋などは折れ曲がって、只の飾りに見える。

 成実もその破壊力に注目した。これからの戦さは大砲で変わる。攻撃と防御の仕方について工夫する必要があるだろう。

 そのまま二発目、三発目が命中し、城門は崩れた。

 頃合いと見た成実は、全兵に乗り入れを命じた。

「行け、行け、大将首を取れ!」

 洪水のように鎧武者が攻め入り、四半刻(30分)も経ずに、勝鬨が上がった。

 エイ、エイ、オー!

 勝ったのだ。梅村の首を取ったに違いない。

「成実殿、勝ったぞ」

 原田が勝利に喜ぶ。

「ああ、卑怯な奴ほど最後はあっけないものだな」

 その後の首実検で、成実は梅村の面を散々に踏み付ける蛮行に及んだ。

「この梅村は盗人である。よって武将としては扱わん」

 そう宣言し、塩漬けにして屋代に送り付けた。

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