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いったい私は、いつまで、この世界に留まるのだろぅ…

「だから…ごめんなさい…」


 そう言いながら離れていく彼女に手を伸ばした。


 僕の手は彼女の肩を貫通したが前を向いている彼女は当たり前のように気付かなかった。「待ってよ!」「そんなことない!」「僕らなら君を!」そんな言葉が頭をよぎる。


「………」


 だが、声を発することができなかった。


 彼女は間違っていなかった。


 僕ら人間は生き物は、伝染していく生物だった。


 それは死んでからも、変わらない。


 嬉しさは伝染し喜びに変える。


 そして悲しみも伝染し悲しみに変える。


 喜びは慣れと共にすぐに消えてしまうのに、怒りや悲しみはなかなか消えて無くならない。


 透明な水の中に墨汁が一滴入っただけでその水は透明じゃなくなってしまう。


「ごめんなさい…」


 僕らは死んでも、見切りをつけて過ごしていかないといけないんだ…。


                ○


「…」


 彼は手を伸ばしてくれた。


 一瞬彼の手が背後から勢いよく現れたが、その後力なく手を握りその手は静かに下がっていった。


 やっぱり…私の言っていた事は間違いじゃないんだなと思い、皆に深く頭を下げて去りたくなったが、それも何か気を使わせてしまう気がして、振り向くこともできずにあの病院から飛びながら私は去っていった。


「…」


 そぅ、私、今、飛んでいるのだ。飛んでいる。


 あの場でゆっくりドアまで歩いて去っていくの嫌だな…と思って、上を見てジャンプするように飛んでみたらそのまま飛んでいた。その後はふらふらするのを見られるの恥ずかしいなと思い、お腹の下の辺りに力を入れるようにして、スッと重心を前にしたらそのまま安定して飛ぶことができた。


「…」


 飛びながら少しテンションが上がったが、無限に続いている道路を見下ろしていたら路頭に迷った気分になって、そのままどうすることもできない気持ちになった。


 公園に行こうかな?と思ったけど幽霊はダメなのかな?とか、それに…私今黒に近いんでしょ?悪霊じゃん…もし公園にいる人やさっきみたいな人たちに迷惑を掛けたら嫌だな…と思ったら、その場から動けなくなった。


 自分の部屋に帰りたいと思ったが、悲しんでいる親の顔や、色んな所に連絡を入れたりと、私のせいで迷惑をかけてしまっている所を見たくないなと思い、やはり家から離れていった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 幽霊になったら時間はあっという間なのかな?とか、時間の感覚が変わったりするのかな?とか思ったが、時間は生きている時と同じように長く感じられた。今ここで途方に暮れてぼーっとした時間は恐らく5分と経っていない…。


 なんなんだろぅ…いつ消えるんだろぅ…成仏するんだろぅ…どうやったら成仏するんだろぅ…いったい私は、いつまで、この世界に留まるのだろぅ…成仏するときは悲しいのだろぅか…死ぬ時よりもつらいのだろぅか…なんで私は残されたのだろぅ…なんなんだろぅ…なんなんだろぅ…私はどうなってしまうんだろぅ…

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