僕らが彼女を見たとき、彼女は黒かった
僕らが彼女を見たとき、彼女は黒かった。
このままではいけないと思ったが、どう言葉をかけていいのかわからなかった。(だいじょうぶ?)(たいへんだったね?)(つらくない?)頭に浮かんだそんな言葉は意味がなくて、(大丈夫じゃないし)(大変だし)(辛い)そんな事は誰もがわかっていた。
だから、どんな言葉も空虚な音もしくは、鋭利な物になり彼女を更に傷付けてしまうかもしれない。だから、僕たちは歩きながら、彼女の言葉を待つしかなかった。
「わ、私…ぁ、足音もしなぃ、足跡もつかなぃ…影もなぃし、どこにも何も映らない…」
その言葉を聞いた時心が痛んだ。あぁ、これダメだ、多分…自分も引っ張られてしまうかもしれない…と思ったら柳田さんが「あなたには何もなくなった」と自分の色を変えることなく端的に現状を伝えた。
彼女はどちらに行ってしまうんだろぅ…
このまま僕らと話せば普通の彼女に戻るんだろうか…
それとも、このまま真っ黒になり、自分の居心地が良い場所へと去ってしまうのか…
わからなぃ…でも、引き止めたい…でも、ここまで黒くなってしまうと、僕らも引きずられかねない…
「…」
僕らは少し距離を取りながら彼女と接した。
屋上に着くと
「説明はどこまでしたの?」とあまり色が変わることがない程ポジティブな茜さんが彼女と話してくれた。
後ろで話すのを見ていると柳田さんは「もっと優しく接するべきだったよなぁ」と彼女を見ながら悔やんでいた。
「いやでも、あれで正解だと思いますよ。実際少し色も薄くなってたし」
「いやでもさ、事故で死んだ直後に止まりもせず歩きながら言うことではないよなあ…しかも少し厳しめに…」
「いつもの長年病気して…とかの人だと、簡単なんですけどね」
「そうなんだよねぇ、死後の世界にようこそ!的な感じで話が進められるんだけど、死を覚悟せずに、死んだ後の人は…」
「難しいですよね…実際そのままその事故の現場で自分の死を認識しないままとか、その場所で他の事故を誘発して待ってたりとか、そういう黒い人間ばかりがいる場所で人を恨み続けたり、自分を恨み続けたり…」
「彼女はでも、病院に来れてよかった。今も茜さんのおかげで色もどんどん良くなって、きてる…」
「そうですね…あ」
「茜さん…珍しく灰色になっちゃったねぇ」
柳田さんは彼女を僕に託し、茜さんと話し合った。
僕は黒色から黒寄りの灰色になった彼女を見る。
彼女は綺麗な人だった。
髪は黒髪で一本一本サラサラのストレートで肩まであり、160センチないくらいの身長で目が大きく鼻もシュッとしてて、まだきちんと笑った顔を見てないけれど口も横に広くて、美人な方だなと思った。さっきまでは少し気を使いすぎて顔もうまく見れなかった。
「ぁ…」
でも…ちゃんと見なければよかった。死んでいるけど少し照れて緊張している自分がわかった。
「こうやって僕らは話し合うんです」
ええい!いったれ!という気持ちで言った。
たぶん彼女は大丈夫だ。彼女はマイナスに支配されない。どうにか僕らで彼女を救いたい。




