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目を開ける事をあきらめた

           ●


 私は緑色の鎌になった手を見ている。


「…」


 不安不安不安、性欲性欲性欲、不安不安不安


 少しの時間何も食べていなかった。そうすると満腹の時より反射速度が遅くなる気がした。そうすると食べることができなくなってすぐに死んでしまう気がした。死が頭をよぎると性欲がちらついた。子孫を作らず死ぬのはよくないことだ。


 よくないことだ、よくないことだ。よく、ない、ことだ。


「…」


 だから食べなければ。


              ○


 不幸が何かわかった気がしたら、少し経って幸せが何かわかった気がした。


 私は幸せから遠い所にいると思っていたけど、今はそんな事ないんじゃないかと思えてきた。


 そう思うと同時にお母さんとお父さんに心から感謝した。


              ●


 私は茶色の鎌になった手を見ている。


「…」


 寒い寒い寒い寒い寒い寒い、不安不安不安不安、性欲性欲、死…


 寒いと思い始めてから食べる物がとても少なくなった。子孫を残さなければと歩き回ったが同じ種族の仲間をめっきり見なくなった。


 何も食べないと体の動きが鈍くなり頭はボーっとした。待っていても獲物がいないと不安ばかりが頭をよぎった。


               ●


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 日に日に色んな事をあきらめた。


 獲物を待つ事、食べる事、仲間を探す事、子孫を残す事、自分の縄張りを持つ事、強く見せる事、弱さを見せない事。


「…」


 そして今、歩く事をあきらめた。


 すると登っていた木からそのまま落ちた。


 背中から落ちたから起き上がろうとあがく。


 あがく、あがく…あがく……


 あがく事をあきらめた。


「…」


 灰色の空が霞んで見え、視界がぼやけた。


 目を開ける事をあきらめた。


 そうしてこの生物は…生きる事を、あきらめた。


              ○


 時々、単調な一日に嫌気がさした。


 それと同時に、誰も傷付けてはいけないと身構えた。


 家から出る事ができない自分を攻撃対象にして攻撃した。


 すると心の雨雲は大きくなった。


 心の雨雲は私に言う。


「じゃああの時死んでればよかったじゃない」


 そうするとまた、眠りたくなった。

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