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孤独でなくなると、時間の経過が少しずつだけど速くなり始めた

            ●

 ん?


 んんん?


 なんだここは?


 なんだこれは!?


 手…いや…腕…いや!手と腕が!緑色の鎌…いや…ノコギリ、いや!ノコギリのギザギザを含んだ鎌みたいになっている!


 かっこよくてうっとり…


「…」


 草、草、草…


 天に伸びる大きい大きい草、草、草を新鮮な気持ちで見上げる…


 ん?


 無意識に歩き出す。


 草を登りだす。


 ん?んん?んぅ…ぅぅ…


 草は登るとしっかり揺れて(同じような体重なのだから登らないでくださいよ!)と私を落とそうとする。


「…」んぉ!


 なんだこの私の完璧な重心は…


 私は今まで感じたことがない程のお腹下の重心で、どんなに揺れても手で重心を支えたり、片足立ちになって(うわわ…)となることもなく、首をすくえ、足は草にがっちりしがみついたまま、目だけを動かし何かを探す。


 動じず、動じず、動じず…


 何か、何か、何か…何か、何か何か、何か何か何か、何か無いか何か、無いか無いか何か…無いか…


 草を下りる。


 地面に降りる。


 歩く、歩く、歩く。


 考えて歩く。考えて歩く。考えて歩いているが、実は何も考えてない。


 歩く、歩く、歩く。考えている顔をして無作為に歩く。


「!」


 目の前に草色をした足の長いのがビョン!と飛んできた。


 相手はこちらに気付いていない。


「!」


 反射的な速さで相手に詰め寄る。


 一瞬で相手の背後に立ち自分の武器である腕を振り下ろす。


「!」


 相手を理想的な角度で捕らえることができた。


 両腕で相手を締め上げる。


「…」


 相手が腕の中で激しく暴れる。


 足を無作為に何度も何度も蹴り上げる。


「…」


 頭に噛り付くとそのまま嚙み切ることができた。


「…」


 相手の動きが止まる。


                   ●

 目を覚ます。


 真っ青な空をボーっと眺める。


 ボーっとしながら屋根から降りる。


「…」


 あの子の部屋にはあの子はいない。


 そのまま部屋を出て階段を降りる。


「ぁ」


 珍しい、父親だ。


 リビングで3人で何やら映画を見ている。


 あの子と母親はソファに座り、父親は椅子に座りテーブルに頬杖をつきながらテレビを斜めの角度で見ている。


 映画の中では恐竜が出てきて大きな悲鳴と共に無作為に人を襲っている映像が流れている。


「ははは…」


 父親が笑う。


「ぇ?」


「なんで?」


 2人がテーブルを見る。


「ぇ、ぃや、あまりにあっさり死んだから…」


 父親が戸惑う。


「え?」


「なんでよ?」


 二人が眉間に皺を寄せながら見つめる。


「ま、まぁ、ほら!続き、続いてるよ!観なって!」


 父親がテレビを指さす。


「…」


「…」


 あの子と母親は首をかしげながら二人で顔を見合わせて笑う。


            ○


 幸せが何かわからないけど、不幸せが何かわかった気がした。


 孤独でなくなると、時間の経過が少しずつだけど速くなり始めた。


 横を共に歩いてくれる人達がいる事にとても救われた。


「…」


 それでもどうしてか付きまとう黒い雨雲のような感情を、大きくならないように見ないふりをし、触らないように心掛けた。

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