ぅれしぃ…
●
ん?
んなだ?
なにがなにやら?
私は何やら見覚えのない景色の中をプカプカと浮かんでいる。
周りが緑で包まれている…。
その緑は草木があって緑でとかでなく…なんていうのかな…薄緑の中に浮かんでいるというかなんというか…とにかく私は不快でない薄緑の中を浮かんでいる。
自分の目に手のような物があり、それを目で追うと腕のような物があった。
(!)なんんだ?
きちんと見た私の手には指が一本もなく手も手の形状をしていない。線のように細い腕が先に行くにつれてさらに細くなり、その先端が手なのだ。
驚くが驚かなかった。それがどういうことなのかというとよくわからなかった。よくわからないなと思っていると私は触れられてもいないのに勢いよく足元をすくわれた。そしてとんでもなく宙を転がった。無重力の中無限に転がっていると目の前が真っ暗になった。
なんだ?まぁ…痛くなくてよかった…とどうしてか思った。
●
私は目を覚ます。
屋根から降りてあの子の部屋に降りる。
「…」
あの子は部屋にいなかった。
新鮮な光景に驚く。
トイレかお風呂か…かな?
「…」
少しの期待を込めてそのまま1階に降りる。
○
母と食べるご飯はとても美味しかった。
母と食べながら見るテレビがとても面白かった。
サブスクってこんなに映画があるんだと思った。
ドラマもアニメもこんなに見れるんだと思った。
「どれ観たい?」
という言葉に少し心がときめいたのを感じた。
「ありすぎて…あと私が知らな過ぎて…なんだろう…何がいいのかな?」
永遠と出てくるタイトルに戸惑いながら下ボタンを押す。
「なにか、ママのおすすめとかない?それが観たい」
久しぶりにママと言った。少し恥ずかしかったからテレビを見ながら言った。ママは5秒ほど黙った後に「うんわかった!リモコン貸して!」と私から優しくリモコンを取った。
「どれにしようかな~」
とささやく声がとても弾んでいて(ぁ、うれしいんだ…)と感づいてしまった。ママは私がママと言うだけで嬉しいんだ。
「…」
私にそんな力があることに驚いた。
「ぅれしぃ…」
「ん?」
「ぁ、ぃゃ…楽しみ、楽しみ」
「うん!でも、千尋がつまらないと感じたらどうしよう…」
「え?大丈夫だよ」
「つ、つまらないと思ったら途中で言ってね。ぜったい…」
「大丈夫大丈夫」
そう言うと一瞬で映画が始まって驚いた。
私は久しぶりの普通のすべてに驚いていた。
心からの安心と久しぶりの前進に体温を感じないはずなのに何か温かくなった。
「…」
そしたらまた何か眠くなった。




