ただ見ていた…
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あの子が助かって本当によかったね
そういう声に目を背けてしまいたくなるほど、私は疲れていた。
「皆さん本当にありがとうございました」
そんな言葉を言いたくもないのに口にした。
精一杯に引きつった笑顔で口にした。
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あの時たまたま風が吹いた。
その風がたまたまあの子の部屋に入っていって、たまたまシャーペンを転がした。
そのシャーペンがたまたま机の上を転がり落ちて、たまたまあの子の手に触れた。
私たち全員がそれを
ただ見ていた…。
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生きているのが辛い。
死んでいるのが辛い。
生き続けることは苦しいことばかりだ。
死に続けることは苦しいことばかりだ。
死にたい。
生きたい。
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バカバカしい…
「ぃゃ…」
そんなとげのある言葉ではなぃ…
もう少し丸い言葉。
「虚しい…」
近くはないけど遠くはない…。
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私はあれからよく眠るようになった。
あの日、死んでいるのに本当に疲れたと思った。
あの子が抱き締められて、母親と父親と久しぶりに話す姿を見つめていたら安心からかとても眠くなった。
そして部屋に戻り、昨日の疲れで眠りにつく彼女を見ながら私も眠りについた




