もう苦しくなくなった
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今まで感じたことがない程の意味不明な苦しみの中、私の視界のあちらこちらが白くなる。
フワッ
「!」
急に目の端でカーテンが風でなびいた。
なびいたカーテンは机の上で何かに当たり、机の上でコロコロと転がっている。
「…」
目に映るものが全て真っ白になり、さっきまで聞こえていた自分の気色悪い嗚咽の声も体の中から出てくる今まで聞いた事のない真っ赤な危険サインの音すらも聞こえなくなっていった。だけどどうしてか、コロコロと転がっている音だけは聞こえていた。
コロコロコロコロカラカラカラカラ
コッ…
そうしてそれは私の手に優しく触れた。
「…」
もう苦しくなくなった。
ぁぁ、死んで天使でも迎えに来てくれたのかな?と思った。
コロコロカラカラ転がってきて今手に触れたのかな?と思った。
え?天使ってそんな感じなの?小さくて転がってくるの?そんなお迎えの仕方なの?どういうこと?おかしくない?
めんどくさいけど、何が触れたか、何が来たのか、どんな景色が待っているのか、目を開けて見てみたいと思った。
「ぐぅぅぅぅぅぅ!」
目が開けられない、顔が破裂しそうな程パンパンなのがわかった。毛穴から血が噴き出してしまうほど血が上っているのもわかった。それと同時に苦しさが蘇ってきた。首を引きちぎられているのかと思うほどの痛みを覚え大きく首を横に振った。そしたらただ垂れているだけだった手に少し力が入った。
体重を支えるため全ての神経を手に掛ける。だが強張った指を伸ばすことすらもできなかった。
今私は生と死の狭間にいる。
一瞬でも手の力を抜けば死ぬのだとわかった。
一瞬死んだ体を元に戻すのは並大抵のことではない。
少しずつ少しずつ血液が首の下を流れていくのがわかった。
それと同時に体が震えがほんの少しずつ弱まっていく。
「ぅぅぅぅぅ…」
微量な空気が口から入って来る。
その瞬間むせておびただしい咳が出てくる。
息をしてしてないのに咳をしてお腹や肋骨背中にまで激しい痛みを覚えた。
だが手にはまだ力が入らない。
手は懸命に私を生かし続けてくれている。
「ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ…」
微量ながら空気を吸い込む。
目から大量の涙が出ていたことに気付く。
目はまだ開けられない。
全身から少しずつ本当に少しずつ血液が循環しているのが感覚的にわかる。
体も息もまだ震えている。
首にある紐を何よりも怖く感じる。
一刻も速く外してしまいたいがタイミングを間違えると死へと直結してしまうとわかっているからより一層恐怖を感じる。
震える、泣く、それ以外できない自分を無力に思う。
「!」
手に力が入る。
首に括りつけられている輪っかを取ろうとする。
「!」
右手が紐をつかんだ瞬間重心が右に傾く。
それと同時に首が閉まる。
「ぁ、ぁ、ぁ、ぁぁ、ぁぁ」
急いで右手を元の位置に戻し、また力が入るまで待つ。
泣く、震える、泣く、泣く。
声も出ない、鼻もすすれない。
まるで自分の体なのに自分の体ではない。
私は今全ての贅沢を手放してしまった報いを受けている。
生きたいです!生かしてください!お願いします!どうか私を!




