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悪霊…人にたたりする霊魂

「これが発散されないと、無くならないと、ね、灰色はいつしか黒くなって…それでも長くそのままでいると、私達は悪霊になってしまうの」


「ぇ」


悪霊…人にたたりする霊魂


「ぁ、悪霊…」


「そう、悪霊。文字通り悪い霊」


「わ、悪い霊…」


「悪い霊…まぁ、聞いてもよくわからないでしょう。まぁ、なんていうんだろう…なんていうんだろうなぁ…」


 そう少しぎこちなく笑う彼女の後ろから、さっきのおじさんがひょいと間に入った。


「ちょっと話の間に入ってごめんね。今だと…そうだね、茜さんが今こうなってるから、そうだねわかりやすいね。灰色になった者は、どうやったら治せるか、という事を教えるよ」


「はぃ…」


 私は追いついていない頭を瞬きの多さで表現するしかできなかった。


 治す方法は、話をする


 おじさんはお姉さんと話をした。


 私は3メートルほど離れたところで「まあちょっと見てて」と座らされ、それを見ている。


 話をしたといっても、面談のように堅苦しいものや、対面で向かい合わせでもなく儀式的な感じもなく、横に並んで空を見上げて


「幽霊って空しいよね~」


「空しいねぇ」


「これは存在と呼ぶのかね?」


「呼ばないねぇ」


「だったらこの時間は何なんだろう?」


「わからないよね。意味わからない」


 お姉さんの話をおじさんは聞いている。


「ぇ」


 お姉さんの話を聞いているおじさんの周りの色が、少し灰色になっているのがわかった。おじさんも先ほどのお姉さん同様、体の周りに透明な雨雲(こんなんじゃ雨降らんだろうってくらいの雨雲)のようなものが漂い、それがゆっくりおじさんの体を一周して、その薄い灰色のオーラは胸の中に入っていき、おじさんも彼女と同じ色になった。


「こうやって僕らは話し合うんです」


 彼らを見ている私に、一緒に案内してくれた先ほどお兄さんが私の隣に座り教えてくれた。


「傷付いた僕たちを治す薬はもうないんです。薬は生きている者だけの物。儀式的なことをしても変にプラス思考になろうと自分を変えてみても、治らない。僕達幽霊は話し合うことで、そしてそれを否定せずに共感や励ましあうことで、僕らは落ち着いていく」


「おじさんも灰色になっているのは…」


「灰色は伝染するんです…」


「うつるんですか?」


「はいうつります。自分の感情を人に話すと…共感すると?かな?え~う~ん、そうだなぁ…わかりやすく説明するとですね。

 悲しくて泣いている相手を見たら自分も泣きそうになった。

 ツボに入って笑いが止まらなくなっている人を見ていたら自分も笑っていた。

 映画館で映画を見ていたら誰かが咳払いをした。その後すぐに他の誰かが咳払いをして、どうしてか自分もさっきまで何もなかったのに喉に違和感を感じた」


「はは、たしかに、あるある、ありますね」


「それと同じ原理だと思います。そして同じになると心が落ち着きます。そして…」


 そう言って彼はおじさんとお姉さんの周りで話を聞いている人達を指さした。


「幽霊ってねえ、やよねえ!」


「疲れないけど疲れるんだよう」


「いやそれ意味わかんないよ!まあわかるんだけどね」


 そう言いながら周りの人たちが会話に参加した。彼らからも同様に灰色のオーラが漂い彼らは灰色になった。でもその灰色は濃いものではなく、ほんとに、ほんとに透明に近いもので、彼女の色と違うと思い彼女を見ると、彼女とおじさんの灰色もまたとても薄くなっていた。


「そうやって僕らは元に戻っていくんです」


「話し合いながら…」


「自分の今の感情を見せて、それらを話してすっきりして、薄くして…」


「へぇ」


「それで、あなたの悩みは何ですか?」


 そう言いながら彼は私の目を見た。


「あなたの灰色は少し黒に近いんです」


「え?」

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