自分の言葉の無責任さは言ってから気が付いた
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夜の空の色よりも黒い煙のようなもの、その中へ入っていく。
ここの中の仕組みをもう理解しているので、そのまま駆け込む。
目の前の木々たちが車の中から見る木々のようにビュンビュンと通り過ぎていく。
一人ではどうすることもできないから、私は仲間に助けを求めようとしている。
それが正解なのか、わからない。
それであの子が助かるのか、わからない。
わからないわからないわからない。
でも、一人でいても…
わからない…。
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「皆さんごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
5人の前に突然現れた私は、涙が出ていないしわくちゃな顔で、状況を説明した。
大工 「ぁ、ぁぁ…そぅか…それは…」
5人は状況を理解したが、上を向かなかった。
細美さん 「と、とにかく行かなきゃ!」
メガネ 「ぇ、ぅん、そぅだね、でも…」
丸美さん 「そこはどこなの?」
ラグビー 「ちょっと、他の人たちにも声掛けしてきてもいいかな?」
私 「あ、はい、もちろん」
メガネ 「そうだね、そうだよ、僕たちだけではどうすることも出来ない気がする…。先に行ってて、その間に皆にどうにかできないか聞いてみる。申し訳ないけど誰かひとり戻ってきてもらっていいかな?」
丸美さん 「あ、じゃあ私戻る」
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「………」
私たちは彼女の家に戻った。
私がここを出てからあの山へ行って帰ってくるまで、恐らく3分も経っていない。幽霊が本気を出せば移動なんてこんなもんなのだ…。
「…」
彼女は輪っかがあるひもを持って、ベッドに座っている。
私たちは3人は息をのむ。
「どうにかできませんか?」「この子すごくいい子なんです!」「お願いだから助けてください!」という言葉が頭の中を駆け回るが、それらを飲み込み下を向く。
なんとかできたら
いまわたしたちは
したをみてたちつくしていないはず
「私にどうすることもできないことは、皆もどうすることもできない…」
「ぇ」
「ぃや、何言ってんだ。誰かがどうにかできるかもしれないじゃねえか」
「そ、そうよ!私戻って来る!」
「あの二人が今人集めてるから!どうにかできる人がいるかもしれないでしょ!」
「ぁ、ぇぇ、そぅですね…」
そうだ、私たちは死んだんだ。死んでいるんだ。だからどうすることもできはしない…。
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私たちは集まった。
集まった。
その数は百を超えていた。
「…」
その中の一人も、彼女が持っているひもすらも床に落とすことができなかった。
「留まってくれる可能性もあるわ」
誰かが言った。それはどうすることもできないからこそ出た言葉だった。そしてその言葉に皆は歩み寄ろうとしていた。
「留まらなかったらどうするんですか?」誰か助けてくれるんですか?
思っていたよりも大きな声が自分から出て驚いた。自分の言葉の無責任さは言ってから気が付いた。
大工「よし皆!出来る限りでいい!誰か知り合いを呼んで来てくれ!そしてその知り合いは俺らみたいな黒い奴じゃなくて、出来る限り透明な奴にしてくれ!はっきり言って俺らが黒いせいで止められていない可能性もある!あと最初に知り合いと言ったが、知り合いじゃなくてもいい!手あたり次第声を掛けて人を集めてくれ!もし透明な人たちを集めることができたら、俺らは小田さんを置いて一旦山に戻ろう。黒い人間はいない方がいいかもしれない!」
その言葉を聞いて皆は目を見合わせ小刻みに頷き、一斉にいなくなった。
「すみません!ありがとうございます!」
そう言って私も飛び出した。
私が死んだ病院へと向かう為に。




