ぁぁ…私終わったなと結構前に思ったけど、終わったけど死なないという事を学んだ
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14時に寝て、19時に起きた。
ぁぁ…また死ねなかったと思った。
寝たまま死ねればどんなにいいか。
また寝ようと思ったが、腰が痛すぎて肩が痛すぎて、これ以上眠ることができなかった。
だから携帯を眺めた。
自分の城を強くしてその城をゾンビから守るアプリを開いて義務的に報酬を受け取った。義務的にキャラクターのレベルを上げて、義務的に警備のレベルを上げた。砲台のレベルアップ完了まで20時間という数字を見て次の画面に進んだ。すると小さな人間たちがヘルメットをかぶって工事を始めた。
アプリを閉じた。
数秒の間トップ画面を見つめる。
他のアプリを開いてログインボーナス貰おうかと思ったけど、そういえば12時に起きたときに貰ってたなと思って親指を止めた。
また寝ようかなと目をつぶる。
数秒後に何も考えずに目を開ける。
そのままいつもの動画サイトをタッチする。
適当に目についたもの、ほんの少し気になるタイトルの動画を見る。
途中で飽きて他の動画を探す。
「………」
これを繰り返す。
ぁぁ…私終わったなと結構前に思ったけど、終わったけど死なないという事を学んだ。終わりながら生きていかなければいけないんだと学んだ。
食べて、消化して、出して、寝て、起きて…
今日も私は生きてしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ずっと尿意に襲われていたが立ち上がりたくなくて我慢していた。けどもう行かなきゃなと起き上がる。
ドアを静かに開ける。
すると茶色のお盆の上に置かれた青い茶碗に盛られた白いご飯、そして白い小皿の上には焼かれた豚肉、その横にきゃべつが盛られ、それらはサランラップで覆われている。キャベツ用のドレッシングと2リットルのペットボトルのお茶もあり、お茶にはわざわざ、空になったら出しておいてとマジックで書かれている。
大きく息を吸って吐く。
眉間に皺が寄る。
階段下の明かりの漏れを確認し親がいることを確認する。
そのまま極力足音を立てないようにトイレへ向かう。
静かにドアを開け静かに閉める。
便器に座りうなだれる。
なんて情けないんだと気持ちが落ちる。
なんなんだコイツと胃が痛くなり少し気持ち悪くなる。
お前が作れよ。
何毎日作ってもらってんだよ。
お前は赤子か!何もしないで寝てるだけ!ご飯を作ってもらえる権利がお前にあるのか?赤ちゃんは!作れないから作ってもらってるんだよ!お前は、お前は一体何なんだ!醜く生きてるお前は何なんだ!もうあれから一年喋ってない!お互い顔を合わせないように気を使って生活してる…謝って、生かしてもらってることに感謝の気持ちを伝えるべきなのに、早々にタイミングを逃し、引き伸ばし、今の現状のようにどうすることもできなくなってしまった…
「私は…」
学校から逃げて、親から逃げて、普通から逃げた。
結果、私はできる限りの時間を寝て過ごすようになった。
「…」
洗面台に行き服を脱いで洗濯機に入れる。
「…」
そのままシャワーからお湯を出して髪を洗う。
あんなに無重力に立っていた髪の毛がまとまって下に落ちる。
「…」
毎日前髪が目を隠すほど長くなっていることにシャワーの時に気が付く。
今日切ろうかなと思うが、また明日でいいやと、今日も明日へと先延ばしにしてしまう。
「…」
そんな自分をも情けないなと思ってしまう。
「…」
鏡で自分を見るたびに、覇気のない自分の顔に腹が立つ。
この一年自分ですら暗くなったと気が付くほどである。
「…」
湯気で顔が見えなくなってホッとする。
それすらも悲しく感じるのだからもう無理だよと思ってしまう。




