突発的に皆と別れた
●
なにもない真っ黒な世界。
なんとなくわかる。
おそらくここは夢の中。
この何もない世界に、私を殺したあなたが正座で座っている。
両手の拳を強く握りしめて日々を耐え忍んでいる。
私はそれに眉をひそめた
「ね、ねぇ…」
彼に話しかける。立っていると偉そうに思えたから正面で私も正座になる。
「せっかく…せっかく生きているんだから、楽んだら?楽しんで残りの人生を送ったら?そっちの方がいいよ。つまらないのよりいいよ」
言ってみたけれど、自分の言葉の語彙力のなさに頬が引きつった。
「いいえ」
彼が答える。
「僕は笑ってはいけません。楽しんではいけません。僕は苦しまなければいけません。不幸でなければいけません」
そう言い終えて、彼がほんの少し顔を上げて申し訳なさそうに私を見る。
「あなたを殺してしまったから…」
その顔に、その眉に、その真っ黒になってしまった瞳に罪悪感を覚えた。
「生きているって
楽しいよ。
楽しいはずだよ。
物も掴めるし
美味しいって思えたり
楽しいって思えたり
泣いてみたり
笑ってみたり…
………」
「………」
「ほら生きてるって楽しいでしょ?」
●
よくわからない夢を見て、何も解決することなく夢から覚めた。
「楽しいってなんだ?」
唐突にそんな疑問が浮かび上がり、尖がり、私に突き刺さった。
この疑問は生きてる時にも感じていた。
「楽しいってなんだろう?」
「楽しいってなんだ?」
●
私「皆さん、ぇぇ、ぁぁ、ごめんなさい。あの、あのですね、彼もですね、あの、反省してるようなので、あの、許すことにしました。なんか、あの、いつまでも怒っていても、それは途方もない旅になるだけで、独りよがりの旅になるだけで、あの、意味がないのかなと、いう事に、なりましてぇ…」
皆さん「………」
私「ちょっとあの、私も、ここらで空気をと、いうか、なんというか、な、何かを変えた方がいいのかな?と、ぇぇ、思いまして、少し、少しばかり、ど、どこかに旅にでも行こうかな?なんて、思っておりまして…」
皆さん「寂しくなるわ、またね(要約すると)」
私「ごめんなさい、ほんと」
●
突発的に皆と別れた。
別に別れたかったわけじゃない。
でもなにか、なんとなくだけど一人になりたいと思った。
私は彼を助けることはできないんだ…
そう思うとやるせなくなり、そのやるせなさは静かな苛立ちに直結した。
出来るのにしないという贅沢を、本当に何もかも出来なくなった今の私は、それを羨望の眼差しで見つめる事しかできなった。
そんな自分に吐き気がした。
なんだコイツと思って蹴り飛ばしたくなった。
不幸に酔った自分はもういいよ。
何もできない
わかったよ
特に何かをしたいわけじゃないんだから
そこに自分が留まることはおかしい
「……」
じゃあ…
どうすればいいんだろぅ?




