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何も考えずに生きてる方が楽なように、何も考えずに死んでた方が楽なんだよ皆

     ○


「…」


 あれから数週間が経った。


 草木が茂る森の中、ひざまで伸びている草を気にすることもなく、4本の木の間で一定の距離を保ちながら私を含め今日も6人で何かを話している。


「へぇ!そうなんですね!」


 私はそう言っているがその情報はたぶん、数分後には忘れてしまっている。そんなどうでもいい話ができることに何とも言えない安堵感を抱き、そしてなぜか、焦燥感に駆られた。


 欲しかった情報は最初の頃に全て聞いてしまった。


              ①


大工   「死んだ人間がどれくらいの確率で私達みたいに幽霊になるのか?」


ラグビー 「あぁ…それね…」


細美さん 「はっきり言ってよくわからないのよ…」


丸美さん 「100人いたら1人、とかいう感じでもなくてね、10人死んだら5人残ったっていうのもあれば、100人死んで1人も残らなかった、っていう例もあるし」


メガネ  「10人死んだら100人死んだらっていうのはね、その場で大きな事故でとかの話じゃなくて、病院とかで確率的な感じでカウントしていって的なやつでね…うん、まあ、僕ら過去の幽霊はさ、暇だから、そういう悪趣味な研究をしてたんだよ…」


丸美さん 「人間ってそうじゃない、何か答えを出そうとするでしょ」


ラグビー 「その癖がね抜けないんだよ」


メガネ  「その悪趣味は長らくいろんな所で取られてたんだよ。大きな事故で大人数が亡くなられたときとかのカウントデータというか伝承が数えられない程あるんだけど…やっぱりどうにも、めちゃくちゃというか、原理とか理屈とか確率とかそういう物に当てはまらなくてね…なんかもう…」


大工   「まあ!そうなってな!もう皆考えるのも面倒になってな!」


メガネ  「やってもやっても、可能性が外れると、もう面倒になって、数千年単位のことなのに解き明かされてないんだよ」


ラグビー 「何も考えずに生きてる方が楽なように、何も考えずに死んでた方が楽なんだよ皆」


私    「へぇ…はは…そぅなんですねぇ…」(へぇ…残される人ってかなり少ないのね…)


              ②


細美さん 「じゃあ、どういう人が幽霊になるの?って?」


丸美さん 「それもねぇ…うーん…」


ラグビー 「よくわかってないんだよ…」


大工   「こいつは幽霊になるんじゃねえか!っていうような(生きていたくてしょうがねえけど死んだ)みたいな奴でもそのまま…俺らみたいにならずに消えていなくなったりするんだよ」


メガネ  「ぁ、消えていなくなるっていうのは、そのままの意味だよ。死んで、そのまま…終わる…ぁ、終わるってあれだよ、霊魂なんてなくそのまま召されるっていう…」


細美さん 「逆にこの世が嫌で自殺したのに残されちゃう人もいて」


丸美さん 「これもさっきと一緒でね…本当によくわからないのよ…残された人の中にはもちろん、明るい人もいるし暗い人もいる、この世に未練がある人もいれば全くない人もいる、思い残したことがある人もいれば全くない人もいる」


細美さん 「この世に残らなかった人たちもそう、子供がいるのに若くして死んじゃった親とかでも、あんなに子供を気にかけてたのにそのまま召される人もいるし、突然の事故で死んじゃった人も、あなたのように残る人もいれば残らない人もいる」


大工   「まあ!もう!めんどくさいってことだ!」


メガネ  「特に意味なんてないんだよ、さっきの件と同様」


ラグビー 「僕たち私たちは、残されちゃったって事だけは確か。それ以外はもう考えなくていいんだよ」

               ③


ラグビー 「どれくらい…何年くらい残るのか?ねえ…」


細美さん 「よくわからないわよそれも」


大工   「よくわからねえことばっかだなぁ」


メガネ  「だってしょうがないだろ、よくわからないことばっかなんだから…」


丸美さん 「噂話だけど鎌倉時代とかの人とかも普通に残ってたりするらしいわよ」


細美さん 「しかもあれよね、武士とか落ち武者とかだった人は、身なり・髪型が今と違うからって、普通に髪形や服装変えて今も普通に自分の正体?というかなんというかを言わずにまぎれてる?っていう言い方もおかしいけど、まぎれてるらしいわよ」


メガネ  「人も幽霊も時代とともに適応していく…」


大工   「ただめんどくさいだけだろう!武士だったんですか?どの戦に行かれた方なんですか?関ヶ原の戦いって知ってます?ってよ!」


               ④


私    「っていうか、髪型とか服装変えられるんですか?」


丸美さん 「え、うん、変えられるよ」


私    「え!どうやって!」


丸美さん 「え…そういえばわからない…」


細美さん 「ぇ…見られましても、私も知らないわよ…」


ラグビー 「まあ、さっきのは噂話だから…」


私    「ぁ…ですよね」(全部わからないじゃない!)


               ⑤


大工   「知らん!」


メガネ  「速いよ!どうすれば召されるか…だね…ぅん、ごめん知らない」


ラグビー 「なんかごめんねさっきから」


細美さん 「知ってたらここにいないわよねえ?」


丸美さん 「本当にそれ」


ラグビー 「でも皆、召された人というか、召されそうになっている人は見たことあるよね?」


細美さん 「あれよね、光っている人」


ラグビー 「そうそう、皆浄化されるって言って周りにたくさんの人(幽霊)や動物(幽霊)が集まってるんだよね。何も感じることができない僕らが温かいとなぜか感じるって」


大工   「まあ!俺らは来るんじゃねえって追い出されるけどなあ!」


メガネ  「この人が召されなくなるってね…」


細美さん 「そんなことないのにね」


丸美さん 「光ってる人たちはずっと仏様みたいに座りながら眠ってて、なんか見てて(ぁぁ、この人はもうこの世との繋がりがないんだろうな)って感じたわ…」


細美さん 「あ、それわかる。何かに悩むこともないだろうし、何かすべてがどうでもいいというかなんというか…」


ラグビー 「よくわからないけど、わかるよ」


私    「…」(それわかってないと思う)


           ⑥


大工   「だから知らん!わからん!」


メガネ  「だから速いって!でもわからないよ、召されたらどこに逝くかなんて」


細美さん 「天国」


丸美さん 「地獄」


ラグビー 「大地獄」


メガネ  「それか無…何も無いか」


私    「ごめんなさい…」(あぁ…皆のテンションが一様に…)

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