表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/44

怒ってもどうにもならない…ということに気付いたのは多分死んでからだ

                     ●

 この、怒りとはなんだろう…


 死んでも、喜びなどは減るくせに、怒りは生きていた時のようになくなることがない。


 怒りとは何だろう?怒りとは?


 一度怒ると心の中でファイティングポーズをとる。そうなると何日もいつでもどこでもすぐにファイティングポーズがとれるようになる。人の怒りに敏感になり理不尽に敏感になり、人の怒りに簡単に便乗できるようになる。


 怒りや理不尽が自分に向いていなくても、心の中の私はシュッシュとただの空気を殴りだす。


 テレビつまらない、ネットもつまらない、なんで24時間かけて100キロ人気者が走るの?それに対して終盤で皆で歌を歌って何になるの?何がしたいの?いつまで大谷の話題で持ちきりなの?他の海外にいる日本の選手はどうだったの?なんで一人の事しか取り上げないの?なんで人は自然と共存してるみたいな事人が言ってるの?そんなコマーシャルどうなの?政治に対してニュースでとやかく言うけど、それって反映されたことあるの?だったら言う意味あるの?というよりもニュースで政治的な話を否定してない時ってないんじゃないの?何でもかんでも批判してるんじゃないの?こう言っておけば視聴者が食いつくとでも思ってんじゃないの?有名人の不倫なんてどうでもいいよ。芸能人の謝罪会見でなんで皆怒ってるの?というよりもスポンサーとかにはだけど、私達は関係ないよね。いつまでネットニュースで取り上げてんの?いつまで炎上してるの?


 怒りはどういうことか縦横無尽に飛び回り、私とは関係のないことになぜか嚙みついていく。噛みついてもスッとすることもなく、噛めば何か味が出ることもなく、噛んだら次はもっと強く噛むことになる。


 怒ってもどうにもならない…ということに気付いたのは多分死んでからだ。


 でも、怒ってしまう。落胆して傷付いてしまう。寂しさを虚しさを自分のせいだと怒ってしまう。これらには意味がないとわかっていながら、私達はこの感情をどうすることもできずに、時間を過ごしている。


 死んでも傷を負いながら


                ○


 (怒うやるの!)が(怒うして!)に変化し腕を組みドスンと座っている。そこにはもう私が座るほどのスペースは残っておらず、(怒うして!)の目の入らぬところで沈黙に耐え兼ね挙手をし発言する。

「え~あのう、ご、ごめんなさい」


「どうして!」


 (怒うして!)はこちらを見ずに少し上を見ながら大きな声を出した。


「え?え~、な、何がですか?」


「どうしてあんなこと言ったの!」


「あぁ…はぃ…そぅれ、はぁ」


「言っていい事と悪いことがある!全て言ってはいけない事を口にした!どうして!」


「つ、つい、カッとなってしまって」


「怒ったら何してもいいの?怒ったら(死ね!)って言ってもいいの?傷付けてもいいの?」


「いや!でもね!」


「どうして?どうして言い訳できるの!」


「向こうが傷付けてきたから!私も、ね、ほら、なん、なんて言うんだろう?負けないように、さぁ」


「あなたが傷付けたからでしょ!あなたが勉強をしてなかったからこうなったんでしょ!ノートを見せてって普通の事でしょ!あなたがすべて悪いじゃない」


 (怒うして!)は私を見ようとしない。


「あ、ぅん…ぇぇ……ぐぅ…」


 私はぐうの音しか出せず、下を向く。そこには(ごめんなさい)と書かれたボタンがあり、それを足で踏む。


 カチ!という音と共に「ごめんなさい」と私の声で放送される。


「うるさい!どうして!どうしてそんな気軽にそんなこと言えるの?何に対しての?きちんとわかって言ってるの?」


「ぁぁ」


 もう、これは、ダメだね…


 私はそのまま眠りに就いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ