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No More Goodbyes  作者: ちくわ犬
***本編***
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初デートだったらしいです。

「とんとんランド」の柱の影で某園キャラクター(ブタの)とんとんの着ぐるみを着こんで一部始終を伺っている人物がいます。

もちろん、主人のことが心配な爺さん…ミノスです。


(坊ちゃま、いけません…あああ。)


エルラードの見事なほどのエスコートの無さを目の当たりにしてさすがにミノスもアリスに同情してしまいます。


(お誘いした女性にお金を払わせるばかりか荷物も持たずにただ黙って歩いているなんて…。)


ここまで酷いといつアリスが怒って帰ってしまってもおかしくありません。


(なんてお優しいのだ…。)


いえいえ、酷すぎて言い出す機会すらないのです。それにアリスはお人好しですからね。ミノスの休日のためと思えば「子守」でもしようと思っているだけですよ。


さてさて昼食を食べれそうな広場を見つけてアリスがシートを広げます。


「そっち、持ってくれる?」


19歳だと聞いたので伯爵様だろうが口調を変える気も起こらないアリスでした。彼女にとっては弟みたいなものです。相応の男に見られたいのであれば出直してきたほうがいいでしょう。


対するエルラ-ドもアリスの態度に別段これといって文句も無いようです。黙々と言われたことは素直にするようでシートの端を持っています。彼は「伯爵」という自覚が足りないのかもしれませんが。


「…おいしい。」


エルラードはサンドイッチがお気に入りのようです。お弁当の注文もほとんどがサンドイッチです。ちなみに今日はスモークチキンとオニオン。クリームチーズとサーモンマリネのサンドです。パクパクと食べ終わるとアリスに紅茶を入れてもらい、食後のアップルパイを食べました。


「ご馳走様でした。」


「どういたしまして。」


そういうとエルラードはゴロンと横になって寝てしまいました。こらこら、食べてすぐ寝ると牛になりますよ。いっそのこと牛になって売られておしまいなさい、おバカさん。


(うそ、寝ちゃったよ…。)


アリスが様子を伺うともう寝息を立てています。ここまで自分勝手だと気持ち良いですね。アリスさんもびっくりです。


(はあ。お昼食べにここまで来たの?)


サンドイッチ食べて寝るだけならお城で十分ですものね。起こして帰るわけにもいかないと思ったのか、アリスは文庫本を出して読むことにしたようです。先ほどからミノスの姿が見えませんが…ああ、あちらで子供に捕まっているようです。とんとん、意外に人気ですね。



昼寝にはいってしまったエルラードが起きたのは午後4時30分です。閉園のアナウンスが流れ出したのに気づいたアリスが慌ててエルラードを起こしました。


「記念に何か買いましょう。」


何を思ったのかエルラードがそんなこと言い出しました。お金も払う気無いのにね。


「……。」


アリスは黙って「とんとん」のヌイグルミを買ってあげました。エルラードが選んだのは特産物のウインナーを肩にかけているシュールな「とんとん」です。


(ああ、私だったら絶対に買わない。)


ところがニコニコしたエルラードが今手渡してもらったシュールな「とんとん」をアリスに差し出します。


「僕たちの初デートの記念に。」


「 ……。」


(どうせなら食べ物がよかった。消えてなくなるし…。)


本日何度目かの深いため息をつき大人なアリスは遠い目をして受け取りました。

帰り道、いくつかのゴミ箱を尻目ににアリスが「とんとん」を捨てなかったのは自分のお金で買わされたからに違いないでしょう。


そんなアリスの想いとは裏腹に


(プロポーズの返事をもらい忘れた。)


エルラードはそんなことを考えていました。



「とんとん」は子豚のキャラクター。

食いしん坊で甘えん坊。


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