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No More Goodbyes  作者: ちくわ犬
***本編***
6/34

それは子守です。

次の日

ミノスに渡された豪華なバラの花束とメッセージカードをみてアリスは眉間にしわを寄せています。

エルラードはメッセージカードだけミノスに持たせたのですが、それだけではあんまりだと思ったミノスが花束を用意したようです。


メッセージにはこう書かれていました。


「お店の休日にとんとんランド前で11時に待ってます。」


(…なんだこれ?)


気の効いたことひとつしたことのないエルラードのことです。単刀直入、シンプルイズベストに書いたメッセージですが、付き合いの長い恋人でもなければこれではただの怪文書です。


「その、よろしければ…いや、一度で結構ですのでエルラード様とデートしていただけないでしょうか?」


ためらいがちに言ったミノスの言葉でようやくそれがデートの誘いのようであるとアリスは認識してくれたようです。「とんとんランド」とは町外れにあるちょっとした動物園と遊園地が合体したような施設。…中高生のデートスポットもしくは家族連れが訪れるので有名です。24になるアリスには、ちょっとアイタなお誘いなのですが。


(断りたいなあ。正直無理だろう!?この歳でとんとんランドは…。)


アリスが断ろうとミノスに向き合ったとき後ろからものすごい勢いでドンと押されました。


「店は任せなさい!是非是非デートしといで!!ミノスさん、私が責任もって行かせますから!」


キラキラした目でいる伯母に背中を押されてふらついています、アリスさん。


(伯母さんったら!!)


勝手にOKしてしまうのだから堪りません。しかし、ごり押しの伯母に気負けしてしまって結局行くことにしたアリスさんでした。



****



エルラードは時間どうりに約束の場所にやってきました。


「…。で、ここはどうやって入るんですか?」


そんなこと無表情で言われてもアリスだって困ってしまいます。ほとんど城から出ないエルラードは「とんとんランド」に入る術を知らないのです。アリスは呆れながらも2人分のチケットを買って渡してあげます。もちろんエルラードはお金を払う気なんてまわりません。いつも外ではミノスが何もかもしてくれるのですから。


(この間金貨貰ってるから…いっか。)


ため息をつきながら一刻も早く帰りたいアリスが思います。いやいや、デートに誘っておいて自分の分まで女の子に払わすなんてエルラード君、最低です。


とんとんランドに入るとはじめに見えてくるのは小さな子供が喜びそうな乗り物です。終始無言で無表情のエルラードと黙々と歩くアリスは先程からこれは何かの罰ゲームではないのかと思えるくらいでした。


(これ、デートなのかな。何かの調査?無駄に綺麗な分目立って相当イヤなんだけど。)


今日も今日とてエルラード君の服装はきまっています。遊園地デートと言うのもあってブロックチェックのシャツにフード付きジャケットと合わせて黒の別珍のパンツ。こんな田舎の町では到底手に入らないようなブランドの装いで且つカジュアル…。ミノスの腕が良いのでしょう。流行雑誌から出てきたような美男子に仕上がっています。対するアリスは長Tにジーンズ。スタッズベルトはスモーキーピンクで可愛いけれど至って普通です。「とんとんランド」ですしね。


「あの、何か乗る?」


会話に困ってアリスがエルラードに言います。目の前にはコーヒーカップにメリーゴーランド。


「僕、回るものは酔ってしまうので。」


「はあ。」


仕方がないので奥に見える観覧車を指差します。


「じゃあ、あれは?」


「僕、高い所も苦手なので。」


「はあ。」


それではとお化け屋敷を指差します。


「僕は暗いのも駄目です。」


「……。」


「アリスさんは遊園地が好きなんですね?」


気を使って言っていたアリスはもう隣に居るのが宇宙人に見えたでしょう。「遊園地がすきなんですね?」よく言えたものです。がっくり肩を落としながらアリスは小さな動物園に向かうことにしました。


「お腹減りました。」


突然となりで歩いている人が声を出しました。いえ、アリスの隣はエルラードですが、他人みたいに歩いているものですから。


「ど、どこかでお昼にしましょうか?」


そこでようやくエルラードが微笑みました。が、しかし自分が率先して何かする素振りはありません。


(そ、そうか!今日はミノスさんのお休みの日なんだ!)


不意に納得のいく結論をアリスが出してしまいました。まあ、これがデートだという方が無理が有るのでアリスが勘違いしても仕方ありません。


(子供のお守りだ。そう、なんだ。)


一度だけと懇願したミノスの顔を思い出しながらアリスの心は軽くなりました。


(さっさとご飯食べさせて帰ろっと。)


もちろんエルラードが持ってくれるはずもなかったサンドイッチの入ったバスケットを抱えてアリスはシートを広げられる場所を探しました。



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