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No More Goodbyes  作者: ちくわ犬
***本編***
5/34

デートに誘うそうです

カラン カラン


一昨日からお昼になるとレモネサルタン邸から使いがきて昼食をお弁当にして持って帰ることになりました。お弁当はもちろん特注品で豪華。ケーキ全種類つきはエルラードの注文です。

いくらお忍びでも毎日レモネサルタン伯爵様が地元のカフェに来るのは具合が悪いということなのでしょう。

内心顔を会わさないで済んだアリスの顔も綻びます。


このレモネサルタン邸の使いとは当然ミノス爺さんのことです。


「いらっしゃいませ」


「こんにちは。アリス様」


(あの変わり者が気に入るくらいだから変わっているのかと思ったら至極まともそうなお嬢さんだな。目がクリッとしていてかわいいし、ちょっと細めだけどスタイルもいい。坊ちゃまは姿形なんか気にしないけど綺麗であることに越したことはないからな。

しかし坊ちゃまはこの料理になんであんなに固執するんだろう。城の料理人の方が悪いがよっぽど腕は確かなのに。まあ、ほっとするというか、なんだか身体が温まるって感じの料理ではあるが…今まで食べ物に対して坊ちゃまが気に留めたことなど無かったのにアリス様の料理だけは美味しいという。)


ジッと見つめながらミノスが考え込むものだからアリスはちょっとフリーズ状態…。

お城にいる人って変。と思っているであろうアリスと目が合って、ミノスはやっと我に返ったようにアリスに微笑みかけます。


「ご注文のお弁当です。」


(それもって早く帰ってください)


アリスがそう思ったのも無理がありません。

しかしその願いは通じなかったのかミノスはこの間エルラードが座ったカウンターの隅に腰をおろしました。ふーっとため息をついてちょっと俯いています。すぐに帰る気はさらさら無いようです。


「このお勧めフレーバーティいただけますか?」


手書きのかわいらしいお品書きを指差してミノスが言います。


「今日はキャラメルですが?ミルクをあわせますか?」


「お願いいたします。」


程なく紅茶が運ばれてきたティーカップには小さなクッキーがついていました。


「これは?」


「サービスです。」


(お疲れのようですから…)


とは続けられませんでしたがあからさまに疲れているだろうミノスにアリスは同情していました。

昨日ミノスに聞いた城の事情は使用人が急にやめてしまって困っていたというふうな話でありました。細かい事情は主人の名誉のためにもミノスは誤魔化していましたが。


 エルラードに結婚しようと言われたことをアリスはミノスにも誰にも言わない事にしていました。彼女にしてみれば現実味がないし、伯爵と結婚したいわけじゃないのにへたに言い出すとややこしそうです。できれば触れないで欲しいと思っているくらいです。


 対するミノスはアリスが言い出さないことに安堵していました。エルラードの妻とすると爵位もない普通の娘には荷が重く、第一、主人を好いている様子が全く見られないのです。エルラードの名前が出ようものなら青ざめて目が泳ぐくらいなのですから。


(いったい坊ちゃんは何を考えているのやら。)


そう思いながら紅茶をすするミノス。だいたい昔からエルラードは面倒を嫌います。天賦の魔導師の才を持ちながらその力を使って頑張ることもなく、だらだらと毎日を過ごしています。やる気さえあれば強大な力を持つこともできるであろう主人はその性格のためにその才能を台無しにしています。暇さえあれば日向ぼっこに昼寝…あれもひとつの才能だと言い切れるくらいよく寝ます。


(…いい若者が寝てばっかりというのはいただけません。)


アリスが焼いたおまけのクッキーまでもが心をほっとさせてくれるものであったのでミノスは人知れず苦笑してしまいました。




それから1ヶ月はお弁当で満足していたエルラードでしたがお弁当を持って帰ってくるミノスの姿が日ごとにうきうきしてきたのを見てなんだかイライラしてきました。

自分が見つけた秘密の場所を奪われたような気分になったようですね。何事にも執着が無い彼にはめずらしいことです。


(僕には城を降りるなと言っておきながら毎日楽しそうだね…)


誰が見ても楽しそうにお弁当を持って帰ってくるミノスに対して不機嫌(でも無表情)丸出しのエルラード。しかし、待っていても食事やケーキは届いてもアリスはきません。


(ここはひとつデートにでも誘うか。)


断られることなど考えていないエルラードはメッセージをカードにサラサラと書くと次の日にミノスに持たせました。




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