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No More Goodbyes  作者: ちくわ犬
***本編***
31/34

空への誓い

最終話です。


       女神が舞い降りた


事件の翌日の新聞にはそう書かれていました。白金の女神が舞い降りて混乱した会場に慈愛の雨を降らせたと。あの場に居た人は皆心のわだかまりや黒い感情から開放されて癒されたのです。あの場に居たかったと言う人はいても誰もエルラードを責める人は出てきませんでした。コザン帝も教会の修復などの話はされましたがエルラードの生い立ちに酷く同情されて魔力の管理の為にはアリスが必要だろうとアリスに特権階級を与えると言って下さいました。ただ、二人はしばらくの間、国の研究機関の資料のために協力する事になります。


あの場所に居たジョゼッタは憑き物が落ちたようになって、レザノンの求婚に答えました。あの二人のみならず、今はエルラードとアリスを認めない人は居ません。



そして1ヵ月後……



「もう、大丈夫なのね、エルラード。」


「ええ。伯母様。いろいろ力をお貸しくださってありがとうございます。お陰で爵位も剥奪されずに済みました。」


「……それは、あなたの女神のお陰でもあるのよ?ふふ。あなたを抱きしめても?」



シンシア様がエルラードを抱きしめます。それは、父のようで母のようでエルラードに安らぎを与えました。


「え、と、それで…。」


抱擁が終わってそこそこにシンシア様がキョロキョロします。


「……。これでしょう?」


にっこり笑ったエルラードが籠を出しました。


「今日はなにかしら!」


目を輝かしてシンシア様が籠を覗き込みます。


「まったく、僕よりお菓子のほうが目当てなんでしょう?」


「……そ、そんなことは無くってよ。」


アリスはお店を再開させて毎日お菓子を焼いています。……今では予約は一年待ち。商品は毎朝2時間ほどで品切れです。なかなか手に入らないこのお菓子を手に入れようと地元の人はもちろん、貴族たちも躍起になっています。シンシア様もその一人のようですしね。エルラードの助言に沿ってアリスは焼き菓子専門に絞って喫茶の方は伯母夫婦に任せる事にしました。もともとやる気さえあれば商才のあるエルラードの手腕もあって来月中にはチェーン展開する準備も出来ています。メリーはその事業に幹部として携わりエルラードの資金援助を得ることができました。


「コザン帝もこのお菓子にメロメロなのよ?」


籠を受け取ったシンシア様がにっこりしました。


「アリスは大忙しです。僕のアリスなのに。」


ぷうと膨れたエルラードにシンシア様は笑ってしまいました。

エルラードの瞳は緋色に戻っています。でも……。


「貴方、アリスさんに魔力の制御の方法を教えないように裏で手をまわしているのでしょう?」


「人聞きの悪い。”お願い”しただけです。」


本気をだしたエルラードのメロメロ光線に抗う人は居ませんけどね。確信犯です。


「アリスさんの髪の色が戻るのはいつかしら…。」


「僕の生きている限りは戻せやしません。」


「あらあら。」


アリスは魔力を生産する体質では有りません。だれかに貰って自分の魔力に変換するのです。気の変わらないうちにとすぐに入籍させられたアリスは妻となったその日から毎晩エルラードにせっせと愛情と魔力を注がれて今では元の色が思い出せないくらいずっと髪の毛が白金のままです。「白金の女神が焼くお菓子」との触れ込みなのでお菓子の売れ行きにも影響があるとエルラードに説得されてメリーのために事業を失敗したくないアリスは言われるがまま、エルラードを受け入れています。魔法の制御の方法を教えてもらえば自分のなかで幾分かは溜める事ができます。髪の色が戻ってもいいなら1週間ほどはエルラードに魔力を分けてもらわなくてもいいはずなのですが……。まあ、新婚ですしね。


「伯母様、内緒ですよ?」


唇に手をやっておどけて見せる甥をシンシア様は目を細めて見ました。


(あの殻に閉じこもっていたあの子が……。)


こんなにエルラードと打ち解ける事が出来るとはシンシア様も思っていませんでした。


「では、また。」


「ええ、待ってます。」


少し頼もしく見える後姿を目で追いながらシンシア様の胸はいっぱいになりました。



****




「ですから、アリス様、私は先代から緋色の目の強大な魔力の子供が生まれたら対になる子を探しなさいと言われていたのですよ。……お恥ずかしながらすっかり忘れていたんですが。」


「そうだったんですか。でも、ふつう、貴族の方とかじゃないんですか?」


「いえ、そのような事は聞いておりません。そもそも目印も髪の色だとは聞いていませんしね。」





「……ミノス、お前がちゃんと覚えていればこんなややこしい事にはならなかったんだ。」




主人の留守中に主人の愛妻とお茶をする使い魔の耳を引っ張りながら先ほどトノスの城に戻ったエルラードが毒づきます。天気の良い午後は庭で愛妻アリスはお茶をしています。


「あ、お帰りなさい。エルラード君」


アリスが慌てて頬にキスをするとエルラードの頬も緩みました。ついでにミノスも摘まれた耳が開放されます。そのまま、使い魔を後ろ手でシッシと追い払うとエルラードはアリスを腕に閉じ込めます。


「良い報告があるのよ?今日お店にいったらね、焼けていた月桂樹に新しい芽が出ていたの!」


芽が出たのはアリスの両親がアリスのために店の前に植えた月桂樹です。もう駄目だと思っていたのでアリスにとっては嬉しい限りです。


「そうですか、良かったですね。」


エルラードは愛しい人が嬉しそうにしているのがたまらなく愛しく感じてますます抱きしめます。アリスの髪に顔を鎮めながらエルラードはいいます。


「あれ、アリス、髪の色が戻りそうですよ?」


「え、嘘。だって昨日もあんなにいっぱい……。」


赤面したアリスが言います。そうです、昨晩いっぱいしたではないですか!


「朝からたくさんお菓子を焼いたのでしょう?きっと魔力を使いすぎたんですよ。」


別に魔力をたくさん注いだって焼き菓子は焼き菓子でしかありません。確かにアリスが焼くからポイントが高いってのはありますが、美味しいから売れているんです。ただ満タンにして髪を白金にしたいのはエルラードのわがままです。でも、アリスにはまだそのことはバレていないようで……。


「そ、そうなのかな。今日はいつもより少し量は多かったけど…。」


「今からたっぷり分けてあげますから。」


王子様はにっこりと笑ってアリスをお姫様抱っこ。下心見え見えですよ!ま、いいですけどね。


城へ向かう二人を優しい風が包みます。


二人は空に誓いました。


互いの手を離さぬよう生きていく事を


教会で神に誓うより先にその空へ


死が二人を別つ時まで


No More Goodbyes


ずっと……。





~FIN~












最後までお付き合いいただいてありがとうございます。途中ノロノロでしたがなんとか終われました。あとがきも後日独立してエルラード君のイラストと共に載せるつもりですが、出来るかなぁ。←いらんやろって感じかな(笑)

以前に書いていたものを修正しながら載せていたのですが、まあ、思うこと有りましてラストはそのままにして大幅修正いたしました。時間はかかったけど私なりには書き直して満足しています。コザン帝に気に入られたアリスが内気な皇女の話し相手に任命される番外編など書きたいなぁと思ったり。止まってる連載物を再開したいと思ったり、やりたい事も盛りだくさんで今後も頑張ります。掲載はノロノロになりそうですが。

ポイント、ご登録、ご感想下さった方に感謝を。励みにしておりました。

では、またお会いする事があれば嬉しいです。


2010.9.29   ちくわ犬



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