涙の散歩道
(ミノスさんには相談した方がいいかな…。)
手紙のことを思うとブルーになってしまうアリスです。
(でも、まだ手紙だけで何かをされた訳ではないし。…もうお城に来なくていいって言われる?)
( ……。)
お城に来なくていいと言われたら嫌だと思うアリスにも気持ちの変化があるようです。気付かないでいたいようですが…。
不安な気分のままその日もアリスはお城へ向かいました。
「今日も天気がよくて気持ちいいですね。」
城の周りの散歩道を仲良く手を繋ぎながら歩くカップルが…もちろんエルラードとアリスです。
「そ、そうね。」
王子様スマイルに押されて少し上の空だったアリスが返事します。
(なんか最近手の繋ぎ方が恋人つなぎになったんですけど…)
指を絡ませて繋ぐ、あれですね?相変わらずうまいこと丸め込まれているアリスは恥ずかしくて自分の靴ばかり見ています。時折大きく手を振っているようですがそれくらいじゃエルラードは放してくれませんよ?
「アリス、僕と結婚するのはやっぱり、嫌?」
いきなりそう言われ、ビックリしたアリスがエルラードを見上げました。今日もエルラードは日の光を浴びてキラキラしています。
「 ……。 」
(美人で未成年で天才魔道士で大金持ち…)
何もいえずにアリスの頭の中はぐるぐるぐるぐる……。
(…いったい私のどこが良いって言うんだろう。平凡で年上で魔力ゼロでお金もない…)
(うう、そんな捨てられた子犬みたいな眼で私を見ないで…)
最近エルラードはアリスの扱い方に長けてきてます。そうです、そういうのに弱いんですよ、アリスは!実際エルラードも縋る思いなのでしょうが…。
…何も応えないでいるアリスを見てエルラードはますます寂しそうな顔になりました。そして小さい声ですがはっきりとアリスに言いました。
「僕は人殺しだから…」
その言葉を聞いたアリスは一瞬でその場に凍りつくしました。
(今、なんて?)
暗い表情になったアリスをみてエルラードは手を外そうとしました。
でも、次の瞬間思いがけないことにアリスがぎゅっと握ってきたのです。
いままで手を繋いでも何か理由を見つけては手を離そうと努力していたアリスが…。
(ああ、だから…私には相応しくないって言ったんだ…。思い出して…つらくて部屋に閉じ篭ってたんだ。)
ミノスは当時6歳だったエルラードは事件のことをほとんど覚えていなかったと言っていました。衝撃が強すぎて忘れたいという気持ちが忘れさせているのではないか…と。しかし思い出していたとしてもなんら不思議ではないのです。
(何を言ってあげたらいいのか…言葉が見つからない)
アリスはただただその場で自分の瞼から流れ出す涙が地面に落ちるのを見ていました。
エルラードの手を強く握ったまま。
(アリスが泣いている…)
いきなり泣き出したアリスを見ているうちにエルラードは不思議な気持ちになりました。
(胸が熱い…)
両親を失ってから13年間溢れ出たことの無い涙が彼の頬を伝います。
ただ手を繋いだまま、城の壁に寄りかかるようにして座って二人は涙が止まるまで泣いていました。
「ミノスから聞いていたんですね。」
「この間、エルラードくんが先に帰っちゃったときにね。」
「それでも、僕のところに来てくれたんですね。」
「それは、その…」
「やはり、僕はあなたのこと諦めたくありません。自分だけの幸せにあなたを巻き込もうとしているのは解っているんですが。…こんな最低な僕を軽蔑しますか?」
「そんなこと…」
「アリスといるとね、暖かくなるんです。自分がまだ世界に見捨てられていない気になるんです。」
「 … 」
「今は同情だけでもかまいません。僕に同情してください、アリス。」
「 … 」
「傍に…傍に居て欲しいんです。」
切なく訴えるエルラードにアリスが小さく頷きました。
それを確認したエルラードは壊れ物を扱うかのように優しく、ぎこちない仕草でアリスを抱きしめました。