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No More Goodbyes  作者: ちくわ犬
***本編***
14/34

ライバル再びです。

(ん…)



(えっと…)



(んんっ…)



ここぞとばかり何度もキスが降ってくるのにアリスはタジタジ。

エルラードを押し返そうにも心地よすぎるキスに翻弄されて、ましてはこの体制ではうまく力が入らないようです。


(優しく啄ばむように何度も降ってくる…なにも考えられない…)


(なんて優しいキスをするんだろう…)


ビックリしてわけも解らずにいたアリスでしたが次第にうっとりとしてしまいました。アリスは体がふわふわする感覚に陥ります。髪の毛の先からつま先まで暖かいものが流れ込んでくる感覚です。


(この、感覚は…どこかで…?)


アリスは元より必死なエルラードも気付いていないようですが、アリスの赤い髪の先がキラキラと光出しています。そのうち柔らかい光が二人を包み始めました。

そのとき


「何をしてるの!」


怒りに震えるその声でアリスは一気に覚醒しました。


(そそそそそそ、その…)


誰かに見られたことに対する羞恥心とエルラードを思いっきり受け入れてしまった自分に血の気を失ってしまうアリス。顔面蒼白、心はブリザードです。怖くて動くことも出来ません。

そんな彼女の背中を引き寄せたエルラードは声の主にアリスを見せないように自分の胸に抱き寄せました。



声の主とは…ジョゼッタ嬢です。どうやらメイドの一人を賄賂で取り込んでエルラードを見つけたようです。


「エ、エルラード様に膝枕させるなんて!!!!その上、その上!!!無理矢理キスを!!!どんな汚い手でエルラード様に取り入ったの!身分をわきまえなさい!」


無理矢理は無いんじゃない?、ジョゼッタ嬢。エルラードが強引にしたんですよ…この体制でエルラードが迫られると考えられるのは貴方の妄想くらいです。といってもワガママ娘さんには納得できることではありません。



(ドキドキドキドキドキドキ…)



幸いなことに抱き寄せられたアリスは心臓が爆発しそうで周りの声が聞こえないほど混乱しています。


「僕の大切な人を侮辱するなら僕にも考えが有りますよ…」


先程までの優しげな目の輝きを失ったエルラードはアリスとは別の意味で心がブリザード。


「大切な?そう、おっしゃったの?エルラード様。そんな女が?聞くと両親もいないような下賎な出の娘らしいじゃない!レモネサルタンの家名を穢すおつもりですか?」


「…両親は僕にもいませんが?」


地を這うような声でエルラードが言いました。そう言ったエルラードの胸がわずかに震えました。アリスはそのわずかな変化に胸が騒ぎました。


はっと口元を覆い、ジョゼッタ嬢が口をつぐみます。


「…公爵令嬢の貴方には両親もいないような僕では釣り合わないでしょう?」


氷のように美しく冷たい表情で微笑を称えながらジョゼッタ嬢を見据える紅い瞳。


「それは…」


益々冷たくなる声…


「僕のどこがいいというのです?シャクソンの丘の惨劇の生き残りです。どんなことがあったか貴方も知らない訳ではないでしょう?それとも僕がお話しましょうか?」


(これ以上、なにも言わないで…言っちゃ駄目)


アリスはあまりに居た堪れなくなってエルラードをそっと抱きしめました。


(自分で自分を傷つけないで…)


抱きしめられてエルラードが苦笑しました。



「ジョゼッタ様、ソンバイン公爵様より使者が着いております。日の暮れぬうちにお戻りなさるようにと…」


いつのまにか来ていたミノスがジョゼッタ嬢に促しました。


「…わかったわ。その、今日は失礼します。」


青ざめたジョゼッタ嬢はミノスに言われるまま従者に連れられて帰っていきました。


ジョゼッタ嬢が帰るのを見届けてからエルラードがゆっくりとアリスから離れました。

瞳は冷たいまま。


ちらとアリスを見ると


「僕は貴方には相応しくないのかもしれませんね。」


エルラードはそう言ってアリスを残して城へ帰っていきました。


顔を合わそうとせずにそう告げたエルラードの背中をアリスは目で追うことしかできませんでした。


(どうして…)


唇はまだ熱を持っています。エルラードの胸の鼓動が伝わっていた頬も。

アリスは混乱したまま放置されてしまいました。


(こんなにドキドキしてる。)


どうしてこんなに胸が苦しくなるのかばかり考えていたアリスは気がつきませんでしたがレジャーシートの下になっていた部分の芝生だけが青々と輝いていました。


柔らかい風がアリスを包み、誰かに優しく抱きしめられているような気持ちにさせました。





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