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第24話 愚者と盲信

俺は屋上から飛んで駐車場へと飛び降りる。

地上3階から跳躍しても着地時に脚に痛みなんて全くない。


実に合理的に身体は進化していた。


そして俺は、祭壇下でうめき声をあげるシュウジおじちゃんの元へと戻ってきた。


「お待たせ!待った?」


まるでデートの待ち合わせのように、俺は明るくそう言い放つ。


「…み、みんなやったのか…?」


額に滲む汗。

シュウジおじちゃんは痛みに表情を歪めながらそう言った。


「勿論。」


「なんて…。なんて酷い事を…。」


そう言って、彼の頬を一滴の涙がツーッと落ちていった。



俺はそれを見て、深いため息をついた。


興醒めだ。


何故こいつは泣いているんだ。理解ができない。


「意味分かんないんだけど。」


「…は?」


「だから…、意味分かんないって言ってんじゃん!」



抑えきれない怒りが、そのまま稲妻となって俺の身体からバチバチを放たれる。


「何で泣くの?いっぱい大人が死んだから!?それとも、今度は自分の番だってイメージしちゃったから!?」


「意味分かんないよ!ダンダもリュートもツキコもハナも…!みんな死んでんだよ!!!…殺されてるんだよ!!!!」



”空が泣いていると“いう表現がある。

今の俺の場合は字が異なるらしい。



空が鳴いている。



俺の怒りに呼応するかのように、その青空はゴロゴロと音を立てて、幾つもの落雷が周囲に落ちる。

これは俺の意図しないもの。


コントロール外の電子達が大気中で荒れに荒れていた。



「違う!…違うんだライラ!みんなは殺されたとかそういうのじゃなくて…。神になれなかった!それだけなんだ!!!」


怒りが、憎しみが、思考領域を一気に侵食するのが分かる。

一瞬くらっと目眩がっする。

視界がぐにゃっと曲がった感覚がしたのだ。


「それだけ!?…それだけだって!?……あんなに怖くて、痛くて…、辛い思いをして、そこから死んで…、それだけだって!?」


「おじちゃん頭おかしいよ!!!」


俺の両頬を涙がとめどなく流れ落ちる。

人ってあまりにも頭にくると涙が出るんだな。そんな風にどこか俯瞰で冷静に見ている自分がいた。


「おかしいのはお前だろ!ライラ!!神になったんだ…!みんなの願いを叶えたんだ…!それなのに何でこんな…!」



俺はこの数分間で何十人と殺した。


どう考えてもおかしいだろ?

罪悪感なんて微塵もないんだ。


その違和感を常に抱きながら復讐の限りを尽くした。

そう、俺にはこの違和感があった。


狂ってないよね?大丈夫だよね?

常に自分に問いかけながら、この稲妻を奮っていた。



だが目の前にいるこいつはどうだろう。

そんな違和感を持って行動していたのだろうか。


俺達を育てる時、遊ぶ時、ここに連れて来る時、そして儀式という名の拷問を行う時。それら全ての行為に及ぶ時、彼らは何を思っただろう。



今の会話の応酬で何となく理解した。


彼らの行動原理が、善意である事を。


同じ言葉で話しているはずなのに、なぜこうも意見がすれ違うのか。

単純な話だ。

彼らはとうの昔に人を人たらしめる感情を失っていたのだ。


だから彼らは嬉々として、むしろ神聖な気持ちで俺達の身体に火を放ち、肉を割いたりできるのだ。


「会話になってないよ。おじちゃん。」


俺はこれ以上話すのは無駄だと悟った。


右手の人差し指で高々と天を指す。それを振り下ろしてシュウジおじちゃんの顔を指さして俺は言った。



「雷神の鉄槌ライジンノテッツイ。」



空が一瞬緑色に染まる。

ただの落雷とは比較にならないエネルギーの塊が、愚かな狂信者に降り注ぐ。


たった一撃。


されど一撃。



数十メートルはくだらない。

地下深くまで地面を削り取った稲妻は、シュウジおじちゃんを含めて祭壇丸ごと消しとばし、前方に直径100メートルはあるんじゃないかという大穴を形成した。




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