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第25章 乙女座市 大荒れ⁉️

 次の日。

 「準備ができた人から、曲のパート練習をしてください」

 こちらは、天秤高校の音楽室。 一ヶ月後の文化祭での 舞台発表に向けて、吹奏楽部の朝練が始まったところです。

 メンバーに指示しているのは、丸顔に もじゃもじゃ頭の部長さんです。 ちょっと老けていて ハンサムではないけど、面倒見のいい 頼れる兄貴分です。


 「部長、チューバの伊藤君が まだ来てません」

 いつもチューバの近くで練習している ドラムス担当のメンバーが、異変に気づいて報告しました。

 「珍しいなあ。 彼は、今まで 遅刻なんかした事なかったのに?」

 部長さんが 不思議そうに首を傾げたその時、

 「おはよう、みんな揃っているな。 練習中すまないが、ちょっと聞いてくれ」

 なぜかスポーツ刈りの音楽教諭・この部の顧問の菊池先生が、音楽室に入ってきました。

 「先生、まだ揃ってません。 伊藤君がまだなんです」

 と、部長さん。

 「そうなんだ。 実は、その事で 重要な話しがあるんだ」

 先生の言葉に、それまで賑やかだった音楽室が しーんと静まり返りました。 部員全員 楽器を置いて、先生の次の話を待っています。


 「実は 昨日の事だったんだが、伊藤君は 放課後の練習を終えて帰る途中、駅の階段から落ちて、大けがを負ったそうだ」

 「えっ、なんだって⁉️」 先生から聞かされた 衝撃のニュースに、音楽室中に どよめきが広がりました。

 「あの、先生、それで 伊藤君の様子は どうなんですか? 手術とかするんですか?」

 メンバーを代表して、部長さんが尋ねると、

 「今 隣町の救急病院で診てもらっているそうだが、もし骨が折れていたり、ケガが脳まで達してたりしていれば、本番までには 戻ってこられないだろうな」

 と、菊池先生。

 「えっ、そんな・・・」 

 「どうしよう? チューバ、代わりいないよ」

 音楽室は、パニックになりました。


 次の日。

 朝練のために 吹奏楽部のメンバーが 全員で音合わせをしていると、顧問の菊池先生がやってきました。

 「みんな おはよう。 ちょっといいかな?」

 先生が そう生徒たちに呼びかけてから 入口の方に手招きをすると、紀矢(のりや)と同じクラスのスピカ君が 入ってきました。


 「あれえ? おまえさん、こんな朝早くから おいらたちの応援に来てくれたんか?」

 紀矢が 驚いて、思わず椅子から立ち上がりました。

 「待て待て。 ちゃんと 最後まで聞きなさい」 菊池先生は、優しい笑顔で 紀矢を座らせてから、話を続けました。 

 「今日から 伊藤君のピンチヒッターとして、1bのウィルゴー君が チューバを担当してくれる事になったんだ。 彼は、 アンバランの高校でも、吹奏楽部で チューバを吹いていたそうだ。 みんな よろしく頼むぞ」

 「はい」と、生徒たちの返事が ハモりました。


 早速今朝の練習から、スピカは 紀矢と同じ吹奏楽部員に加わりました。

 楽譜を覚えるのも早いし、楽器を吹くのもうまい。 おまけにスピカは、天秤高校のアイドルと きたものです。 部のメンバーとも すぐに馴染んだ事は、言うまでもありません。

 こうして 紀矢たち吹奏楽部の練習は、大物ルーキーのおかげで、11月の文化祭に向けて 順調に進んでいきました。


 さて その一方で、(とおる)が入院した頃からでしょうか、秤高(天秤高校)や 乙女座市内では、耳を疑いたくなるような イヤ〜な事件が、あちらこちらで目立つようになりました。


 例えば秤高では、お昼休みや 体育の時間などに、人けの無い教室のロッカーから 貴重品が盗まれたり。

 またある時は、廊下で お掃除のおばちゃんが いきなり誰かに突き飛ばされて、目を回していたり。


 水瓶座寺(みずがめざでら)の賽銭や、御宝前(ごほうぜん)のお供え物が 知らないうちになくなっていたり。

 コンビニや 郵便局などのatmも 荒らされました。

 市場に出す寸前の作物も、畑や 農家の倉庫から盗まれました。

 街のレンタル自転車も、誰かが乗っていったまま 行方知れずに。

 ひろみの家の近所では、三軒も空き巣に入られてしまいました。


 もちろん街の人たちだって、指をくわえて見ていたわけではありません。

 学校や 街を守るため、先生たちや お巡りさん・ガードマンが、交代で 一日に何度もパトロール。

 そして、街のいたる所に 防犯カメラや アラームが備え付けられました。


 それなのに、事件は 一向に減りません。

 おまけに、通報を受けて 刑事さんや ガードマンが駆けつけた時には、犯人どもは とっくにずらかった後。 カメラに写っていた連中も、なぜかどこを探しても 見つからないのです。


 これまで平和だった小さな町は、日を追うごとに 荒れていきました。

 〜つづく〜

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