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第15章 ミルクのど飴

 紀矢(のりや)のお父さんは,公共の建物を作る建設工事屋の職人です。 工事中の事故で重態との知らせを受けて,紀矢と お母さん・二人の姉ちゃんが 隣町の救急病院に駆けつけると,緊急手術の真っ最中でした。 

 

  「母ちゃん,父ちゃん 大丈夫だよな?」 お母さんに訊いたってしょうがないと ほんとはわかっていても、訊かずにはいられない紀矢。 

 「助かるってわかってるから、手術してくれてるんじゃないか。 父ちゃんは,昔っから 運が強いんだよ」 笑ってみせるお母さん。 でも本当は,自分に言い聞かせているのです。 

 いつの間にかすっかり夜になっていました。 病院のロビーの窓の外は,真っ暗。 壁にかかっている時計を見ると,もう9時半を過ぎています。 

「あ〜あ、腹減ったなあ」 

「あんたねえ、父ちゃんだって頑張ってんだからさ,もうちょっと我慢しなっての」 

一番目の姉ちゃんが,紀矢に デコピンを一発。 

「いってえ、まあちゃんの鬼❗️ ・・・あ、そうだ」 

ふと、制服のズボンのポッケから キャンディーを取り出して,口に入れる紀矢。 夕方,カラオケボックスを出た時に,スピカ君が追いかけてきて,男子会を盛り上げてくれたお礼にと プレゼントしてくれた,ミルク味ののど飴です。 

 ところが、舐め始めた途端 突然鼻が むずっときて, 

 は、は、はっくしょーん‼️

 ピタン。 ポトッ。 

「うわ、ヤダ」 

くしゃみの勢いで飛び出たのど飴が,ちょうどそこを通りかかった女性看護師さんに命中して,床に落っこちてしまいました。 

「ば、ばっかだねえ、この子ったら。 ほんとに申し訳ありません❗️」 

「どうもすみませんでした」 

お母さんも,紀矢も、真っ赤になりながら 頭をぺこぺこ。 

「いいんですよ。 くしゃみですから しょうがないですよ」 にっこりして、看護師さんは 忙しそうに行ってしまいました。 

「やれやれ」 

お母さんは,ちょっと呆れ顔。 ティッシュの上から そーっとつまんで飴を拾うと,うまーく包んで 長椅子の脇のゴミ箱に放り込みました。 

「ちょっと 母ちゃん,なんで捨てちゃうんだよ?」 

「なんでって、下に落っこちた飴なんか,バッチイじゃないか」 

「ばっちくなんかねえよ。 病院は 綺麗に掃除してるから,ウエットティッシュでよく拭けば へっちゃらだよ」 

 [プッ‼️」 真顔で返す紀矢の おばか発言に,一斉に椅子から転けそうになる,お母さんと姉ちゃんたち。 


「あの、すみません。 平田さんのご家族の方でしょうか?」 そこへ さっきの看護師さんが戻ってきて,尋ねました。 

 「違います」 石井家の四人の返事が ハモりました。 

「すみません、失礼いたしました」 看護師さんは,頭を下げてから,また急足で 行ってしまいました。 


 「ん? 今『平田さん』とか 言ってたよな!!? もしかして もしかすっと、(とおる)のやつも どこか けがしちまったんじやねえだろうな?」 一瞬 いやーな予感が,紀矢の頭をよぎりました。 

「まさか! だって (のり)、ここ来る前まで その友達とカラオケで一緒だったんじゃないの?」 二番目の姉ちゃんが確認しました。 うんと頷く紀矢。 

「だったら、たぶん違う人じゃねえ? それよか 今は,父ちゃんだと思うんだけど」 

 ちょっと乱暴で 冷たく聞こえる口調の姉ちゃん。 でも、紀矢と同じくつぶらな瞳が,優しく弟に笑いかけています。 


 「あの、石井拓夫(いしい たくお)さんの ご家族の方でしょうか? 手術 終わりましたので,オペ室の前までどうぞ」 

 今度は,少し太っちょの女性看護師さんが 呼びにきました。 あれ? 紀矢君だけ まだ座ってる。 

「ほら、行くよ」 

 一番目の姉ちゃんに ちょんちょん頭をこづかれて,慌ててみんなについていく 紀矢君でした。 


 〜つづく〜


 「ファンキー・ビケット」 次回のお話は? 

 紀矢です。 


 夜遅く 手術が終わって,父ちゃんが オペ室から出てきました。 母ちゃんが泣いたのを,おいらは初めて見ました。 

 おいらには、もう一つ気がかりなことが・・・。 なんか縁起が悪すぎて,おいらの口からは 言いたくねえ。 


 第16章 父ちゃん 

 みんな、応援してくれ。

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