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4 二番出汁 ※R15?

チャプ チャプン……


「ふぅ」


食後、姉妹より先にお風呂をいただく僕。

入浴剤で白く濁ったお湯から感じるのは、心が落ち着くようなアルニカの香り。


広い浴槽、広い脱衣所、広い浴室。

二人で住むには広いが、三人で住むには丁度良い……確かに、そんな塩梅の物件。

今日から、ここが僕の城かぁ……良い子に拾われたものだ。

年下に拾われるのは初めての経験だが。


そう……今日は初めて尽くし。


三人での初めての夕飯は、お喋りなリノちゃんの存在のお陰でワイワイと盛り上がった。

シノさんは相変わらずクールで、調子に乗るリノちゃんをおさめる役回りだったが、その立場や僕が食卓にいる事への嫌悪感は彼女からは感じられなかった。

僕は僕で、のらりくらり、求められれば応え、必要とあらば口を出す、そんな潤滑油のような存在に。


なんともバランスの良い三人称トリオ

まるで、長年連れ添ったような空気感。

これが、今日初めてばかりな三人とは思えなかったね。


とは言っても……


あの姉妹は、僕に『言ってない事』がある。

隠しているわけでは無く、言ってないだけの事。

僕は、ソレについては特に重要視しているわけでも無い。

いつか……それこそ、この後ポロッと言う可能性だってある。

ただの、細やかな『疑問』でしか無い。


「なんか僕から訊くのは違う気がするしねぇ…………んー(伸び伸び)はぁ……さて」


さっさと髪を洗ってさっさと出ようか。

湯船に入ってまだ五分ぐらいだが、本来、僕はそこまで長湯する人間じゃない。

後がつかえてるし、この浴槽の湯の事だってある。


「んー、男が入った後とか入りたくないよね? 僕的にはシャワーだけでも構わないんだけど……」


抜いて掃除して張りなおすべきだろうか。

特にそうしろとは言われてないが、彼女達の心証を考えるとね。

逆も逆で嫌だろう。

女の子が入った後の湯船に、男が入るなんて。

しかし、勝手に湯を張り替えていいものなのか。

お金も出してない立場が、お湯を無駄にして良いものか。


うーん と、数秒ほど悩んでいた僕だったが、


『ワイワイ ガヤガヤ ギャーギャー ガタガタ』


……騒がしさに思考が中断させられる。

騒がしいのは、すぐそこ。

扉一枚を隔てた、脱衣所。


ガラッ!


「はいはーいっ、来ましたよお兄ちゃーんっ」

「ちょっ、リノッ」


浴室へと飛び込んで来たのは、ここの家主姉妹だ。

一人、リノちゃんだけが上下白の水着を着ている。


「おー、丁度良かった。僕が上がった後、お湯抜いた方がいいかな?」

「えー? そのままでいいよっ。てか一緒に入るしっ」

「それはエコだね」

「普通に会話しないで下さいっ、ほらっ、リノッ」

「るっさいなーお姉はー。『今日は』妥協して、こーして水着着てやってんじゃーん。風呂に水着ってマナー違反もいいとこだよっ」

「人としてのマナーを守りなさいっ」

「まーまー、シノさんや」

「貴方は黙ってて下さいっ」

「お、今の夫婦っぽい遣り取り」

「ふっ、夫婦てっ……」

「ぐぬぬ……油断も隙もねぇ姉めっ。ホラッ、これ以上浴室で服着たままで居ようってーんならお湯掛けるぞっ」

「こ、このっ……」


湯船の湯を両手で掬って睨むリノちゃんに、シノさんは歯噛みしつつ、ガラリと乱暴に浴室を出て行った。


「もう、姉妹は仲良くしないとダメだよ?」

「傾国ならぬ傾姉妹のお兄ちゃんが姉妹の仲を歪めた原因だからねっ。ほらっ、詰めた詰めた」

「掛け湯掛け湯」

「えー? JKの出汁が流れちまうぜー? 世の男子が欲しがってるやつだぜー?」

「僕は二番出汁派なんだ。ほれほれ(パシャパシャ)」

「やんっ、ちべたっ。もー、贅沢なお兄ちゃんっ」


素直なリノちゃんはシャワーを手に取り、上と下、水着の中までシャーっと洗い流す。


「なんとなくだけど、リノちゃんはあざとくネーム入りのスク水着てくるイメージがあったよ」

「スク水ねぇ。いや、今時の高校ってプールの授業とかないやん? 水泳部でも無い限り持ってないよ、そんなの」

「それもそうか」

「着て欲しいならポチるよ? あ、中学の時のもうサイズが合わないやつにする?」

「『もうサイズが合わない』って良い言葉だよね。今度頼むよ」

「うぃー。さっ、身体はこれでキレイキレイでしょっ」


腰に手を当てながら、リノちゃんは僕の方を向いた。


流石はアイドル、加工無しでこのプロポーションは流石だ。

張りのある白い肌は水を弾き、張りのある胸や太ももからはタラリ、水滴がこぼれる。

『隠れている方がエロい』とは、昔の偉人もよく言ったもの。

僕は色んな意味を含めて『OK』と、人差し指と親指でマルを作った。


「よしっ。さぁお兄ちゃ……いや、今度は私が後ろになるっ」

「なんの?」


言うが早いか チャポン と、僕の背中側から入浴するリノちゃん。

それからグッと両脚を伸ばし、ガシリと脚で僕の両脇腹をクワガタのように捕らえ、ホールド。

グイッと、そのまま、自らの方へと僕を引き寄せた。

今更、当然、言うまでも無いが、僕はいま全裸である。

白い濁り湯なのが助かるね。


「んふふー、捕まえたぁ」

「くっ、(良いもん食わせたのは)最初から、僕を太らせてから食うつもりで……?」

「誤解があるねぇ。お兄ちゃんはいつでも食べ頃だねぇ(ペロペロ)」

「やぁん、首の後ろは弱いのぉ……」


ガラッ!


「な、なにをしてるんですっ」


おや、シノさんだ。

黒い水着もまたいいね。


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