65日目 エルフの港町
●65日目(グリウス歴863年7月7日)
早朝、ヒュリアの登城に合わせて待っている。
少しだけ待つとヒュリアが登城の為、現れた。
「アルス、どうしたの。こんな時間に。」
「ヒュリアにお願いがあったんだ。ランゴバルドから援助物資が10日に来ると思うんだけど。知ってる?」
「ええ、知っているわよ。」
「その物資を持ってきた責任者に、この手紙を渡して欲しいんだ。中身は、昨日ヒュリアと話した内容だよ。」
「分かったわ。必ず渡る様にしておくから安心しなさい。」
「ありがとう、ヒュリア。頼りにしてるね。」
「ええ、任せなさい。」
そう言ってヒュリアに報告書を手渡した。
リリーと港町へ向かい始めた。
王都から港町まではジュノー王国と違ってしっかりとした
石畳で作られている。
道幅も馬車が2台すれ違えるだけの幅があり、非常に歩きやすくなっている。
ジュノー王国でもこうやって道を整備すれば、
流通量も増えて経済が潤うんじゃないかと感じてしまう。
道をテクテクと歩いていると、
後ろから馬車が1台迫ってきているのが分かった。
索敵で確認すると、馬車には1人だけのようである。
接近する速さから普通の乗用の馬車かと思ったが、
見てみると荷馬車のようであった。
道が整備されているだけでこれ程速さが違うのかと感心してしまった。
馬車が近くまで接近してきたので、道を空けて待つことにした。
「よう、一人で歩きかい?」
そう、声を掛けてきたのは、農家のような作業着を着た
30代くらいに見えるエルフだった。
実際エルフの見た目は良く分からない。
エルフは10代までは人間と同じような成長をするらしいが、
そこから先は人間と違って、老化が遅いと聞いている。
寿命も400年くらいは普通に生きるらしいので、
年齢を気にしてもしょうがない。
「はい、港町に向かっています。」
「そうか、良かったら乗っていくかい?途中までだが乗せてくよ。」
「いいんですか。ありがとう。」
そう答えて、御者席の横に座らせてもらう。
荷台には、壺や木の箱がたくさん載っているが、中身は空っぽだ。
「人間とは珍しいね。なんでまたこんな所にいるんだい。」
馬車を動かしながらその男は訊ねてきた。
「王都に用があったんですが、1週間ほど待たなければいけないので、観光がてら港町に行ってみようと思ったんです。」
「へー、そうかい。港町に行っても珍しい物なんて何もないと思うがね。それよりも面白い同行者だね。」
「この子はリリーっていいます。僕の仲間です。」
「リリーだよ。」
「リリーちゃんね。よろしく。」
「おじさんは、王都からの帰りですか。」
「村で採れた野菜や薬草を卸してきたんだよ。普通は行商がやってくるんだが、タイミングが合わない時だけ村を代表して売りに行くんだよ。」
「こんなに早く帰るという事は、王都で泊ってきたんですか?日帰りでもできそうな感じですが。」
「こんな時しか王都へ行く事もないからね。役得ってやつさ。」
なるほど。息抜きってやつかな。
そうやって、とりとめのない世間話をしながら、
昼頃になり、馬車とは別れる事になった。
ここから脇道に逸れていくと村へ行けるらしい。
村への道は石畳で整備されていないので、
知らない人は通り過ぎてしまうような小道だ。
乗せてもらったお礼を言って、石畳を歩き始める。
馬車のおかげで、かなり時間短縮になったはずだ。
道の小脇に休憩するにはちょうど良さそうな木が立っているので、
そこで昼食を取る事にした。
俺は久しぶりに肉はさみパンを食べる事にする。
リリーはパンに花の蜜を塗ったのを食べたいと言ったので
パンに花の蜜を塗ってあげて渡した。
飲み物は、クリエイトウォーターで出した水に果汁を少し絞ったものにする。
リリーにも同じものを渡す。
「リリーはいつも甘い物ばっかり食べるよね。」
「甘いのは好きよ。アルスは嫌い?」
「嫌いじゃないけど、毎回はちょっとね。」
「リリーは毎日食べたい。」
「お肉やお魚はやっぱり食べないの?」
「好きじゃない。野菜の方が美味しいからお肉もお魚もいらない。」
リリーが蜜を消費するので、そろそろどこかで
買い足さないといけないみたいだ。
昼食を済ませ、再び歩き出す。
小高い丘を登った先に海と街並みが見え始めた。
これなら、あと2、3時間くらいで着きそうだ。
予測した通りの時間で街に到着する。
街に入る前に見えたのだが、人間の港に比べて船の数が多いのが分かった。
下手したら倍くらい違うかもしれない。海上交易も盛んの様だ。
街並みは聞いていた通り、特に何かあるわけでもない普通の街並みだ。
他とは違うのは、港付近は大きな建物が多いというくらいか。
たぶん、倉庫なのだろう。
まずは、宿の確保をしたい。街行く人に宿の場所を訊いて向かう。
こじんまりとした宿屋があるので、そこに決めた。
宿の受付の男の人にこの街にある施設について訊ねた。
冒険者ギルドはなかった。
物価の相場は、ランゴバルドとだいたい同じみたいだ。
そうすると少し困る事がある。
それは情報を仕入れる場所がないという事だ。
俺の見た目は子供だ。これで酒場などは行けないから
精々、街の広場辺りで聞き耳を立てるくらいしかないだろう。
まだ、少し出歩いても問題ない時間なので、広場へ向かう。
広場には所々にベンチがあり、そこに座る。
「アルス見てー。」
リリーが空を指さしている。見てみると人が飛んでいる。
よく見ると点々と飛んでいる人がいるのに気づいた。
ここまで、店などばかりに気を取られて気づかなかった。
普通に飛んでいる人もいれば、絨毯?のようなものの上に座って
荷物と一緒に飛んでいる人もいる。
あと、箒に乗って飛んでいる人もいた。
人間の街と違ってエルフの街では街中を自由に飛んでいる。
エルフの社会は魔法が当たり前のように利用されているので
俺にとっては生活しやすい場所かもしれない。
「リリー、すごいね。これなら、俺達も空を飛んで移動できるかもね。」
「リリーはお空飛ぶのも好きよ。」
「明日飛べるといいね。」
ここで、頭の中で疑問が過ぎる。
王都では飛んでいる人がいなかったような気がする。実際、見た事が無い。
そんな疑問を抱えながら、宿屋に帰る。
宿屋の受付にはさっきと違うエルフが座っている。
「おかえり。街はどうだった?面白かったかい?」
どうやら、宿屋の女将さんらしい。
「空を飛んでいる方がいてビックリしました。」
「王都以外のエルフの街は初めてなんだね。だったら、ビックリするだろうね。でも王都以外は皆こんなものだよ。」
「なぜ、王都以外なんですか?」
さっき思った疑問をぶつける。
「そりゃあ、王都での飛行は禁止されているからね。城の防衛の為に必要な事さね。」
女将さんは、豪快に笑った。
なるほど、たくさん人が飛んでたら、城に簡単に侵入されちゃうもんね。
当たり前か。
「もうちょっとで、食事ができるからそれまで部屋で休んでな。あとで呼びに行かせるから。」
それを聞いて、部屋に戻った。
暫らくして、食事の準備が出来たと呼びに来たので食事に行った。
野菜中心の食べ物と、魚の香草焼き、パンとスープが出てきた。
スープはオニオンスープみたいな味で美味しかった。
今回、短くてすみません。
しかも、食べてばっかりの場面になってしまいました。




