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60日目 リリーの容態

●60日目(グリウス歴863年7月2日)


朝起きて、ふと思ったのが、

もしかしたらエルフの国やドワーフの国なら、

ヒントなり、物自体があるかもしれない。

今度、機会を作っていくことにしよう。


リリーの調子が良くならない。

勿論(もちろん)、ステータスなどは見ているが、病気でもなければ呪いでもない。

一体どうしてしまったのだろう。このまま寝かせて休ませるしかない。

食事は、果物を包丁(ほうちょう)で小さくしてスプーンで(つぶ)す。

本当はおろし金で()り下ろせれば良いのだが、仕方ない。

小さい器に入れて、飲ませる様に食べさせる。

食べものが駄目だったのかもしれない。

基本的に果物ばかり食べさせていた。

果物以外何を食べるのか分からないが何か集めて来よう。

肉や魚は受け付けなさそうだったから、野菜とかかな?

でもピクシーが料理するなんて想像できない。

駄目なら駄目で俺が食べればいいから、とにかくいろいろ買っておこう。


念の為、宿の部屋は今日の分も押さえて、

扉にはハードロックの呪文で扉を施錠(せじょう)しておく。

よし、買い物に行こう。


露店で色々な野菜を買っていく。

その中に変な瓶詰(びんづめ)を売っているのが目に入った。

「こんにちは。おばさん。」

「はい、いらっしゃいな。」

「この瓶はなに?」

「これはね、蜂蜜だよ。こっちは花の蜜だね。」

「珍しいね。いつも売ってるの?」

「たまにだよ。そうそう取れるものじゃないさね。」

「おいくら?」

「こっちの小瓶が銀貨5枚で、こっちの大瓶が金貨1枚だよ。」

「うわぁ、高いなぁ。」

「でも、甘くておいしいんだよ。」

うーん、リリーの為だ。

「この大瓶の蜂蜜と花の蜜をちょうだい。」

「金貨2枚だよ。坊やはそんなにお金持ってないだろう。駄目だよ。」

まぁ、普通はそう思うよね。

バッグの中から取り出したように見せかけて

異空間収納から金貨2枚を取り出す。

「これでいいかい。」

「こりゃ、おったまげたよ。こんな大金持ってるなんて、どこぞの坊っちゃんかい?」

「違うよ。これでも冒険者なんだ。」

「へー、小さいのに偉いね。じゃあ、これが蜂蜜で、こっちが花の蜜だよ。」

「ありがとう。また、来るかもしれないからその時はよろしくね。」

そう言って、店を離れる。

もしかしたら、あの花畑みたいな所にいたから、花の蜜はいいかもしれない。

一旦宿に戻り、宿の裏庭を借りて、野菜スープを作る。

この間、塩が手に入ったから多少まともなスープになるはずだ。

野菜スープを収納して、部屋に戻る。

リリーは相変わらず体調が優れないようだが、野菜スープを飲ませる。

野菜も食べやすい様になるべく小さく切ったつもりだ。

野菜は小さい2切れしか食べなかったし、スープも少ししか飲めなかった。

別のスプーンに花の蜜を垂らす。

「リリー花の蜜だよ。食べられるかい?」

そういってリリーに食べさせる。少ししか食べなかったが

リリーは「おいしい」と小さな声でしゃべったが、

またすぐに眠ってしまった。


リリーが眠ってしまったため、冒険者ギルドへは一人で行く事にした。

ギルドの受付へ行き、報酬(ほうしゅう)を受け取る。

今回の報酬は白金貨5枚だ。随分少ない気がした。

その理由をヘレンさんが説明してくれる。

「今回の任務は調査と遺体回収が目的でしたから通常の状態だと金貨10枚も出れば(おん)の字なんですよ。ただ今回は初めから危険があるのは分かっていましたのでその分上乗せがありました。また、危険を少しでも排除した事で更に上乗せがでる事になりましたが、今回はギルド長の指示で特別に一人につきという形で報酬を出すことに決まりました。」

「なるほど。」

通常は人数に関係なく報酬が決まる。

そうしないと、大勢で任務を遂行しに行く(やから)が出てしまう。

だけれど、今回は生き返ったとはいえ、死者も出ているし、

下手をしたら全滅していてもおかしくはない。

単純に慰労金(いろうきん)という形になったのだろう。


前世で会社の褒賞(ほうしょう)を決める時にあまり差を出しすぎた表彰は

会社内部で軋轢(あつれき)や、やる気の減退が起きていたことを思い出す。

普通に考えて大地の牙と俺で半々の報酬にした場合、

大地の牙は文句を言わないと思うが、それを周りが知ったら

俺に対する不平ややっかみが多くなるだろう。

そうなると俺への嫌がらせや邪魔が多くなるのは目に見えている。

特に今回は俺が攻撃の(かなめ)で、大地の牙は防御の要という役割だった。

簡単に言えば役割の違いで評価に差が出れば

評価の出にくい役割の側はモチベーションが大きく下がるし、

誰も評価されない事はしなくなるものだ。

そうなれば、チームとしてはガタガタだし、評価されない部署に

回されれば、サボタージュや足の引っ張り合いが始まる事も多い。

野球に例えるなら全員がピッチャでは試合にならないし、

サッカーで言えば全員がフォア―ドでは試合に勝てるわけがない。

それに大地の牙は俺よりも長年頑張ってきたチームだ。

長期間貢献(こうけん)してきた者達より

ぽっと出の俺では周りの信頼度が違いすぎる。

これからの事を考えれば妥当(だとう)采配(さいはい)だろう。

あとこれは俺の個人的な気持ちだが、大地の牙も今回の報酬で

多少でも元気が出ればいいって感じかもしれない。


「あれから、何か変わった事は無い?」

ヘレンさんに軽く訊いてみる。

「今回の事で正式に王都へ増援の要請(ようせい)を出しました。これで少しは安心できるといいのですけれど、事態はあまり良いとは言えませんね。」

この街のお偉いさん達は連日会議をしているらしい。

「アルスさん。」

ヘレンさんは周りに誰もいないのを確かめて小声で囁いた。

「ここだけの話ですが、内密にお願いします。どうやら、例の者達は帝国の者である可能性が高いようです。」

ヘレンさんはカウンターから身を乗り出して話しかけてきた。

「なぜ、分かったんですか?」

「それはですね。アルスさんが持ち込んだ王への手紙によるらしいのです。」

「ん?王への手紙?なんだっけ?」

「忘れたんですか?王都に行った時、帝国にいた密偵(みってい)から渡された手紙をアルスさんが届けたって聞いてますよ。」

ヘレンさんは少し(あき)れたような顔をしている。

「あーあー、ソンナコトガアッタヨネー。」

そんなのあったっけ?

「もう。しょうがないですね。詳しい事は分かりませんが、アルスさんも帝国には十分気をつけて下さいね。」

「ありがとう。」

とりあえず、礼をいっておく。

でも気をつけてどうにかなる話でもないような気がする。


「アルス。」

2階から聞きたくない声が聞こえた。

とりあえず、聞こえないふり。

「じゃあ、ヘレンさん。また来ます。」

そう言って、去ろうとすると

「こらっ、アルス聞こえてるんだろ。無視するんじゃない。」

そんな馬鹿でかい声出さなくてもいいじゃないか。

ヘレンさんも苦笑いしている。

「はぁ、何か用?シモンギルド長?」

「ちょっと来い。大事な話がある。」

そこまで言われて無視するわけにもいかず、

2階へ向かいギルド長の部屋に入る。

「それで。大事な話って?」

「お前さんにまた頼みたい事ができたんだ。」

昨日の()り取りをもう忘れたんですか?

「昨日、お休みするっていったじゃないか。」

「ああ、だから今日はゆっくり休んでくれ。それで話なんだが。」

この人絶対に人の言う事聞いてないよ。

「お前、エルフとドワーフと仲がいいんだろ。そこでちょっと確認してきて欲しい事があるんだ。」

「そんなの、伝令でもなんでも使って直接話を聞けばいいじゃない。国同士で同盟に近い関係になったんでしょ。」

「まあ、そうなんだが。あまり情報を他に漏らしたくないのでね。頼めるのは多少関わりにあるお前しかいないんだ。」

また、面倒な話をされるのか?

「関りってなんの事?」

「お前が助けたエルフとドワーフの子供の件だ。」

「俺、そんな話したっけ?」

この件は内密にする約束だったはず。俺は話していないはず。

「こちらにもちゃんと情報網はあるんだぞ。そのくらいの情報は得ている。」

「ふーん。」

とりあえず、否定も肯定(こうてい)もしない。

それを見てギルド長はヤレヤレといった表情だ。

「で、本題だ。話はだいぶ込み入っているから細かい事は訊かないでくれ。非常に話が長くなる。それで、お前が以前密偵から手紙を受け取っただろう。そいつは、フェーゲル準男爵に近づいて帝国の動向を探っていた密偵だった。」

「ちょっ、ちょっと待って。フェーゲル準男爵って、ミーナを(さら)おうとした貴族だよね。それと帝国が何の関係があるのさ。」

全く予想外の話でチンプンカンプンです。

「簡単に言うとフェーゲル準男爵は帝国に買収されてこちらの情報を帝国に売っていたようだ。いずれ、帝国の貴族にしてやるとでも言われていたのだろう。それを逆手にとってこちらの密偵を(もぐ)らせていたんだ。で、うまく信頼を勝ち取って帝国とフェーゲル準男爵の連絡役までになったのだが、そこで得た情報からエルフとドワーフの子供を(さら)って、何やら生贄(いけにえ)を伴う儀式を行う予定だったようだという事までは分かったらしいのだ。どのような儀式かまでは分からなかったが、まあ邪悪な儀式だと予想はできるな。」

そりゃそうだ。子供を生贄にするような儀式なんて正気の沙汰(さた)な訳がない。

「それとは別に、帝国は何らかの方法でモンスターをある程度誘導できる、もしくは支配できるかもしれないという事もわかった。方法は不明だけどな。」

「それはテイム的な事?」

テイムだったら俺もできる。

「いや、そういう次元の話ではなくな。もっと多くのモンスターをだ。仮にだ、そのような事が本当に可能ならば、ここ最近の事件、モンスターホード、バルシー神聖法国での鉱山事故におけるモンスター事件、エルフドワーフの誘拐事件、エルフ国とドワーフ国への巨人族襲撃、それらの事件が全て帝国によって引き起こされている可能性がでてくる。」

随分(ずいぶん)と話の規模が大きんじゃないですかね?

「それは流石に考えすぎなんじゃ。だって、モンスターホードは100年単位で毎回起こっている事だよね。巨人族の襲撃にしたって今に始まった事じゃない。」

「そう、今に始まった事じゃない。だが、状況はオカシイと言わざるをえない。」

「例えばだ。今回あったモンスターホードについてだが、モンスターホードが起こるのはモンスターがダンジョンに(あふ)れかえってしまった時に発生するのは知られている。」

「そう言われているみたいですね。」

「王都のダンジョンでそれははっきりしている。ではお前達が入ったダンジョンはモンスターが溢れていたか?」

「いや、ほとんど空っぽのようなモノだった。」

「では、モンスターホードでボス的な存在だったアースドラゴンはどこから現れた?」

「それはダンジョンの中ででしょ。ダンジョンにはヒドラもいたんだからアースドラゴンがいても不思議じゃないでしょ。」

「いや、全然不思議だ。仮にアースドラゴンがヒドラに追い立てられて外へ出たとする。どうやって外に出る?階段をでかいアースドラゴンが昇れるとでも?」

そう言えばそうだ。

普通に考えてアースドラゴンが地上に出るルートが無いじゃないか。

そうするとあのアースドラゴンは

ダンジョンから出たモンスターではないのか?

「それと巨人族の襲撃についても一緒だ。お前が知っているかはわからんが、基本的に巨人族は()れない。勿論家族単位の群れくらいは確認できている。ただ、今回の襲撃みたいに大部隊での襲撃なぞ、前代未聞の出来事だ。仮に巨人族が国家なり軍隊なりを作れるなら、既にこの辺りは巨人族に支配されていても不思議ではない。それが無いのは、巨人族が一定数以上の集団を(かま)えないからということになる。」

その情報は知らなかったが、巨人族の襲撃は見方(みかた)を変えれば

巨人族のモンスターホードという事と何ら変わりはないわけか。

それを帝国が画策(かくさく)している?

あの男も関係があって暗躍(あんやく)しているということになるのか。

それよりも話の筋が見えてこない。

「それで、俺は何をすればいいんだ?」

単刀直入に訊いてみる。

「この話の裏付けだな。証拠があれば証拠を。証言があれば証言でも構わない。帝国が関係しているのか?危険なのかそうでないのか見極める必要がある。」

「わかった。ただ、今すぐ出発する事はできない。身内が体調を崩しているから、それが治ってからになる。」

「お前、この街に身内がいるのか?初耳だぞ。」

少し、驚いた表情を見せる。

こんな表情をするからには俺の事を調べたに違いない。

「身内みたいなものだよ。本当の身内じゃない。」

「まあ、そこは詮索しないでおく。」

「出発はいつでも構わないが、なるべく早めに動いて欲しい。それと出発前には必ず連絡を寄越せよ。」

「わかった。」

まあ、情報を集めるくらいなら構わないだろう。

かなり長い話になってしまった。

リリーが心配なので急いで宿屋に戻る事にした。


宿屋に戻るとリリーはまだベッドで眠っているようだ。

このままの状態が続くのなら、せめてあの広場に帰した方が

良いのかもしれない。

明日、このままならエルフの国に行く前に、

あの広場に寄ってリリーを解放してあげた方が良いかもしれない。


まだ休むには早すぎるし、異空間収納の中身を少し整理しておこう。

特にすることもないし、片っ端から異空間収納から出してみる。

ただし、食べ物系とポーション系は出すと痛むかもしれないので

そのまま仕舞っておく。

まずは、服関係から、正装用の服と普通の着替え、フード付きマント、

ドワーフから貰ったアクセサリー。

次は小物。ナイフ、コンパス、水筒、ロープ、紐、ランタン、座布団、

木の棒、手鏡、フライパンを始めとした調理器具一式、皿、

スプーンやコップなどの食器類、キャンプ用の小枝に小石。布きれ、

それと特殊なアイテムで、パペットゴーレムの枝。

武器類は、ミスリルのショートソード、大盾、ダガー、バックラーが各2個、ブロードソード4本がある。

収納の中の残りは、ポーションはHPポーション1本、

MPポーション50が6本、MPポーション100が10本。

ちなみにMPポーション50とは、

俺が勝手につけた名前でMPを50回復できるポーションのことだ。

食料系は果物が多数あって、肉や野菜も多い。パンやパスタ、魚もある。

酒もエルフワインやドワーフの酒樽がある。

体が大きくなったら飲んでやる。

前世ではそれなりに酒は強かった。

知り合いの店で2時間の飲み放題でそこそこの銘柄の日本酒を

一升空にして、怒られたのはいい思い出だ。

でも俺の記憶はこんなどうでもいい記憶が多いのは何故なんだ?

さて、あとは食べられるか分からないシークロコダイルの卵。

だいたいこんな物だ。

使わない武器は明日売ってしまおう。

ショートソードも買い直さないといけない。

ダガーは何かに役立ちそうなので取っておこう。

そうそう、お金も結構ある。

数えてみたら、白金貨が240枚、金貨が1325枚、

銀貨銅貨もそこそこある。

日本円に換算すると3000万円くらいの価値だ。

前世ではこんな貯金あり得ない金額だ。

だけど家一軒くらいは買ってしまうと、それだけでなくなってしまうと思う。

城塞都市の中に家を持つのは既得権益が絡んで、非常に高価な取引になると

冒険者ギルドで冒険者が話していたのを聞いた事がある。

それにのんびり暮らせるほどの金額ではない。

もっと稼がないといけないようだ。

最後にシークロコダイルの卵だけど、食べられるか分からないし、

冒険者ギルドに訊いて買ってもらえるなら売却しよう。


ガサゴソと色々やっていたせいか、リリーが目を覚ましてしまった。

「ごめん、五月蠅(うるさ)かったかい?」

「だいじょうぶ。すこしのどがかわいたの。」

「水がいいかい。それともさっき飲んでた果物の汁、どっちがいい?」

「おみずがいい。」

クリエイトウォーターの魔法でコップに水を出す。

それをリリーに飲ませてあげる。

「リリー体調が良くないならリリーの住んでた(ところ)に帰るかい?」

なんとなくリリーに訊いてみた。

「だいじょうぶだよ。リリーはいつもアルスといっしょ。」

それだけ答えるとまた眠ってしまった。

リリーをジッと見る。なんだろう、この違和感は?

リリーの横に寝転がりながら、考えてみたが、

考えても分からないものは分からない。

そうしている内に眠気が襲ってきた。

「リリーおやすみ」・・・スースー。

なんとかこのペースで投稿していきたい(希望)と思ってます。


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