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アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


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57日目 砦からの避難者

●57日目(グリウス歴863年6月29日)

朝、宿屋で朝食を取っていると、一人の男が入ってきた。

「アルス殿はいますか」

と宿の主人に話しかけてきた。

宿屋の主人はこちらをちらりと見て、指をさしている。

その男は、こちらに気づいて近づいてくる。

あれはたしか、ギルドの中で見た顔だ。

「アルス殿ですか。」

「ええ、そうですけど。何か用ですか。」

「ギルド長からの伝言を伝えに来ました。今日の三の鐘に集まって頂きたいとの事でした。宜しくお願いします。」

それだけ言うと、さっさと退店していった。

おーい、俺まだ返事してないんですけど。


食事を終えて宿を出る。

先程、二の鐘がなったばかりなので三の鐘まで時間に余裕がある。

「リリー、何かしたいことある?」

「りりーもねー、あるすみたいなぶきがほしいな。」

「えっ?武器ってこういう武器の事?」

そう言って、腰に下げているショートソードを指す。

「うん。りりーもね、えいっ、やぁって、たたかうのー。」

「んー、武器かぁ。リリーに持てるものってなんだろう。そうだ、俺もそろそろちゃんとした防具着た方が良いかな。この間の件もあるし、その中でリリーに合いそうな武器も探してみよう。」

まずは、防具の店。

「どれもパッとしないなぁ。以前オーダーメイドしないといけないって言われてたの忘れてたよ。リリーも防具は無理そうだし。別の店行こうか。」

「べつのみせ、いくー。」

次に来たのは武器屋だ。

「ダガーとかでもリリーにしたら、グレートソード並みに大きく見えるよ。」

「おーもーいー。」

「りりーには無理だよ。じゃあ、次は雑貨屋にでも行ってみるか。」

そして雑貨屋に来た。

「雑貨屋に武器になりそうなものはないなぁ。」

「リリー、これがいいー」

「リリー、それはただのフォークでしょ。そんなので突いても刺さらないよ。針とかでもいいんだろうけど、針刺されたくらいじゃ意味ない気がする。」

「あるすー、ないよー」

リリーはしょんぼりしている。

「よし、じゃあ今度スキルでクラフトのスキルがあったから、それ取って、リリーに合う弓矢を作ってあげるよ。それで我慢して。」

「ううー。わかったー。あるすにつくってもらう―。」

ちょっとかわいそうだけど、下手に武器を与えたら、

そのまま突撃してリリーがやられるイメージしかない。

だったら、どのみちダメージに期待できるわけじゃないんだから、

遠距離攻撃で危険を減らした方がいいよね。

「そろそろ三の鐘が鳴りそうだから、ギルドにいこうか。」


ギルドの会議室に入っていくと、大地の牙がいる。

彼らはこちらに手を振り、挨拶(あいさつ)を交わした。

そして他にはギルド長とヘレナさん、ランゴバルド辺境伯もいた。

「ようやく来たか。」

ランゴバルド辺境伯が難しい顔をしながら、声を掛けてきた。

「ようやくって、まだ時間じゃないですよね。」

一番最後らしいので、軽く()ねて見せる。

「では、(そろ)ったところで始めましょう。」

ギルド長が座るよう(うな)しながら言って、そのまま続ける。

「まず、アルスの報告は皆に訊いてもらった通りだ。Aランクのアルスを軽くあしらったパーティーだ。そして、多分、(とりで)を壊滅させたのもそいつらの仕業(しわざ)だと思われる。これだけの強いパーティーなのにギルドにはその情報が一切ない。したがって、予想されるのはこの界隈(かいわい)の奴らではないこと。恐らく、帝国以東の国の者だと思われる。」

「帝国以東などと言わず帝国はどうなんだ。帝国にも冒険者はいるだろう。」

と辺境伯が(たず)ねる。

「数年前に帝国で政権交代が起きてから、帝国の情報を含め、冒険者ギルドの情報も得られなくなっている。今はどうなっているか、予想すらできない状況だ。」

とギルド長が答える。

「そういやあ、前にバルシー神聖法国での事故があっただろ。あの時、酒を飲んでる席で、法国の奴らが帝国の差し金じゃないかって話してたな。」

昔の会話を思い出そうと考えこみながら、ピエールが呟いた。

「どういう事だ?」

辺境伯もギルド長も興味深そうに訊ねた。

「本当かどうかは分からないが、ベルガド帝国の新しい皇帝は周辺諸国に事あるごとに介入して侵略する口実を作っているという話だ。帝国の隣国の1つがすでに侵略されて滅んでいるという事も言っていたな。あとはその皇帝自身も人間離れした強さだとも(うわさ)になっている。皇帝は秘術を用いて他種族の力を吸収していて、その為に生贄(いけにえ)を求めているとも言っていた。法国では悪魔のような強さから悪魔皇帝とも揶揄(やゆ)されている。新しい皇帝の名はフリードリヒ・フォン・ベルガドというらしい。それとこれはかなり危惧(きぐ)されていたが、帝国の軍拡で法国も侵略されるのではないかと心配していた。というのも、法国での事故は人為的に引き起こされた可能性が高いとのことだ。法国だけでは対応できないところへ、帝国が援助する体で、大軍を送り込む予定なんだとか。ただ、法国は帝国ではなく俺達に援助を求めたのとそれをこちらが受けたことで、失敗したと目されていると話していた。」

「もしそうなら、その皇帝はもう人間のレベルではないな。それは置いておいても、侵略については考慮すべき事態だな。」

ランゴバルド辺境伯は溜息(ためいき)()じりに答えた。

「今は、工員の救助とその犯人の捕縛もしくは情報を得るのが先でしょう。」

とギルド長は優先順位を示した。

「仮にアルスと大地の牙が向かって(かな)う相手なのか?」

辺境伯は大地の牙に目を向ける。

「話を聞いている限り、俺達がアルスの援護を受けても敵わない可能性の方が高いんじゃないか。」

と大地の牙のピエールが感想を述べた。

「奇襲も無理だし、魔法もこちらの防御は弱い。前衛の装備もこちらとは比べ物にならないようだから、力が拮抗(きっこう)していても敵う要素がない。」

シーフレンジャーのクロムが客観的に評価する。

「俺達レベルのチームがあと2チームいれば、可能性はあるかもしれない。もしくはアルスのようなのがもう一人かな。」

テトリアも同様な評価をする。

「では極力戦闘は避けるとして、第一目標は工員の行方を調査することになるな。それと今後の事を考えて王都から増援を求めた方が良いのではないか。」

ギルド長が辺境伯に提案する。

「そうだな。アルス、大地の牙達、頼まれてくれるか?もしかしたら、近くまで逃げてきている事も考えられる。急いだ方が良いだろう。」

辺境伯が訊いてくる。

「俺達は構わない。」

と大地の牙が答える。

「俺も世話になった工員たちを見捨てるのは心苦しいから、協力はさせてもらう。ただ、仮に戦闘になったら守れるか自身は無いよ。」

「そこまで責任を求めてはいない。お前が駄目なら誰がやっても一緒だ。」

「ならいいよ。」

「では、すぐに向かってくれ。」

ドカドカドカ。

廊下を走ってくる音がしたと思ったら、扉がガチャッと開けられた。

「ギルド長、大変です。」

「なんだ、今重要な会議をしている最中だぞ。」

「申し訳ありません。しかし、緊急の報告です。砦にいた工員と兵士が街に戻ってきました。」

「なんだと。今、彼らはどこにいる。」「門の衛兵の詰め所で休んでいるとの事です。飲まず食わずで逃げてきたようです。」

「わかった。すぐに、全員もしくは代表の者をここへ呼んでくれ。話が訊きたい。ああ、違うな。軽く食事をさせてから来るように伝えよ。」

と辺境伯はその報告に来た男に命令した。

(かしこ)まりました。すぐに行ってきます。」

そう言って、その男は部屋から出ていった。

「とりあえず、救出作戦は中止だな。」

ピエールは俺に(ささや)いた。


既に昼も過ぎていたので、全員ギルド1階で軽く食事を済ませて、

会議室で待つことにした。

少しすると、工員と兵士が全員やってきた。

工員は15名、兵士3名だった。

「これで全員か。」

辺境伯は溜息交じりに(つぶや)いた。

全員を適当に座らせ、辺境伯は兵士に向かって、

報告せよと話すと兵士が答える。

「はっ。先日の事ですが、砦にオーガーとリザードマンが現れました。数が多かったので、工員達には(あらかじ)め逃げる準備をさせていました。その戦闘で、オーガーとリザードマンを何とか撃退したのですが、砦の門は破壊されました。おかしなことにオーガーとリザードマンは門だけ破壊すると逃げるように去っていきました。そしてその後すぐに、冒険者風の一団が現れました。こちらの兵士の一人がその一団とリザードマンらの集団とすれ違ったのに戦闘にならないと言ってきたので我々は警戒していました。しかし、こちらが何者か問いかける間もなく、いきなり攻撃を受けたので、工員には護衛に私を含め5名つけて退避させました。遠目で見ていたのですが、相手はかなりの熟練者で一方的な殺戮(さつりく)であったようにみえました。一人を偵察に出しましたが一瞬のうちに半数がやられてしまったと報告を受けたので、急ぎ街へ退避しました。ただ、道中、モンスターに襲われて、工員3名、兵士2名を失いましたが、昼夜問わず、街に向けて逃げ帰ってきた次第です。」

兵士に更に詳しく話を聞くと、俺と戦った奴らに間違いはないようだ。

その後、他の兵士や行員にも訊いたが、それ以上の情報は得られなかった。

「ひとまず、帰って休んでくれ。」

とランゴバルド辺境伯が言うと、一礼して全員が退出した。


「さて、どうしたものか。」

辺境伯は顎をさすりながら考えているようだ。

「まず、工員救出という目的は無くなりました。あとは調査と遺体(いたい)回収が先決ではないでしょうか。」

ギルド長は辺境伯に確認する・。

「そうだな。明日調査と遺体回収に行ってもらえるか。」

辺境伯の依頼に全員が(うなず)いた。

なんだかんだと言ってかなり長い会議になっていた。

結果だけを見れば、全員から聞き取りする必要はなかったが、

情報の漏れをなくすためならば仕方ないことかもしれない。


大地の牙たちは明日の準備をするという事で別れた。

俺とリリーは特にする事もないので、宿に行きダラダラして休むことにした。

ストックが切れました。

更新速度は遅くなります。

楽しみにしている方達には申し訳ないのですが

気長に応援して頂ければ幸いです。

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